Share

第868話

Author: 栄子
山田執事は頷いた。「それもいいでしょう。共同で養育をしていく形をとれば、哲也様には両親以外にも可愛がってくれる祖父母と曾祖父母ができるようになりますので、以前よりずっと良い環境になりますね」

「ええ、以前と比べたら、今の状況は大分よくなったでしょうね」真奈美は微笑んだ。

-

石川家の面々は、その日の午後になってようやく、真奈美が新井家に戻ったことを知った。

この知らせを聞いた楓と真司は、いても立ってもいられなくなった。

二人は、新井家へ行って真奈美を連れ戻そうと騒ぎ出した。

若葉は慌てて二人を宥めた。

楓は怒りが収まらず、若葉にすぐに帰ってきて、真奈美を説得するようにと大輝へ電話をかけさせた。

若葉は大輝に3回電話をかけたが、どれも繋がらない。

真司は怒りのあまり、大輝が帰ってきたら、こっぴどく叱りつけると言い放った。

二人は高齢のため、若葉は深刻にならないよう、夫婦喧嘩でよくあること、大したことではないと、多少の脚色を加えて説明した。

それで、何とか二人を落ち着かせた。

そして、若葉は隼人を連れて部屋に入った。

「真奈美は今回、本当に離婚する気でいるみたいね」若葉は焦燥した様子で言った。「よりによって、大輝は電話にも出ないなんて!」

「今回は大輝がやりすぎた」隼人も厳しい表情で言った。「彼の周りの人間に連絡してみよう」

「そうして。早く連絡して、一体何を考えているのか確かめて!」

隼人は返事をしてスマホを取り出した。

しかし、連絡先を開くよりも早く、秘書の電話がかかってきた。

隼人は通話ボタンを押した。

電話口から、秘書の焦った声が聞こえた。「会長、大変です!ネットで、大輝様が人気女優と不倫していたという情報が出回っています!」

それを聞いて隼人の顔色が変わった。「いつのことだ?」

「昨夜、匿名で投稿されたようです。既にトレンド入りしており、話題の女優さんなので、さらに拡散する可能性があります」

隼人は目の前が真っ暗になり、よろめいた。

「隼人!」

驚いた若葉は、慌てて彼を支え、ソファに座らせた。

隼人の顔色の悪さに、彼女は不安を隠せない。「どうしたの?こんな顔しないで......」

隼人は妻を安心させようと視線を送り、秘書に指示を出した。「すぐに情報の真偽を調べろ。それと、投稿内容を転送してくれ」

「かしこま
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 碓氷先生、奥様はもう戻らないと   第1130話

    そして、教会に結婚行進曲が響き渡った。参列者たちは一瞬で静まり返った。教会の扉が外から開かれた。純白のウェディングドレスに身を包んだ綾は、仁の手を取り、レッドカーペットの上をゆっくりと歩いてきた。そこへ、無数のフラワーシャワーが降り注いだ。参列席では、ドレスを着た澄子が一番前の席に座り、彼女の隣には星羅がいた。澄子の体調はこの2年でだいぶ良くなった。綾のことも分かるようになってきたが、それでもたまに優希を抱きしめながら「綾」と呟くことがあった。澄子は優希をとても可愛がっていた。仁によると、優希が幼い頃の綾にそっくりで、澄子は無意識のうちに、幼い綾に償うかのように、優希を可愛がっているのだろう、とのことだった。だが、今ウェディングドレス姿の綾を見て、澄子の目には涙が浮かんだ。そして、はっきりとした口調で言った。「綾は本当に幸せそうね」星羅は澄子の背中を優しく撫でた。「入江さん、綾はもう苦しまなくていいんですよ。愛する夫と子供たちがいて、あなたや私たちがついていますので、綾の幸せな人生は、これから始まるんです!」それを聞いて、澄子も頷き、何度も「よかった。よかった」と繰り返した。綾は母親の姿を見ると、思わず胸が熱くなった。仁は綾の方を向き、優しく言った。「お母さんは、あなたの結婚式に出席すると知ってから、ずっと落ち着いている。記憶も混乱していないみたいだ」綾は微笑みながら、言った。「仁さん、ありがとうございます。あなたがいなかったら、彼女もここまで回復できませんでした」仁はいつものように言った。「家族なんだから、そんな水臭いことは言うな」そして、フラワーガールとページボーイもレッドカーペットを歩いて来ていた。優希と安人はそれぞれ花かごを持ち、綾の後をついてゆっくりと前へと進んでいったのだ。二人は花かごから花びらを撒き散らし、特に優希はこの役目が気に入ったようだ。可愛らしい顔に、満面の笑みを浮かべていた。安人は少し恥ずかしそうに眉をひそめていたが、花びらを撒く手は止めることはなかった。彼が真面目な顔つきで、一生懸命花びらを撒く姿に、大人たちは思わず笑みをこぼした。誠也は黒いスーツを着て、祭壇の前に立っていた。花束を抱え、ゆっくりと近づいてくる綾を見つめ、その切れ長の目には、深い愛情が宿っていた

  • 碓氷先生、奥様はもう戻らないと   第1129話

    安人は言った。「......ダメってわけじゃないけど、今はまだ子供なんだから、ちゃんと勉強して。結婚の心配は大人になってからするものだから!」「じゃあ、先に予約しておく!」優希は安人を見つめて、堂々と宣言した。「予約しておかないと、哲也お兄ちゃんはこんなにカッコいいんだから、誰かに取られちゃったらどうするの?」安人は言った。「......世の中にカッコいい人はたくさんいるんだから、彼一人いなくなったところで、どうってことないでしょ?それに、あの人、あなたより3つ年上なのよ。年寄だから!僕は反対!」それを聞いて、哲也は怪訝な顔をした。優希は安人を睨みつけた。「私は哲也お兄ちゃんが、好きなの!3つ年上の人が好きなの!年上の人が好きなの!あなたに関係ないでしょ!」それを聞いて哲也もすかさず言った。「......あの、3つしか年上じゃないから、そんなに年寄りじゃないよ」すると、安人は言った。「優希ちゃんに変なことを吹き込まなでよ!」そう言われて、哲也は黙り込んだ。優希は哲也のところに駆け寄り、小さな手で彼を守るかのように前に立った。「お兄ちゃん、哲也お兄ちゃんに怒鳴らないでよ!哲也お兄ちゃんは私の未来の夫なんだから!未来の夫に意地悪したら、もうあなたとはもう絶交よ!」安人は絶句した。一方で、優希に守られている哲也は、ドキドキと胸が高鳴るのを感じた。安人はため息をつき、首を横に振った。大変だ、自分の妹は恋愛のことしか頭にないみたいだ。......子供たちの会話は、大人たちの耳には届かなかった。何と言っても、今日の主役は誠也と綾だから。プロポーズも成功したんだから、次は結婚式だ。星羅は言った。「教会の準備は万端よ。ウェディングドレスも既に届けてあるし、ヘアメイクも待機しているから。さあ、出発しよう」本来は綾がすべて準備していたのだが、今は誠也が主導権を握っているようだ。誠也は綾のために、式場でもサプライズを用意していた。誠也は大型バスを貸し切り、科学館を出てから一行を乗せて教会へと向かった。目的地はA市にある、ゴールドコースト教会だ。かつてあの教会で行われた「離婚式」は、ずっと綾にとって心残りだったのだ。しかし、今、彼女自らこの場所を結婚式場に選んだということは、過去を完全に吹っ切ったと

  • 碓氷先生、奥様はもう戻らないと   第1128話

    「誠也のこと、まだよくわかってないのね!」音々は輝の手を取り、綾の前に出て笑いかけた。「あなたがG国に行きたいって言った時、彼はすぐにあなたの計画に気づいたのよ!」「音々、輝......」綾は、本来なら結婚式の準備で忙しいはずの新婚夫婦を見て、思わず苦笑した。「あなた達も来てくれたのね?」「私たちは親友代表の応援団なんだから、こんな大切な日を見逃すわけにはいかないでしょ!」「二人とも来たってことは、赤ちゃんはどうしてるの?」「一緒に連れてきたよ!」音々は言った。「稜花も一緒に来てるけど、ホテルで待っててもらってるの」綾は言葉に詰まった。彼女は驚きと感動で胸がいっぱいだった。その時、外から足音が聞こえてきた。大輝と哲也が来たのだ。「遅くなってすみません!飛行機が遅れてしまって......間に合いましたか?」清彦は笑って言った。「石川社長、ギリギリのタイミングでしたね。碓氷先生が跪いているところが見られましたよ!」大輝はそれを聞いて眉を上げ、綾の前で片膝をついている誠也を見た。「碓氷社長、まだ跪いてるんですか?この結婚式、本当に実現する見込みはあるんですか?」誠也は唖然とした。「それは二宮社長次第ですね!」音々の言葉が終わると、全員の視線は綾に集まった。綾は本来なら、自分が誠也にサプライズしてあげようと思ったのに、彼は既に彼女の考えを見抜いて、皆に協力させていたのだ。しかし、よく考えてみれば、これは誠也らしいやり方だった。彼は洞察力に優れているし、二人はいつも一緒にいたから、彼が自分の思っていることに気が付かないわけがないのだろう。当初の計画とは少し違ったけれど、最終的な結果は同じだった。そして、誠也は綾を見て、改めて言った。「綾、結婚してくれるか?」綾は手を差し出して応えた。「はい」それを聞いて、誠也は彼女の手を取り、指輪を薬指にはめた。「わあ!」優希は嬉しそうに拍手した。「お父さん、プロポーズ成功!母さんがお父さんと結婚するって!」一方で傍らに立っていた安人も、抱き合っている両親を眺めて、いつもすましていた彼の小さな顔にも、めずらしく輝くような笑顔が浮かんだ。哲也は大輝の隣に立っていて、この光景を見て、思わず隣の大輝を見た。息子の視線を感じた大輝は、下を向いて言った。

  • 碓氷先生、奥様はもう戻らないと   第1127話

    その声は、記憶の中の声と全く同じだ。綾はハッとした。そして、アンドロイドの顔を見ながら、笑顔で頷いた。「おじいさん、ただいま。今日は優希と安人も一緒に来たの。ほら、私に似てるでしょ?」アンドロイドは優希と安人を見て、二人を認識した。しばらくして、声が再び聞こえてきた。「男の子は誠也に、女の子はあなたに似ているね」綾は、アンドロイドがここまで人間らしく進化しているとは、予想もしていなかった。7年の歳月で、自分と誠也の間に大きな変化があっただけでなく、科学技術も大きく進歩していたんだな。「綾、今は幸せに暮らしているのかい?」アンドロイドは尋ねた。綾は、祖父と瓜二つの顔を見て、微笑みながら目に涙を浮かべた。「おじいさん、今はとても幸せよ。私も愛する夫、そして可愛い子供たちがいる温かい家庭ができたの。おじいさんの教えを守って、頑張ってきた甲斐があったのよ。今は本当に幸せなの」「そうか。では綾、誠也と結婚する準備はできているのか?」綾は、その言葉にハッとした。彼女が状況を理解する間もなく、倉庫のドアが突然開いた。そして、数人が入って来た。花束を持った人、ウェディングドレスを持った人、指輪の箱を持った人、スマホを掲げている人......綾は、それら見慣れた顔ぶれに驚き、呆然とした。「みんな......」彼女はそう言いつつ、既に涙が流れた。「どうしてここに?」星羅は綾に近づき、誠也に指輪の箱を渡した。「あなたの頼みだから、裏切り者になる覚悟で来たのよ!いい?もしまた綾を傷つけたら、絶対に許さないわよ!」誠也は指輪の箱を受け取り、真剣に頷いた。「安心して。もし俺が綾を裏切ったら、その場で命を絶つ覚悟はできているから!」「誠也!」綾はそれを聞いて慌てて叫んだ。「何を言ってるの!」「綾!」星羅は綾の隣に行き、彼女を睨みつけた。「こんな誓いもできない男なら、心にやましいことがあるってことよ!それに、まだ夫婦にもなってないのに、そんなに彼を庇うなんて。男を甘やかすとつけあがるだけだって、忘れたの?」そう言われると、綾は何も言えなかった。「星羅、余計なことを言うなよ」丈は星羅を脇に引っ張った。「今日の私たちはキューピッド役だってことを忘れたのか」「あ、そうだ!」星羅はバツが悪そうに笑った。「ごめん、つい、対抗

  • 碓氷先生、奥様はもう戻らないと   第1126話

    綾は反射的に誠也の方を見やり、電話口の星羅に言った。「担当者の連絡先をラインで送ったから、直接連絡して」電話口で、星羅は綾がよそよそしい口調で話すので、誠也がそばにいると察した。彼女はすぐに状況を理解し、「ええ」と言って電話を切った。......綾は星羅に担当者の電話番号を送った後、さらにメッセージを送った。【佐藤先生にも協力してもらうように頼んでね】星羅はすぐに返信した。【了解!私たち夫婦で全力で協力するよ!】綾は微笑んだ。【ありがとう】星羅は呆れた顔の絵文字を返信してきた。綾がスマホをバッグにしまうと、誠也は彼女を横目で見て、「仕事の件か?」と尋ねた。綾は表情を変えず、「ええ、ちょっとした用事よ。桃子に任せてあるから大丈夫」と言った。「そうか」誠也は言った。「もうすぐ科学館に着くぞ」綾は窓の外を見て、「この辺りもずいぶん変わったみたいね」と言った。「俺たちが来た時は、この辺りはまだ何もなかった。科学館の発展が地域経済を活性化させ、今では多くの企業が科学館と提携している。だから、こんなに規模が大きくなったんだ」「私の記憶が正しければ、この科学館にはあなたが一番投資しているよね?」「ああ、科学館はアヤノグループと直接提携している。いくつかのプロジェクトは、既に市場に投入されている新エネルギー車に採用されていて、今年は医療分野にも進出する予定だ。将来的には、全てが順調に進めば、航空宇宙産業との提携も視野に入れているからな」綾は少し驚いた。彼女は誠也が非常に鋭いビジネスマンであることは知っていたが、まさか全ての投資に、こんなにも綿密な計画があったとは思いもしなかった。そうこうしていると、車は科学館の駐車場に入った。館長は既に連絡を受けており、ずっと待機していた。誠也は妻子と一緒に車から降りると、館長と館員が出迎えてくれた。7年ぶりに来てみると、科学館は大きく様変わりしていた。規模が拡大され、建物全体が近未来的な雰囲気を醸し出していた。館長は4人を、2体のアンドロイドが保管されている専用の倉庫へ案内した。誠也は優希の手を、綾は安人の手を引いていた。2体のアンドロイドを見た優希は、目を大きく見開き、澄子そっくりのアンドロイドを指差して叫んだ。「おばあさんだ!」誠也は優しく説明

  • 碓氷先生、奥様はもう戻らないと   第1125話

    綾は俯き、小さくため息をついた。「あなたと綾辻さん、まだ連絡を取り合ってるの?」「いいや」誠也は言った。「もともと、互いに馬が合わないからな」「じゃあ、どうして綾辻さんが悠人を自分の息子みたいに育てているって知ってるわけ?」「彼らの周りに、俺の仲間を配置してる」綾はきょとんとした顔になった。誠也は説明した。「悠人の出生の秘密は隠したままだ。でも、悠人が自分の出生について知っているかどうか確信が持てなかった。だから、用心のために克哉の近くに俺の仲間を潜り込ませてたんだ。もし万が一、真実が明るみに出たとき、すぐに連絡をもらって対策を練れるようにしておきたかったんだ」綾は頷いた。「あなたって、本当に用心深い人ね」「以前は、俺がお前らを守れるって過信していた。それが原因で、遥たちにつけ込まれ、お前と子供たちを危険な目に遭わせてしまった。あんな思いは二度としたくない。だから、用心深いんじゃなくて、懲りただけだ」誠也は深く息を吸い込で、真剣な声で言った。「綾、俺は完璧な人間じゃない。でも、お前と子供たちに、安心して暮らせる生活環境を作ってやるために、努力は惜しまないつもりだ」綾は誠也の手を握り返した。「あなたは、もう十分頑張ってくれてるから」「まだ足りない」誠也は綾の手を握りしめた。「もっと頑張らないと」そう言っていると、「お父さん、母さん!私とお兄ちゃん、終わったよ!」優希は安人の手を引いて部屋に入ってきた。「さっき、お兄ちゃんと一緒に自分の服を整理したんだ!」さっきまで妹だって認めたがらなかったのに、今は「お兄ちゃん」て、嬉しそうに言ってる。綾は思った。この子は、ちょっとツンデレなのかもしれない。「じゃあ、夕飯を食べに行こうか」誠也は綾の手を放し、二人の子供の頭を撫でた。「何が食べたい?」優希は安人を見た。「お兄ちゃん、何がいい?」そう聞かれて、安人の整った小さな顔は、少し赤くなっていた。彼も初めて妹に「お兄ちゃん」と認められて、少し照れているみたい、だけど、とても嬉しそうだ。すると、安人は妹を見ながら、かっこつけて言った。「優希ちゃんが食べたいものなら、何でもいいよ!」「じゃあ、伊勢エビが食べたい!」優希は笑った。「じゃあ、伊勢エビにしよう!」安人は綾を見た。「母さん、伊勢エビは好き?」

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status