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第2話

Auteur: あめ
佐久はそのまま七日間の拘留を受けた。

その七日間のうちに、明子は彼とのあらゆるつながりをほとんど断ち切った。

両親と共に新しく建てられた洋風の家に引っ越し、旧住所を廃止し、佐久と顔を合わせる可能性のある場所をすべて避けた。

七日後、佐久は釈放されると、まるで狂ったように明子を探し回った。

だが、本屋にも映画館にも、明子がよく通っていたカフェにも、三日三晩張り込んでも彼女の姿は一度も現れなかった。

結局、四、五人の同級生に頼み込み、遠回しに騙すような形で明子を食事会に呼び出した。

食事の席で佐久の姿を見た瞬間、明子は立ち上がって帰ろうとした。

しかし、事情を知らない親切な同級生が慌てて腕をつかんだ。

「ちょっと待って、明子。明子と佐久の仲がどれほど深かったか、大学の頃からみんな知ってるんだ」

「誤解があるなら、今この場で話してしまえばいいじゃない」

明子は足を止めた。

彼女は同級生たちに悪気がないことをわかっていた。

だからその顔を立てて、席に戻って黙って座った。

ところが隣の同級生が気を利かせたつもりで、席を立ち、佐久と場所を替わってしまった。

明子は眉をひそめ、拳を握りしめる。

「明子、どうして俺を避けるんだ?指輪を盗んだのは悪かった。でもそれも、結婚資金を貯めて早く君を迎えるためだったんだよ」

周囲の目も構わず、佐久は目を赤くして、明子の手を取ろうとした。

「触らないで!あなたの顔を見るだけで吐き気がする」

明子は即座に、伸ばされた手を振り払った。

その強い拒絶に佐久は一瞬怯み、まるで叱られた子供のように言葉を失った。

その瞬間、別の席から皮肉交じりの声が飛んだ。

「へぇ、さすが課長さんの娘。卒業して数年で、もう庶民の同級生が目に入らないのね。

お金持ちのくせに、たった60万円の結婚資金を理由に、佐久に指輪盗ませるなんて恥ずかしくないの?」

その声の主を見やると、暁美がそこにいた。

挑発的な目つきで、薄く笑いながら明子を見ている。

こういう人間に関わるつもりはなかった。

だが前の人生で、明子が佐久と結婚したあの三年間、暁美は正妻である自分よりも長く佐久の傍にいた。

その記憶が胸を刺し、心の奥が鈍く痛んだ。

結婚から三年。

佐久は暁美を連れて地方で起業を始め、二年をそこで過ごした。

帰ってきたのは、暁美が妊娠したからだった。

そして帰宅した初日、彼が開口一番に言った言葉は――

「母さんが、歳だから暁美の世話が難しいって。だから暁美はこれからうちで一緒に暮らすんだ」

その後の生活では、昼間は明子が働きに出て、家では佐久が暁美と過ごした。

夜、明子が帰ると、彼は部屋に鍵をかけて暁美と二人きり。

顔を合わせるたびに出る言葉は、

「暁美の気分が落ち込んでるんだ。一緒に散歩してくるよ」

その光景を思い出しながら、明子は小さく冷笑した。

「そうね。私は60万円すら出せない男なんて、まっぴらごめんよ」

そして暁美に視線を向け、唇の端を吊り上げる。

「小池さんも知ってるでしょ?佐久はお金がないの。優しいあなたが代わりに出してあげたら?そしたら私と佐久の結婚式に、あなたにもご招待するわ」

暁美の顔が一瞬で青ざめた。

唇を噛み締めたまま、佐久の警告めいた目線に気づくと、震える手でグラスを持ち上げ、無理やり笑顔を作った。

「明子の言う通りね。さっきあんなこと言ってごめんなさい。お二人とも......」

指先が震え、ガラスがきしむ音がした。

「末永くお幸せに......」

暁美は一気に冷たい酒を飲み干し、喉を詰まらせて咳き込み、体を震わせた。

佐久は慌てて立ち上がり、彼女の背を支える。

しかし暁美は赤くなった目をそらし、弱々しく手を振った。

「明子は私を誤解してるの。だから放っておいて」

そしてもう一度グラスを満たし、立ち上がって明子の前に差し出した。

その芝居じみた光景に、明子の忍耐は限界を迎えた。

バッグを掴み、無言で出口へと向かう。

暁美の笑顔が凍りついたその瞬間――

彼女はいきなり明子の手を掴み、自分の体に酒をぶちまけると、よろめきながら床に倒れ込んだ。

「きゃっ......!」

割れたグラスの破片が床一面に散らばり、彼女の手から血が滲み出した。

「せっかく謝ろうとしたのに、どうしてこんなことを......?」

血が止まらない。

明子は拳を握りしめ、真っ白になった指先が震えた。

たしかに手を引かれた感触はあった。

けれど、自分から押した覚えはない。

一番近くにいた同級生が叫んだ。

「ひどすぎるわ!小池さん、ちゃんと仲直りしようとしてたのに!」

「そうだよ、わざと怪我させるなんて最低!」

「やっぱり課長の娘だから、私たちを見下してるんじゃないの?」

明子は一歩下がり、腰が扉の枠にぶつかった。

誰も気づいていない。

暁美が倒れる直前、彼女は背を向けていた。

つまり――誰の目にも、明子が突き飛ばしたようにしか見えない。

誤解が、容赦なく心を突き刺した。

「違う......私じゃない、私は――」

弁解の声は、非難のざわめきにかき消された。

胸の奥が氷のように冷たくなる。

佐久のこめかみがぴくぴくと動き、抑え込んでいた感情が爆発した。

「課長の娘だからって偉そうにするなよ!」

彼はしゃがみ込み、暁美を抱き上げながら怒鳴った。

「明子がこんな人だったなんて......見損なったぞ!」

明子はふらつき、背中が積み上げられたガラス瓶の山に当たった。

十数本の瓶が一気に砕け散り、鋭い破片が彼女の脚や肘を切り裂いた。

真紅の血が白いワンピースを伝い、床に滲んで広がっていく。

痛みで声も出ず、額には大粒の汗が浮かんだ。

同級生たちは悲鳴を上げ、慌てて彼女を支え起こした。

だが佐久は、一度も彼女を見ようとしなかった。

「暁美の傷が感染したら大変だ。病院に連れて行くよ」

明子は震える手で自分の腕を押さえながら、佐久が暁美を抱きかかえて店を出ていく背中を、ただ見送ることしかできなかった。

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