オークション当日。玲央は車椅子に乗って現れた。誰かに押されながら、静かに入場してくる姿は、まるでかつての私がフランスに来たばかりの頃のようだった。同僚が冗談めかして言った。「まさか神宮寺さん、月島社長の『山海の残焔』を落札する気なんじゃ……?」会場には多くのバイヤーが集まり、入札価格は次々と跳ね上がっていく。だが金額が大きくなるにつれ、参加者は徐々に減っていき、最後には玲央とロシアのバイヤーの一騎打ちとなった。「1010万ドル」「1100万ドル」ヤリスが頬をこすりながら嘆息した。「しかもこのゲーム、買い切り型じゃないんだよね?今後の収益なんて、数えきれないくらい入ってくる……夢みたいだ」そして、ぽつりと付け加えた。「元婚約者にしては、すごい執念だな。愛を取り戻したいのかもね?」私はただ黙って見ていた。感情もなく、ただ遠くの出来事のように。最終的に、『山海の残焔』は1200万ドルで玲央が落札した。その価格は、前の10作品の総額に匹敵するほどだった。取引が成立すると、玲央は私のもとへとゆっくり近づいてきた。足の傷が癒えぬまま、さらに数日無理を重ねたのだろう。顔色は蒼白く、どこか陰のある面差しをしていた。「このゲームを贈り物として君に贈りたい。君の才能を、僕は最初から認めていた。……フランスに拠点を移すつもりなんだ。もし君が望むなら——」彼は唇を結び、一瞬、言葉を選ぶように間を置いた。私はにこやかに、しかし淡々と答えた。「ご厚意ありがとうございます、神宮寺さん。でもお仕事以外は、すべてお断りします。ただの大きな利益だったと思ってますので。さようなら」その瞬間、彼のまつげがピクリと震えた。色のない唇から咳が漏れ、抱いていた希望はすべて粉々に砕け散った。私は一切振り返ることなく、背を向けた。そして記者会見の場で、私はマイクの前に立った。ある記者が、好奇心を隠さずにこう尋ねた。「月島さん、神宮寺氏が1200万ドルで『山海の残焔』を落札しました。また、盗作疑惑の際には、あなたの手稿を提出して証明まで行いました。お二人には特別なご関係があるのでしょうか?友人?恋人?」私は一瞬だけ言葉を探し、それから、淡く笑った。「以前、友人と呼べる関係でした。『山海の残焔』の制作につ
翌日、私は『山海の残焔』のオークション準備に追われていた。そのとき、一本の電話がパリの病院からかかってきた。——玲央が、自らの脛を刃物で切りつけたという。駆けつけた救急隊が見たのは、血の海に倒れながら、満足げに笑う彼の姿だった。「これで……澪が、僕を許してくれる……」彼はそう呟いていたらしい。医療スタッフによれば、彼は「月島澪にしか連絡するな」と言い張り、私が来ない限り治療を拒んでいるという。いまだに出血は止まらず、意識も朦朧としている。だが——私はもう、簡単には「許す」なんてできない。あの100回にも及ぶ「弄びゲーム」の数々、そして嘘で塗り固められた日々。私は丁寧に、しかし冷淡に言い放った。「神宮寺さんとは面識がありません。彼が本当に治療を拒否するなら、葬儀社を手配してさしあげてください」その直後、電話の向こうから、彼の震えた声が聞こえた。「お月ちゃん……脚が……すごく痛いんだ。僕、もうダメかもしれない……お願いだ、少しでいい、顔を見せてくれ……前は、あんなに僕のこと気にしてくれてたのに……」私は何の迷いもなく、通話を切った。かつての私なら、神宮寺玲央の名を聞いただけで、すべてを投げ捨てて彼の元へ駆けつけた。でも、駆けつけた先には、彼の姿はなく、待っていたのは白石志乃たちの嘲笑だった。「月島澪ってさ、あいつの犬か何か?玲央が指一本動かしただけで、ホイホイ来るとか、マジウケるんだけど」「ほんと哀れだよね〜。好きすぎて自分からすり寄る女って、見てて痛々しいし、逆に怖いわ」……私は気持ちを整え、過去の闇を振り切るように立ち上がった。そして再び、『山海の残焔』のオークション準備に取りかかる。——今回は、絶対に勝ち取る。だがその夜明け前、白石志乃が自身のSNSで手書きの資料とプログラムコードを公開した。中には二年前の日付が刻まれたゲーム構成案が含まれており、彼女はそれを証拠として私が彼女のゲームを盗作したと主張しはじめた。かつて99回の弄びゲームを仕掛け、最終的には神宮寺に捨てられ、この二年間、家業も彼に徹底的に潰されてきた彼女。今、生き返ったかのように表舞台に戻った「戦犯」の私に、怒りの矛先を向けたのだろう。だが——その資料はすぐに私が見覚えのあるものだと分
二年後、私はフランスでゲームスタジオを立ち上げ、かつて一人で描いていた和風ファンタジーゲーム『山海の残焔』を、ついにこの世に送り出した。「月島凛」の名で国際ゲームデザインコンテストに応募した。この作品は、日本神話をモチーフにしたファンタジーという特異な構造が欧米市場にぴたりと合い、見事、国際ゲームデザイン大賞で金賞を受賞。国内でも熱狂的な注目を浴びた。日本人ゲームデザイナーとして初めて、このゲームデザインコンテストで金賞を受賞したのだ。作品の競売価格は瞬く間にトップに躍り出て、数億円単位で高騰。スタジオには連日、提携希望の連絡が鳴り止まなかった。オークション開催は三日後に控えていた。そんな折、父がぽつりと私に聞いた。「こんな派手にやって……神宮寺玲央に見つかったりしないか?」噂では、彼は今や首都圏で「亡き妻に囚われた男」と呼ばれているらしい。「月島澪」の名は、彼の前では決して口にしてはならない——それが、暗黙の掟となっていた。私は気にせず、淡く笑って答えた。「もう二年も経ったのよ。過去に囚われているのは彼であって、私じゃない。今の私は——誰も怖くないわ」父は、歩けるようになった私の脚を見つめ、ゆっくりとうなずいた。「あいつみたいなクズが、またお前を傷つけようとしたら……その時は私が、殺す」『山海の残焔』は、かつて彼の目の前で、私が何度も線を引き、色を塗っていた。設計図の一枚一枚が、彼の記憶に焼きついているはずだった。今回の受賞に、彼が何も感じていないはずがない。ただ、あの「墜落」が偽装だったとは、夢にも思っていないだろう。けれど、勘づけば——真実までの道筋は、そう遠くない。その予感は、的中した。金賞受賞が発表された翌日、玲央はスタジオの前に現れた。あまりにも痩せ細り、スーツは骨ばった肩にだらしなく垂れていた。鎖骨の上には、あのフェニックスのタトゥー。首には、私が事故機内に残した——100回の弄びの指輪。その眼差しは、長い沈黙の年月をくぐり抜けた男のものだった。沈んだまなざしの奥に、凍った執着と壊れかけの希望が同居していた。私を見た瞬間、彼の目がふっと揺れた。そして、あの懐かしい呼び名を口にした。「……お月ちゃん」枯れた声だった。「……国際大会の金賞、おめでとう
私は最後に一度だけ、スマホの画面を見つめた。気になっていたのは——白石志乃の裏アカウントに浮上した投稿。【玲央は、私たちの結婚式で『ピエロの弄び集』を流すつもりらしい。泣き崩れるあの人の顔が、オープニングにぴったりなんだって】添えられた写真には、山頂マンションの金庫。そこには、整然と99本の録音ペンが並んでいた。玲央からの着信は鳴り止まず、私は小さく笑って、そっとSIMカードを抜き取った。彼はまだ、飛行機事故のことを知らない。ただ、私が「弄びゲーム」の真相を知ったと気づいた頃だろう。疑い、怒り、焦燥?あるいは、不安と混乱?——もう、何一つ重要じゃなかった。父は言った。プライベートジェットをレーダーから消すのは、結婚写真から指紋を拭き取るようなものだと。何も心配はいらないと。私は、玲央の人生から静かに姿を消す。事故の報せが届くや否や、彼は理性を失ったように事故現場へ駆けつけた。焦げ跡を残す残骸に素手を突っ込み、鋼鉄に裂かれた高級スーツなど意にも介さず、彼は瓦礫を掘り返し続けた。消防隊員が制止しようとするが、彼の血走った目に、一歩退いた。「婚約者が、あそこにいるんだ!今日、僕が贈った月のネックレスをつけてるんだ!」そこへ、一人の大柄な男が近づいた。玲央が顔を認識する間もなく、無言のまま拳を振り下ろした。彼は倒れ伏すが、殴り返しもせず、ただ、ひたすらに——心の中の人の姿を求めて残骸を掘り続けた。「月島さんの遺骨は、母親とともにパリで眠ります。あなたが背負った罪は、どんな悔恨でも洗い流せません」そう告げたのは、私の父の秘書だった。玲央はその場に膝をつき、荒れ果てた廃墟に崩れ落ちた。その時、彼の視線が、何かを捉えた。埃まみれの破片の中に埋もれていた、ひとつの指輪。彼がかつて、私と選んだものだった。震える手で拾い上げると、その内側には、こう刻まれていた。【第100回の弄び。あなたの愛にすべてを賭けた】その文字は、私が最後に刻んだものだった。玲央の体は、雷に貫かれたかのように震えた。ようやく彼は悟った——私はすでにすべてを知っていたのだと。それでも彼は、私を何度も傷つけ、そして白石志乃とその仲間たちが私を踏みにじる姿を、ただ黙って見過ごしていたのだった。弄びゲームという仮面をかぶっ
目を覚ましたとき、右足は分厚いギプスに覆われていた。「一生、跡が残るかもしれませんね」医師の声が耳に残る。私は声も出さず、ただ静かに涙を流した。玲央はベッドのそばに座っていた。頬はやつれ、目の奥には、悔恨と痛みが滲んでいた。彼はギプスに、小さな月を描いた。「お月ちゃん……君が元気になるまで、ずっとそばにいる」その声はやさしくて、どこか懐かしかった。私は目を閉じた。彼はそっと布団をかけ直し、静かに動いた。病室を何度も出入りし、必要なものを準備し続けた。ひとつひとつ丁寧に。まるで、誠実な恋人のように。でも、忘れられない。この足を壊したのは、ほかならぬ彼なのだ。私は眠ったふりをしながら、激しく波打つ鼓動を押し殺していた。彼は一晩中そばを離れず、ギプスの「月」にキスを繰り返した。手を握りしめたまま、涙をこぼし続けた。「ごめん……お月ちゃん。全部、僕のせいだ。あんなやつらの言葉なんか、聞くんじゃなかった。君を、あんなふうに傷つけて……でも……まだ間に合った。これからは、絶対に君を守る。君は僕の命なんだ、お月ちゃん……もう少しで、君を失うところだった……本当に……ごめん……」その声は震えていて、苦しさに満ちていた。——けれどそれは、「結果」に対する痛みでしかない。あのとき白石志乃たちの前で彼は言っていた——「弄びはいい。でも、身体には絶対に触れるな」と。その言葉を思い返すと、ほんの少し、心が揺れた。けれど、そんな自分がたまらなく惨めに思えた。玲央の「ルール」は、いつだって白石志乃のためのものだ。これで——第99回目の弄び、私はまた、彼女を笑わせるためだけの、哀れなピエロだった。そして玲央は、今回もそれを、何も言わずに見ていた。まるで、それが「当然の役割」であるかのように。第100回目もきっと、彼はまた、私を傷つける側にたつのだろう。翌朝、玲央が朝食を買いに出た隙に、私は父に電話をかけた。護衛を向かわせてもらうよう頼み、「飛行機事故」計画の最終準備に入った。白石志乃が病室に現れたのは、その直後だった。華やかな笑み。勝者の顔だった。「月島澪、足を折らせたのも私の計画——これで99回目の弄びよ」私は言葉を返さなかった。ただ、黙って睨んだ。彼女は私を見下ろし、肩に
誕生日パーティーの夜、玲央の仲間たちが私を囲み、個室の中心に一番大きなケーキを押し出した。「澪さん、玲央さんが言ってたよ。澪さんが甘いものを食べる姿が一番好きだって」玲央は視線を逸らし、まるで何も聞こえなかったかのように振る舞った。ケーキを一口含んだ瞬間、喉奥に苦みが広がり、胃の底から吐き気が込み上げる。だが、白石志乃は私の手を押さえ、残ったケーキを力づくで口に押し込んできた。「澪さん、今日は私の誕生日なのよ?空気読んで。まさか、私に吐き気がするってこと?」次の瞬間、下腹部に鋭い痛みが走り、内臓を鷲掴みにされたような激痛に息が止まった。周囲では、玲央の仲間たちが笑い、囃し立てる。私の苦しむ姿を、まるで見世物のように。ケーキを無理やり食べ終えた私は、耐えきれず洗面所へ駆け込み、胃の中を全て吐き出した。その背後で、満足げな笑い声が個室にこだました。「まだ胃腸炎が治ってなかったのか?」玲央が差し出したぬるま湯にはミントの葉が浮かんでいた。私たちが初めて出会った頃、彼が教えてくれた「吐き気止めの裏技」だ。——その優しさが、今は嘘のように冷たい。返事をしようにも、鋭い痛みに言葉が出ない。腹の奥が無数の針で刺されるように痛む。ふと視線を落とすと、鮮やかな血が脚を伝い、床にぽたぽたと滴っていた。私は玲央の腕を掴み、震える声で訴えた。「……病院に……連れてって……」だが白石志乃がドアの前に立ちはだかり、にこりと微笑みながら言った。「生理不順よ。女の子なら誰でもあること。玲央、そんな大袈裟にならないで」「どけ!」玲央の怒声が、部屋の空気を切り裂いた。彼が白石志乃に声を荒げたのは、これが初めてだった。——診察室の外で、白石志乃の甘えた声が耳に届いた。「ねえ、ちょっと……幻覚剤入れすぎたんじゃない?人前で恥をかかせるだけって言ってたよね?」仲間の男が愉快そうに笑った。「でもさ、ついでにいらないガキも処分できたなら、功績じゃない?玲央も感謝してるって」「そうだよ、三年も経ってるのに、子どもなんかできたら厄介でしょ?月島澪を捨てるに捨てられなくなるじゃん」長い沈黙の後、玲央がようやく低く言った。「弄びはいい。でも、身体には絶対に触れるな」その一言に、白石志乃は目を見開き、憤り混じり
私は父に電話をかけた。「一緒に、パリで暮らしたい」と伝えた。母が亡くなってから五年——父はずっと、ふたりが愛を誓ったあの場所で、静かに彼女の記憶と生きていた。それなのに私は、玲央のためにすべてを置き去りにした。留学の誘いを断り、ずっと国内にとどまり、父とはほとんど会えない年が続いた。氷のような男を温め続ければ、いつか春が来ると信じていた。けれど忘れていた。氷が溶けたあとは、肌を刺す冷たさしか残らないということを。命を削るような真心は、結局ただの冗談だった。私は彼が憧れの人——白石志乃を手に入れるために使った、滑稽なピエロに過ぎなかった。電話越しの父は、嬉しそうに声を弾ませた。「そうか……やっと分かってくれたんだな、私の大事な娘よ」私は涙を飲み込んで、小さく頷くように返事をした。「お父さん、出発のとき……飛行機事故を、偽装してほしい」理由は語らずとも、父はただ静かに承諾してくれた。飛行機事故——それは、玲央に贈る私からの最後の贈り物。月島澪という名前を、一生、悔いとともに刻みつけるために。スマートフォンの中のふたりの写真を、すべて削除した。荷造りのため帰宅すると、彼の金庫から一冊の革製ノートが滑り出た。深緑のカバーには、ゲーム『山海の残焔』のフェニックスの紋章。それは、私が36回の徹夜を重ねて生み出した初期ロゴだった。そのノートには、これまで私が描いてきたすべてのデザイン原稿が綺麗に収められていた。玲央が一枚ずつ、大切に集めてくれていたのだ。「夢が叶いますように」と願いながら。七ページ目で手が止まる。眼鏡をかけてコードを打つ私の写真。その横に貼られた付箋。【今日はプランナーにキレて、怒った猫みたいになってた。修正後の案は10倍良くなってたけど。こんな可愛い天才、他にいる?】思い出す。徹夜でデザインに打ち込んでいた夜、彼は何も言わずにそばにいて、マッサージをしてくれたり、夜食を作ってくれたりした。「ケーキ食べたい」とつぶやけば、深夜でも買いに走ってくれた。生理の時には、決まってハーブティーとホッカイロを用意してくれた。もしあれが全部演技だったというのなら——それでも彼は、その演技に、本気で沈んでいたように思えてならなかった。最後のページには、去
記憶を失った首都圏の御曹司・神宮寺玲央(じんぐうじれお)は、まるで恋に落ちた少年のように、私を追いかけてきた。優しくて、まっすぐで、どこまでも誠実に見えた彼に、私は少しずつ心を許していった。三年。ただの「演技」のはずだった。けれど、嘘の恋人ごっこを続けるうちに、私は本気になっていた。妊娠がわかった日、ようやく彼に伝えようと決めた——だがそのとき、耳に飛び込んできたのは、あまりに残酷な言葉だった。「玲央さん、ありがとう。記憶喪失のフリをして、あの子を弄んで、私の気が済むまで遊んでくれてありがとう。あと一回で、百よ。それが終わったら、付き合ってあげる」そう微笑んだのは、かつて私を蔑み、弄んだ女——白石志乃(しらいししの)。玲央の心の中に宿る「女神」。決して手の届かない、叶わぬ初恋。その瞬間、私の世界は音を立てて崩れ落ちた。私は、ただ彼女を笑わせるための、哀れで滑稽な道化にすぎなかったのだ。そして私は、飛行機事故に巻き込まれ、表向きには——命を落とした。狂ったように残骸をかき分けた玲央が見つけたのは、たったひとつの指輪だけ。その内側には、小さな文字でこう刻まれていた。「第100回の弄び。あなたの愛にすべてを賭けた」玲央はその場に崩れ落ち、嗚咽し、意識を失って病院へ運ばれたという。目を覚ました彼は、私を弄んでいたすべての人間と袂を分かった。そのころ私は、フランスの雪の中にいた。凍てつく風の中で、静かに笑いながら、診断書に火をつけた。——彼が偽りの記憶喪失で私の心を欺いたのなら、私は偽りの死で彼にすべてを返したのだ。……壁一枚越しに、明るい声が響く。「玲央さん、第96回の弄びゲーム、クリアしたよ!」白石志乃の声には、無邪気さと甘えが入り混じっていた。玲央は、どこか冷笑を含んだ声で応じる。「それが楽しいと思ってるのか?」「だって、月島澪(つきしまみお)に仕返ししたいんだもん。志乃さんの国際賞も、ゲームデザイン大会の優勝も横取りされたし」友人たちが騒ぎ立てる。「志乃さん、あと4回で玲央が公式発表できるね!」私は、全身の血が凍るような感覚に襲われた。「やっぱ玲央はすごいよ。記憶喪失のふりしてあの子を弄ぶなんて」「最初のやつ、笑えたよな。あいつに雨の中、ネッ