เข้าสู่ระบบ「あれ? ユキ、どこ行くの?」
このぎこちない空気に耐えきれなくて、あたしは席を立った。
「ちょっと、トイレに」
廊下を指差して、軽く笑って身を縮めながら柊の横を通り、教室の後ろのドアから廊下に出る。
ガラガラガラ、ピシャ……。
廊下に出て後ろ向きでドアを閉め、1回ため息。
重い体を引きずりながら廊下を歩いた。
ガラガラガラガラっ!!
「篠原っ!!」
激しくドアの開く音がしたと思ったら、すぐにハルに名前を呼ばれて振り返った。
ハルは軽快に走ってくると、あたしの隣にピタリとつく。
「なに? どうしたの?」
廊下を歩きながら、突然追いかけてきた理由を聞く。
マキにはトイレと言ったけど、別に行きたいわけじゃない。
目的もなく、新学期で浮かれている生徒の間をだた歩いてるだけ。
「いや、まぁ……」
ハルが、ポリポリとこめかみを人差し指でかく。
「もしかして、アイツなの?」
今度は、こめかみをかいた手の親指で、後ろの教室を指す。
「……あぁ、うん。柊のことね」
「そっか。アイツか。なかなかのイケメンじゃん」
あたしは少し微笑んで、小さく頷いた。
そう……。
イケメンだ。
イケメンになりすぎ……。
「まだ、好きなんだろ?」
「……え?」
戸惑った。
無意識のうちに、歩みを止めてしまうくらいに……。
まだ好き?
……うん。好き。
そんなの、当たり前……。
でも、何だろう……。
さっき感じた心の距離感があまりもショックすぎて、一瞬にして自分の気持ちが分からなくなってしまった。
あたしが黙り込んでクルリと踵を返すと、後ろから小さく息を吐く音が聞こえてきた。
「トイレに行くんじゃなかったのかよー!!」
後ろから叫ぶハルに答える余裕なんてない。
マキとハルと同じクラスになれて、楽しい1年がスタートすると思っていたのに、とんでもない1年がスタートしてしまった……。
柊が、ゆっくりあたしから体を離す。「本当だよ!! あたし達、もう離れることはないよ!! ずっと一緒にいる!! 約束する!!」あたしの声が大きいので、公園にいた子供たちが何人かこちらを振り向いた。だけど、気にしない。「雪羽、今すぐってわけにはいかないけど、俺と、結婚してくれる?」あまりにも嬉しい言葉過ぎて、あたしは瞳に涙を浮かべながら柊を見上げた。返事することもできない。「え……返事は?」涙をこらえることに必死になって顔を強ばせているあたしを見て、柊が不安そうに眉を寄せた。涙をこらえてるせいで、口が開かない。声が出せないの……。嬉しくて嬉しくて、どう、言葉にしたらいいのか、わからなくて。あたしは、返事の代わりにグッと背伸びをして、柊に唇を合わせた。ほんの一瞬触れただけの、短いキス。突然のことに目を丸めた柊だけど、すぐに、柊からあたしに唇を重ねてきた。今度はさっきより、長いキス。子供たちの楽しそうな笑い声を聞きながら、何度も何度もキスをした。目を見合わせクスクス笑い合う。ポタポタと上から雫が落ちてきて、あたし達は手で頭を庇って、それでも笑いあった。幸せな瞬間。この桜の木の下で、永遠の愛を誓った。新しい、あたし達の相棒の誕生だ。こかれからは、この木と共に成長していこうね。結婚して、子供が生まれて、家族が増えていくたびに、この木に報告しようね。「大好きだよ、柊」「俺は、愛してるよ」「え~。ずるい。あたしも愛してるのに」あたしが口を尖らせると、すかさず柊がまたキスをしてくる。こんな、まだまだ子供あたし達ですけど、どうか、暖かく見守ってください。今まで苦しい恋をしてきたぶん、必ず幸せになります!!あたし達は桜の木を見上げて、心に幸せになることを誓った。―END―
ジワリと、涙が浮かんでくる。「中学の時、俺が告白したのも桜の木の下で、離れ離れになったのも、桜の木の下だったし」「……うん」「桜の木って、俺らの人生になくてはならない木だろ?」「……うん!!」本当にそうだ。あたし達の成長に、桜の木は必要だった。いつも一緒にいてくれた木だった。「これから、多分この木にお世話になるだろうからさ。だから、この木の下で誓わせて」「……はい」あたしは、溢れる涙を手で拭って、グッと柊を見上げた。柊はあたしの手から箱を取ると、そっと指輪を取り出し、あたしの左指を握った。ゆっくりゆっくり、あたしの左指に、シルバーの指輪がはまっていく。「サイズ、ぴったりでよかった」柊が目尻を垂らす。あたしは、左手を空にかざして指輪を眺めた。空との間にある桜の木が、カサカサと風に揺れてなく。その度に、溶けた雪の雫が頭に落ちてきて、ヒンヤリした。「雪羽」「はい……」「俺、まだまだ未熟で、これから先も雪羽のことを傷つけてしまうことがあるかもしれないけど、それでも、俺とずっと一緒にいてくれる?」「うん!!」「今まで雪羽にしてやれなかったこと、全部してやるつもりだ。喧嘩もすると思うし、俺が一方的にキレてしまうこともあるかもしれない。それでも、ずっと一緒にいてくれるか?」真剣な柊の表情。桜の木が風に揺れるたびに、柊の顔の影がユラユラと揺れた。「ずっと、側にいさせて? あたしこそ未熟だし、言いたいことも言えずに誤解されることもあるかもしれないけど、それでも……」ギュッ……。あたしが最後まで言い終わらないうちに、強く、柊に抱きしめられた。息ができないくらいに、キツく胸に押し当てられる。「好きだ」耳元で、柊の声がこもって聞こえた。「好きだよ、雪羽」あたしは、柊の背中に手を回して、ギュッと抱きつく。「あたしも好きだよ!! この気持ちは、ずっと変わらないよ!!」「本当に?」
柊はあたしから手を離し、桜の木の下まで行って、木の幹に手をそっと当てていた。「こうやってこの幹に触れると、なんか雪羽と繋がってるような気がしてさ」「……え?」「だって雪羽、俺が引っ越した後も、ずっとあの桜の木の下にいただろ?」「どうして知ってるの?」あたしが目を丸くすると、柊は肩をすくめた。「だからさっきも言っただろ? 繋がってるような気がするって」そう言ってニッコリ笑う。「俺、毎日、ここに来て気に触れてたんだ。こうやって幹に触れて目を閉じると、別なところで桜の木の下にいる雪羽の映像が頭に浮かぶんだよ」柊は目を閉じて、いつもやっているであろうことを、あたしの目の前でしてくれた。「会話はできないけど、ここに来て木に触れたら、雪羽とひとつになれた気がしてさ」目を開けた柊が、あたしを見てまた微笑む。あたしも微笑み返した。ここの桜の木にも雪が積もっていて、太陽の日差しにキラキラと輝いている。「雪羽、こっち来て」柊が、桜の木の下で手招きをした。あたしは口角を引いて、柊の横に行く。柊はあたしと向き合うと、おもむろにズボンのポケットをまさぐり始めた。すぐにポケットから出てきたのは、小さなシルバーの箱。あたしは驚いて、息を飲んで目を丸くする。柊は開けてみろというように、顎で箱を指す。小さなリボンを開ける手が震えた。この中身が何なのか、わかるから。小さな箱を落としてしまわないように、慎重に開ける。中から出てきたのは……。シルバーのシンプルな指輪。「これ……」「俺、今まで雪羽に何もしてやれなかったから」「…………」「ほら、覚えてるか? 夏祭りの時、俺がおもちゃの指輪を取ってやっただろ?」忘れるわけがない。パープルの可愛い指輪だ。「いつか、絶対に本物を雪羽にプレゼントしたくてさ」「……柊」「まぁ、それもまだまだ安物だけど、あのおもちゃよりはいいかと思って」柊が、後頭部をかきながら照れている。「指輪を渡す場所も、ここがいいなって、ずっと計画立てててさ」
繋ぎたくても、繋げなかった時期があった。だから、自然と手を繋ぐことのできた今がとても幸せで、あたしは繋がれた手を微笑みながら見ていたんだ。「そんなに嬉しい?」あたしを見た柊が、苦笑する。「嬉しいよ!! すごくすごく嬉しい!!」あたしが小さな子供みたいに喜ぶと、柊は満足そうに口角を上げてあたしの手を更にギュッと強く握った「お腹は?」歩きながら、柊が眉を上げて聞いてくる。「う~ん。まだ空かない。柊は?」「俺もまだ空かない」「じゃご飯の前にどっかショッピングでも行く?」あたしが聞くと、柊は少し考えてからあたしの手をクイクイっと引いた。「実は、ちょっと連れて行きたいところがあるんだ」あたしは頭にハテナマークを出して首を傾げる。「どこ?」「それは秘密」柊が意味深に微笑み、鼻の頭に人差し指を当てる。益々意味のわからないあたしは、グッと眉間のシワを深くした。柊に手を引かれてやってきたのは、駅から徒歩15分くらいのところにある大きめの公園だった。公園には春休みを存分に楽しむ子供たちが大きな笑い声をあげながら遊具で遊んでいた。公園に周りにはたくさんの木が植えてあり、自然豊かだった。「木がいっぱい。すごいね!!」柊があたしを見下ろして静かに微笑む。柊は公園の中に足を進めて行き、公園の奥の水道の横に立っている大きな木の前で足を止めた。公園の周りに植えてある木より、また一段と大きな木。「何の木がわかる?」柊に聞かれて最初は首を傾けたけど、ずっとその木を見ていたら、あの、あたし達の住んでいた町にあった桜の木がふと頭に浮かんできた。「……桜の、木」呆然として小声で答えると、柊は驚いたように体を逸らし「正解!」と言った。「よくわかったな」「いや、なんとかく。今、頭にあのバス停の近くの桜の木が浮かんだの」あたしが言うと、柊は細かく何度も頷いた。「実は、俺もなんだ」「…………」「ここに引っ越してきて、この木を見つけたとき、一番に浮かんだのはあの桜の木だった」
~1年後~「柊!!」あたしは、キャリーバックを引いて、駅前で待ってくれていた柊のもとに走った。あたしも柊も、高校卒業。4月から柊の住んでいる街で、就職が決まっている。柊も大学ではなく、就職を選択したようだ。「雪羽!!」あたしの声に反応した柊が、あたしに大きく手を振る。3月後半。この街も、あたしが住んでいた街と同じくらい寒く、雪もまだ少し残っていた。「あれ? 柊、髪染めたの?」「うん。今日雪羽の会うためにちょっと染めてきた。この色、似合わない?」柊が自分の髪を少しつまみながらあたしに聞いてきた。今まで黒髪だったから、今の淡い茶色の髪がとても大人に見えてドキドキが増した。「似合わないわけないじゃん。柊はどんな色にしても似合うよ!!」「ピンクでも?」「うん」「青でも?」「そんな色にできるならやってみれば?」あたしが眉間にシワを寄せながら言うと、柊は楽しそうに声を上げながら笑った。あたし達は、高2の冬に離れてから、ずっとラインのテレビ電話で顔を見ながら話をしていた。だから柊と離れていると感じたことはないし、寂しさも感じなかった。そりゃ、時々柊の温もりに包まれたい時はあったけど、顔を見て話をしたら、それだけで心が満たされたんだ。だからこうやって1年ぶりに再会しても、ぎこちなさや気まずさは全くなかった。「荷物、俺が持つよ」「ありがとう」柊がサッとあたしのキャリーバックを引いてくれる。「とりあえず、荷物をコインロッカーに預けようか。雪羽、こっち」ここの土地勘が全くないあたしは、柊の指示通りちょこまかと彼の後ろについていく。柊の背中がとても大きい身長、また伸びた?どんどん、柊が大人な男性になっていって、心臓がついていかない。“好き”がどんどん膨らんでいって、そのうち、心臓が破裂してしまうかもしれない。柊があたしの荷物をコインロッカーに預けてくれて、身軽になったあたし達は、何の躊躇いもなく手を繋いだ。
柊との距離が少しずつずれてきて、とうとう、電車はホームを出て行ってしまった。白い雪景色の中に消えていった、大好きな人。雪解けと共に去っていったのは、これで2回目。正直、辛い。今まですれ違いすぎた。お互い気持ちを素直に伝えられなくて、貴重な時間を無駄にしてしまった。気持ちって、言葉にしないと、絶対に伝わらないね。柊と再開して、それがよくわかった。どんなに心で思っていても、小さな行動や言動で相手を誤解させてしまう。こんなはずじゃなかったのにって、後悔しか生まれない。それなのにどうしてもうまく言えないのは、相手のことを本当に大切に思っているからだったりするよね。あたしは、ようやく気持ちを素直に言えるようになったら、もう、彼は、遠くに行ってしまう時だった。だからこそかな。こうやって伝えることが出来て、心がスッキリしているのは……。無駄な時間だと思ったけど、必要な時間だったんだ。柊、バイバイ。1年後。必ず会いに行くからね!!それまで、また離れ離れだけど、絶対に待っててね。好きだよ。大好きだよ!!溶ける雪のい輝きが、あたし達の進むべく道を照らしてくれているようだった。キミへと続く雪の上の足跡を、照らし出してくれている。雪は、あたし達の恋の結晶だ。冬には必ず何かが起こる。その度に大切に保管しておきたい、思い出の結晶。1年後も、10年後も20年後も、どうか、あたし達の足跡を照らし出し、幸せに導いてください。白い恋の結晶~キミへと続く足跡~
「もう、あの頃みたいに戻ることはない。俺がどこかで期待させてたんだったら謝るよ、ごめん。俺には最初から戻りたいって気持ちはなかったから」そんなはっきり言わなくても……。あ、でも、はっきり言わないと、あたしバカだからわからないもんね。そのへんはよく知ってるもんね、柊は。あたしは鈍感で、バカだって。何も気づかずに、期待だけ膨らませて……。いつまでもバカみたいに、またあの頃のように戻れるんじゃないかって……。戻れるわけないよね?一度別れてるんだもん。そう簡単に戻れるわけ……。「俺らは、もうただの友達。雪羽がそう思ってくれないと、俺ら、もう側にはいられないよ」……うん。そう…
「聞きたい、ことがあって……」「うん?」柊が顔を前に出して微笑む。「文化祭の、劇の、こと」「…………」柊の視線が、ジッとあたしに刺さる。「あの時さ……どうして、本当にキスしたの?」「…………」柊があたしから目を逸らさないので、あたしも逸らすことが出来なかった。廊下の下の方から、微かに生徒たちの笑い声が聞こえる。「フリだけでよかったのに……」「…………」「どうして?」行動に移すまでは中々決心できなかったのに、こうやって話を切り出すと、割と冷静に聞けるものだ。柊がずっと黙り込んでいるので、あたしは身を乗り出すように柊に返事を促した。柊……。どうして?どうして、あ
「ユキ!! ねぇ、雪羽ってば!!」文化祭が終わって約2週間。あのキス事件以来、あたしの魂はどこか遠くに飛んで行ってしまい、ボーッとすることが増えた気がする。今も、マキと教室でお弁当を食べ終わり大きなため息をついた時に、マキに頭を叩かれ、一気に意識が戻ってきた。「あ……ごめん。何か話してたっけ?」あたしが顔を歪めながら聞くと、マキは呆れたように頭を横に振って大きく息を吐いた。「別に何も話してなかったけど、あんた最近本当にどうしたの? 毎日毎日ボーッとしてさ」「……あ、うん……」舞台の上でのキスの事件のことは、まだ誰にも言っていない。マキが何も言ってこないってことは、あれは誰に
姫と王子は幸せなひとときを過ごし、またすぐに別れの時間がやってきた。姫も王子も、遠くに離れていながらも心はいつも近くにあった。姫と王子はいつでもふたりでひとつなのだと、心に強く刻んでいたんだ。それなのに……。国同士が争うことになってしまった。当然、婚約も破棄だ。幸せだった日々が、この戦争によってぶち壊された。国は荒れ、人々も死に、飢えに苦しむ国民で街が溢れた。姫も、王子と会えずに苦しみ、部屋に閉じこもってしまう。食事もろくに口にせず、当時流行っていた病にかかってしまった。余命もわずか。意識もうつろになり、息も細くなっていく。城の皆は、もう姫の命は長くないと、諦めていた