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last update Dernière mise à jour: 2025-11-05 11:26:16

 部屋の中は、全てが完璧なバランスで配置されていた。

 そこにいるだけで、心がほどけていくような。最高に心地よい空間だった。

「ここでは、仕事のことは一切忘れてください。あなたはただ、何もしないでいいんです。ゆっくりと休むことだけを考えて」

 彼の声は、いつも以上に優しかった。

「こちらを、あなたの部屋として使ってください」

 湊さんはリビングの奥にあるもう一つのドアへと私を導いた。ドアを開けるとそこは、私がこれまで見たどんな寝室よりもシンプルで――贅沢な空間だった。

 部屋の主役は中央に置かれた、低いローベッドだ。

 ヘッドボードもない、ごく簡素な木のフレーム。でもその上にかけられたリネンのシーツは、触れなくても分かるほど、柔らかく肌触りが良さそうだった。

 リビングと同じように、壁の一面が足元から天井までの大きなガラス窓になっている。その向こうには、きらきらと光る穏やかな海が、広がっている。

 家具はそのベッドと、窓際に置かれた一脚のアームチェアだけ。

 余計なものは何一つない。

 けれどだからこそ、部屋に差し込む春の光や窓の外の海の青さ……時折聞こえてくる波の音が、何よりの装飾になっていた。

(すごい……)

 眠るためだけの空間。

 でもその一つの目的のために、光も風も音も、すべてが計算され尽くしている。

 これこそが本当のラグジュアリーなのだと、私はデザイナーとして痛感させられた。

「ありがとうございます。本当に、素敵な部屋ですね」

「気に入っていただけて、嬉しいです」

 私がそう言うと、彼は微笑んだ。

 事前の言葉通り、湊さんは私に何一つ強制しなかった。

 昼過ぎになると、彼は別荘のキッチンに立って、私のために食事の準備を始めた。

 サンドイッチの時よりは少しだけ手際が良くなっているけれど、やはりどこかぎこちない。

 その姿を見ていたら、気づけば私も自然に彼の隣に立って、野菜を洗い始めていた
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