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第5話

Auteur: バズる転生作者
そのとき、教員宿舎で莉子に付き添っていた暁の胸に、ふと鋭い痛みが走った。

莉子が慌てて顔を上げる。

「暁さん、どうされました?顔色が青いですよ。気分でも悪いのですか?」

暁は深く息を吸い込み、痛みが引くのを待ってから、莉子にお茶を差し出した。

「いや、なんでもない」

思い当たる節はない。深く考えるのはやめた。

「きみが危ない目に遭って、気が張っていたんだろう。落ち着いてきて、少し動悸がしただけだ」

莉子の耳がほのかに赤らむ。今夜の出来事を思い返すと、まだ生々しい恐怖に身をすくませているのがわかる。

「ありがとう。暁さんが来てくれなかったら、私……」

ふと何かを思い出したように言葉を切り、真剣な顔で付け加える。

「先生には内緒にしてくださいね。絶対、心配で眠れなくなっちゃいますから」

暁が小さくうなずく。まだ怯えた目を閉じられずにいる莉子を見て、彼は唇を引き結んだ。

「寝ろ。今夜は俺がここにいる。離れない」

莉子の顔に、一瞬の得意げな表情が浮かんだ。

「はい」

そう言って目を閉じるが、その手は無意識に暁の指を探り当て、ぎゅっと握って離さない。

思わず眉をひ
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  • 無視された人生は、今日で終わりにした   第4話

    帰りの車中、暁は助手席の莉子を先に送っていくつもりのようだった。私は後部座席で、パリの大家と部屋の契約についてメッセージをやりとりしている。しばらくして、莉子が車を降りると、暁が急に声をかけてきた。「前、空いてるぞ」私は顔も上げずに、ただ返した。「ここでいい」暁が少し沈黙する。「……好きにしろ」それで会話は終わった。画面に映る、陽の光がたっぷり差し込む部屋の写真にすっかり気をよくして、即座に手付金を振り込んだ。家に着くと、暁が鞄からアルバムを取り出して、私のそばに置いた。「見てみないか」不審に思いながら手に取ると、ウェディングドレスのカタログだった。「早いところ決めてくれ。式まであと一ヶ月しかない。ドレスに手を入れる時間も必要だ」彼は、見開きいっぱいに立体的な茉莉花の刺繍が施された一着を指さした。「これなんかいいと思うが」ちらりと写真に目をやり、鼻で笑った。茉莉花は、莉子がいちばん好きな花だ。こんなところまで、あの女の影がついて回るのか。昔の私なら間違いなく声を荒らげていた。でも今は、ただ静かにうなずく。「うん、いいよ。それで」どうせ明日にはここを発つ。一ヶ月後の結婚式なんて、もう私には関係ない。暁は私の素直な態度がよほど気に入ったらしい。ご褒美をやるように額に唇を寄せた。「いい子だ。そのままでいろ。さっきみたいな仏頂面は好きじゃない。これからは見せないように。わかったな」言うだけ言って、さっさとバスルームへ消えた。ウェットティッシュを取り出して、額の皮膚が赤くなるまで拭いた。9時になると、暁はいつも通り明かりを消し、スマホを伏せて置き、右耳にイヤホンを差したままベッドに横になった。空っぽになった化粧台にも、何もなくなったバスルームにも、ベッドサイドに立てかけたスーツケースにも、彼は気づいていなかったようだ。まあ、それもそうか。莉子以外の人間に、この男が心を向けたことなど、一度もなかったのだから。眠りについたのは、真夜中を少し回ったころだった。鋭い悲鳴のような声で目が覚めた。隣で暁が飛び起きざま、イヤホンに向かって怒鳴った。「小野寺、どうした!?」静まり返った部屋の中、イヤホンの向こうで莉子が泣きじゃくっていたのが聞こえた。普段はめったに感情を顔に出さない

  • 無視された人生は、今日で終わりにした   第3話

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