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第84話・謝罪

Author: 新矢識仁
last update Last Updated: 2026-01-07 05:30:58

「あとは、溶鉱炉を少し直してもらえれば」

「溶鉱炉?」

 学校で習った反射溶鉱炉を思い出す。

「ああ。古の時代に鍛冶の神が与えて下さった神鉱炉なんだが。神の力が失われて、普通の溶鉱炉しか使えないんだ。神聖銀を作るには神鉱炉が必要で」

「よし、案内してくれ」

「我々はアシヌスに乗るが、生神様は」

「ヤガリくんはブランに乗るよな」

「ああ。……シンゴはどうする?」

 俺は何もない所から自在雲を引っ張り出した。

「レーヴェ、コトラ、乗って」

「ああ」

「ぅなっ」

 アシヌスたちがドワーフたちを乗せてぽっくりぽっくり歩き、俺たちは自在雲で

ゆっくりゆっくり進む。

「あの、済まない、シンゴ様」

「?」

 急にレーヴェに謝られ、俺は首を傾げた。

「泉での、長老の対応のことだ」

 ああ。なんかヒューマンも差別するようなこと言ってたな。

「エルフは古の時代、一番最初に生み出された人間と言われている」

 ピリッと、空気が凍った。

 ドワーフたちだ。

「済まない、ドワーフの諸君には不愉快かもしれないが、生神様と、ヒューマンと、ドワーフに謝罪したいんだ」

「謝罪?」

 ドワーフたちが胡散臭そうに言う。

「そうだ、長老発言の謝罪だ」

 確かに言ってたな。神草はエルフが神から下賜されたもので、俺が創ったような束縛蔦のようなヒューマンに渡されたような植物と一緒にするなとか。

「異世界から来たという生神様は知らないだろうが、創造の時、全能神はエルフを最初に創り、神聖な森を守らせた、と言われている。森から川へ、海へと広がっていったが、エルフがなかなか増えないので、ヒューマンやドワーフ、フェザーマンと言った人間を追加で創った、と言われていて、古いエルフはそれを信じている。神聖な森を預かるために生まれた我々を、海や川へ行った同族や大地を掘り返すドワーフ、平地を耕すヒューマンと一緒にするな、とな」

 おーい空気がピリピリ通り越してびっしびし言ってるぞ。

「だが、人間と呼ばれる種族は、同じ全能神に創られ、それぞれの神に守られた者たちで間違いはない。ドワーフは鉱山で鉄や宝石と言った宝を掘り出し、ヒューマンは田畑を耕して皆の食料を整える。森エルフは薬草などで人間を救う。そこに上下などないはずだ。しかし長老はそれを認めない。森エルフが人間の中で最も尊いと信じている。……ヒューマンと、ドワーフを見下す発言を、私
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