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第1130話

Auteur: 栄子
そして、教会に結婚行進曲が響き渡った。

参列者たちは一瞬で静まり返った。

教会の扉が外から開かれた。

純白のウェディングドレスに身を包んだ綾は、仁の手を取り、レッドカーペットの上をゆっくりと歩いてきた。

そこへ、無数のフラワーシャワーが降り注いだ。

参列席では、ドレスを着た澄子が一番前の席に座り、彼女の隣には星羅がいた。

澄子の体調はこの2年でだいぶ良くなった。綾のことも分かるようになってきたが、それでもたまに優希を抱きしめながら「綾」と呟くことがあった。

澄子は優希をとても可愛がっていた。仁によると、優希が幼い頃の綾にそっくりで、澄子は無意識のうちに、幼い綾に償うかのように、優希を可愛がっているのだろう、とのことだった。

だが、今ウェディングドレス姿の綾を見て、澄子の目には涙が浮かんだ。そして、はっきりとした口調で言った。「綾は本当に幸せそうね」

星羅は澄子の背中を優しく撫でた。「入江さん、綾はもう苦しまなくていいんですよ。愛する夫と子供たちがいて、あなたや私たちがついていますので、綾の幸せな人生は、これから始まるんです!」

それを聞いて、澄子も頷き、何度も「よかった。よかった」と繰り返した。

綾は母親の姿を見ると、思わず胸が熱くなった。

仁は綾の方を向き、優しく言った。「お母さんは、あなたの結婚式に出席すると知ってから、ずっと落ち着いている。記憶も混乱していないみたいだ」

綾は微笑みながら、言った。「仁さん、ありがとうございます。あなたがいなかったら、彼女もここまで回復できませんでした」

仁はいつものように言った。「家族なんだから、そんな水臭いことは言うな」

そして、フラワーガールとページボーイもレッドカーペットを歩いて来ていた。

優希と安人はそれぞれ花かごを持ち、綾の後をついてゆっくりと前へと進んでいったのだ。

二人は花かごから花びらを撒き散らし、特に優希はこの役目が気に入ったようだ。可愛らしい顔に、満面の笑みを浮かべていた。

安人は少し恥ずかしそうに眉をひそめていたが、花びらを撒く手は止めることはなかった。彼が真面目な顔つきで、一生懸命花びらを撒く姿に、大人たちは思わず笑みをこぼした。

誠也は黒いスーツを着て、祭壇の前に立っていた。

花束を抱え、ゆっくりと近づいてくる綾を見つめ、その切れ長の目には、深い愛情が宿っていた
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