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過保護な兄

Penulis: 紅城真琴
last update Terakhir Diperbarui: 2025-05-02 07:03:28

午前9時。

勤務先である竹浦総合病院の救急病棟。

「樹里先生。顔色悪いですよ」

仲良しの看護師、真衣ちゃんが顔を覗き込む。

「へへへ。ちょっと風邪気味でね」

何て笑って誤魔化した。

私、竹浦樹里亜(タケウラ ジュリア)は駆け出しの救命医。

東京の私立大学医学部を卒業後、研修医時代から数えてこの病院の勤務は3年目。

「本当に大丈夫ですか?」

師長まで、心配そうな顔をする。

まあ、それもそのはず。

今日は私がドクターヘリの担当なのだ。

呼び出しがあればすぐに行かなくてはならないし、飛び立ってしまえば自分の体調不良なんて言っている暇はない。

その時、

『ドクターヘリ。エンジンスタート』

無線機から声が響いた。

まずは屋上ヘリポートへ猛ダッシュ。

すると多少の頭痛も走っているうちに気にならなくなる。

あっという間に、フライトナースと私を乗せたヘリは飛び立った。

すでに装備のチェックはすませているから、患者の状況を確認しながら処置の準備をする。

出動要請は交通事故による外傷。

山道の国道で車同士の正面衝突。

周辺にヘリの降りられそうなところはなく、最寄りの小学校校庭に着陸して現場まで救急車が私達を運ぶ。

今回の事故では重傷者1名。軽症者3名。

あっという間に現場に到着し、とりあえず応急処置をしてから、軽症者は救急車で近くの病院へ搬送。

ヘリには重傷者を乗せて帰ることとなった。

次々に入ってくる現場からの情報を確認していくと、どうやら頭部を強く打っている様子だ。

『頭部の外傷があるようです。CTの用意と脳外科にコールをお願いします』

救急外来へ無線連絡をして、私達を乗せたヘリは病院に向かった。

***

30分ほどでほぼ県内を横断し、ヘリは病院へ到着。

「お疲れ様」

脳外科医である私の兄、大樹が待っていてくれた。

「どお?」

「うーん。CT撮ってみないと分からないけれど、オペになりそうだな」

やっぱり。

「ところで、樹里亜。お前、顔色が悪いぞ」

「そ、そんなことないわよ」

誤魔化そうとしたけれど、大樹には通用しそうにない。

困ったな。と思っていると、

ん?

急に額に手を当てられた。

咄嗟に逃げようとしたけれど、捕まってしまい、

「熱があるな。今日のヘリは交代しろ」

有無を言わせない強い口調。

「イヤよ。余計な事言わないで」

もちろんふてくされながら言い返したが、きっと無駄だろう。

「おいおい兄弟喧嘩か?」

通りすがりの救急部長がからかうけれど、元を正せば全く酒が飲めず少しのアルコールでも過剰反応してしまう私に、昨日の夜お酒を飲ませたのはあなたです。

本当に恨めしい。

「もしもし、脳外の竹浦ですけど」

PHSで大樹が電話をかけている。

その相手が救命の先輩ドクターだとすぐに分かった。

慌て手を伸ばしPHSを奪おうとしたけれど、身長180センチ越の大樹と150そこそこの私では結果は見えていた。

「交代が来るから。今日は病棟で勤務しろ」

「イヤよ」

大体、何で脳外科のドクターにそこまで言われなくてはならないんだろう。

おかしいわよ。

「絶対にイヤ」

強気で言い切ったけれど、

「このまま実家に連れて帰ろうか?」

冷たい表情で言われ、私は黙り込んだ。

これ以上言えば、本当に実家に送り帰されてしまう。

仕方なく、私は救急外来を後にして病棟へ向かった。

***

竹浦大樹は、私の4歳年上の兄。

そして、ここ竹浦総合病院の跡取り息子。

脳外科医としての腕もさることながらその優しい物腰から王子と呼ばれていて、女性にもかなりモテるらしい。

しかし先ほどの流れからも分かるように、私にとっては超過保護な兄。

ただ優しいだけではなくて、一旦言い出したら聞かないところが、面倒くさいことこの上ない。

勤務途中で戻されたことに、「何でこんな目に遭わなくちゃいけないのよ」とブツブツ言いながら、私は病棟センターに入った。

「樹里先生。大丈夫ですか?」

1年後輩の千帆先生が寄ってくる。

「ちょっと風邪気味で・・・本当に、ごめんね」

きっと私のヘリ担当を変わってくれることになる彼女に、手を合わせてしまった。

「いいえ、大丈夫ですよ。今日は私がヘリに乗りますから、気にしないでゆっくり休んでください」

元気に笑ってくれる後輩に、「ごめん」としか言葉が出ない。

申し訳ないと思う気持ちで一杯なのに頭痛も相変わらずで、熱っぽさまで感じだした。

本来なら風邪薬でも飲みたいところだけど、私は簡単には飲めない。

薬やアルコールに過剰に反応する体質が、それをさせてくれない。

ああ、面倒くさいな。

昼になっても、体調は悪化するばかり。

ご飯は食べられないし、急に立ち上がると目眩までする。

「樹里先生。本当に悪そうだよ」

先輩ドクター達まで声をかける。

でも、大丈夫。

このくらいの体調不良なら学生の頃から何度も経験している。

しかし、こんな日に限って病棟の急変が続いて、ナースコールも鳴り止むことがなかった。

はあー。

思わずため息を着いたとき、

「樹里先生、お願いします」

慌てた様子の看護師に呼ばれ、私は駆け出した。

しかし次の瞬間。

ガチャンッ。

近くのカートにつまずき、床に膝をついた。

「本当に大丈夫ですか?」

看護師達が駆け寄り、みんなの視線が集中する。

「竹浦先生。具合が悪いなら帰ってください。仕事を増やされても困るんだ」

飛んできた冷たい言葉に、その場にいたみんなが黙り込んだ。

声の主は、高橋渚(タカハシ ナギサ)。

研修医時代からの同期で、私と同い年の26歳。

綺麗な名前や端整な顔立ちとは対照的に、誰にでも冷静で冷たい態度からアイスマンと呼ばれている。

噂では、アイスマンに睨まれると凍りついてしまうとか・・・馬鹿らしい。

しかし、今日のアイスマンはかなりご機嫌が悪いようで、

「もういいから、帰って」

そう言うと、私が手に持っていた点滴キット入りのトレイを奪った。

立ち尽くす私。

「樹里先生、今日はもういいから。帰りなさい」

とうとう部長まで出てきた。

結局、私は早退することになった。

遠く方から、先輩ドクター達の冷ややかな視線を感じいたたまれなかった。

いくら院長の娘でも、先輩達は怖い。

ただでさえ注目されているのに、これでまた噂の的になることだろう。

はあー。

大きく息を吐いて肩を落とした私は、白衣を脱ぎ病棟を後にした。

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