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作者: 酔夫人
last update 最終更新日: 2026-01-16 11:01:04
錦野柾が考えたことは、自分の愛人を共有することだった。

男を集め、愛人を自慢し、オークション。最も高額を提示した男に愛人を抱かせてやる。

満足した男たちの賞賛が愛人の価値を高め、価値の高い愛人は錦野柾に金と、そんな愛人を持っていることを羨ましがる男たちの嫉妬混じりの称賛を浴びる。

全て己の欲のための愛人共有。潔癖症のくせをして、錦野柾自身がクソみたいな野郎だ。錦野柾は悦に入って「紳士的な同盟」と言っていたが、ただ性的な“兄弟”を持つだけの下種な行為。

これは他にもメリットがあるやり方だと、錦野柾は俺に   言った。

完璧な愛人を一人作るのにかなり金がかかるが、愛人を共有すれば錦野柾の負担は大幅に減り、錦野柾はまた違うタイプの愛人を育てて同盟の規模を大きくしていく。やがて日本経済は同盟を軸に成長していく。

錦野柾はまるで高尚な行い、神聖な使命のように語っていたが、要は男たちに買春という犯罪行為をさせて、それをネタに脅して逃げられなくし、金を搾り取って己の欲を満たそうとしているだけだ。

錦野柾はこのために浅草・千束エリアの物件を欲しがった。

浅草・千束エリアと限定したのは、あの辺りに江戸で最も有名な花街・吉原遊郭があった土地だったから。

遊郭文化を蘇らせるのだと、歪んだ笑みを浮かべていた。

あの辺りは観光資源とインバウンドが見込まれて土地の価格は急騰、錦野柾には買えない。

でも俺には買える。

錦野柾の要求は俺にとって多少負担だが無理な要求ではない。

あの音声の脅威を考えればもっと無茶な要求でも応えようと思う。

でもここで要求を叶えたら、錦野柾はさらに要求してくるに違いない。

だから応えるわけにはいかない。

でもそうするとあの音声データを錦野柾がどうするかが分からない。

ああ、もう、いっそ――。

「どこかにクズを捨てる場所はないか?」

桔梗の目に入らない場所。

桔梗の耳に届かない遠い場所。

今回みたいに不意打ちができないように監視しやすい場所。

そんな便利な場所――。

「ああ、ある。いいところがあるぞ」

しばらくして返ってきた武司の言葉に俺は驚き目を見張った。

「どこだ?」

そんな都合のいい場所。

「ちょうどいいクズ箱があるじゃないか」

「あ……」

忘れたかったから忘れていた。

……確かにちょうどいいクズ箱だ。
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