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穏やかな朝3

Auteur: 東雲桃矢
last update Date de publication: 2025-12-17 14:21:29

「ここまですることないと思うけど?」

「ダーメ。せっかくの綺麗な手なんだから、ちゃんとお手入れしないと。なにより、オレが大事にしたいからさ」

そう言って紅玲は、ハンドクリームを塗り終えた千聖の手の甲に、キスを落とした。

(やることがいちいち大げさというか、キザというか……)

千聖は内心苦笑しながら、紅玲の手からハンドクリームを取った。

「チサちゃん?」

「私も紅玲が大事だから、塗ってあげるわ」

千聖は骨ばった紅玲の手に、丁寧にハンドクリームを塗り込む。

「ありがとう、チサちゃん」

「どういたしまして」

ハンドクリームを塗り終えると、紅玲に返した。

「さて、パパっとやることやっちゃいましょうか」

「そうだね」

千聖は干してある洗濯物を取り込むと、別の洗濯物を干した。紅玲は風呂掃除をする。湯船だけでなく、タイルや風呂桶まで丁寧に洗っていく。

千聖が洗濯物をたたんでいると、違う服に着替えた紅玲がリビングに来た。

「こっちは終わったよ」

「お疲れ様。こっちももう少しで終わるわ」

千聖は手を休めることなく返事する。

「それじゃあ、なにか飲み物でも用意しとこっか。何がいい?」

「そうね、紅茶がいいわ」

「オーケー、紅茶ね」

紅玲は台所へ姿を消した。

「ふぅ、これで全部ね」

洗濯物をたたみ終えた千聖は、ソファに座った。ちょうどいいタイミングで、紅玲が戻ってくる。

「はい、チサちゃんもお疲れ様」

紅玲はテーブルの上にふたり分の紅茶と、洋菓子がたくさん入った菓子受けを置いた。

「ありがとう」

千聖は紅茶をひと口飲むと、隣に座った紅玲に寄りかかる。

「チサちゃんとこうして過ごせるなんて、幸せだなぁ。毎日こうだったらいいのに」

「仕事があるから無理よ」

千聖が困ったように笑うと、紅玲は一瞬だけむくれた。

「オレが養ってあげるのに」

「前にも言ったけど、まだ仕事を続けてたいの」

「分かってる」

紅玲は自分に言い聞かせるように言うと、気持ちを切り替えるために短く息を吐いた。

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