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第284話

Author: 一匹の金魚
「自業自得ね」真衣は淡々と言った。「あんな悪事を平気でやるなんて、いつかこうなるって分かってたはずよ」

-

コンテストが間近に迫っていた。

真衣はノースアイを引き連れて加賀美先生と打ち合わせをし、コンテストに出る際の戦略について話し合った。

会議が終わる頃、安浩が会議室のドアをノックした。

安浩は真衣を見て言った。「山口社長が来たよ」

山口さん?

真衣は驚いた。こんな時に山口さんが来るなんて、一体何の用だろう?

事前に来るとは聞いていなかったけど。

真衣は加賀美先生に挨拶してから、会議室を出た。

「どういうこと?」

安浩は説明した。「国際宇宙設計大会がもうすぐ始まるから、出張で来たんだ。地区予選の時から真衣に会いたがってよ」

真衣はハッとし、驚いたように安浩を見た。「山口さん、私がソフィアだって知ってるの?」

地区予選の時、宗一郎の部下たちは真衣たちの控え室に来て、ソフィアに会いたがっていた。

当時、真衣は自分も出場していることを明かさなかった。

安浩は首を振りながら言った。「山口社長は頭の切れる男だ。過去の協業を通じて、君の実力はよく分かっている。地区予選のとき、控室で山口社長の部下が君を見かけた。そこから、君も出場していると自然に察したんだ。今回の決勝は南部の都市で行われる。

僕たちのプロジェクトの第一期目も終了したし、プロジェクトの進捗状況を確認したいのかもしれない。山口社長がすでに場所を取ってあって、もう僕たちのことを待っているから、一緒に行こう」

宗一郎は優秀なビジネスパートナーと言える。彼は一度出資したプロジェクトについては、いちいち口を出すようなことはない。

真衣に断る理由はなかった。

真衣は安浩とともに、とあるレストランの個室に到着した。

宗一郎は全身黒の服装で統一されており、二人が来るのを見ると、穏やかで柔らかな表情を浮かべた。

「お待たせしました」

「いいえ」宗一郎は穏やかに言った。「ここに座っていると心が落ち着くね」

宗一郎は品があり、紳士的で、器の大きい人だ。

真衣たちはプロジェクトについて話し合った。

宗一郎は軽く笑い、漆黒の瞳で真衣を見つめた。「緊張しなくていいよ。私はプロジェクトの視察に来たわけではないから」

宗一郎は淡々とお茶を注いだ。「国際宇宙設計大会にあなたも出場すると聞いた。地
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Comments (2)
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洋子
今まで 山口宗一郎さんは 目立たなかっまけど これからバンガードテクノロジーの社長として バックアップしてくれそう。彼は 真衣が ソフィアだと 確信している様だ。
goodnovel comment avatar
まかろん
キター!山口社長がぐいぐいきてくれますように
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