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第12話

作者: 雲間探
老夫人は少し困ったような表情を浮かべた。玲奈があまりにも控えめで、智昭に対して従順すぎるせいで、多くの機会を逃してしまい、そのせいでこれほどの年月が経っても二人の関係に進展がないのだと感じていた。

しかし玲奈がそう言うなら、無理強いはしなかった。

食事が始まり、みんな会話を楽しみながら食べていた。雰囲気は悪くなかった。

玲奈はほとんど口を開かず、黙って食事をしていた。

智昭が入ってきてから既に10分以上経っているのに、夫婦二人は一言も交わしていなかった。

というより、全く接点がなかった。

これが彼らの夫婦としての日常だった。

みんなもすでに慣れていて、特に違和感を感じている様子はなかった。

茜は何か食べたい時、以前は玲奈が世話を焼いていたが、今は智昭に頼むのが習慣になっていた。

ただし、大きな海老が食べたくなった時は、玲奈の方を見た。

これまで海老を食べる時は、玲奈がいつも自分から茜と智昭の分の殻をむいてくれていたから。

「ママ、大きい海老が食べたい」

玲奈は離婚を考えていて、茜の親権を争うつもりもなかった。

それでも、茜は自分の娘だ。彼女には義務があり、できる限り茜の要望に応える責任がある。

だから今、茜が海老の殻をむいてほしいと言うなら。

「はい」と答えた。

箸を置いて海老の殻をむき始めると、老夫人が彼女の手を見て、突然声を上げた。「玲奈、指輪は?」

その言葉に、全員が——智昭を含めて、玲奈の手を見た。

結婚後、智昭との結婚生活が冷たいものだったにも関わらず、玲奈はずっと藤田おばあさんが用意した結婚指輪をつけていた。

一方、智昭は一度もつけたことがなかった。

彼の分の結婚指輪は、どこかに捨てられたのだろう。

この数年間、玲奈はどこに行くにも指輪をつけていて、外すことを惜しんでいた。

みんなもそれに慣れていた。

麗美はこの数年、そのことを何度も皮肉っていた。

今日、彼女が結婚指輪をつけていないことに、最初は誰も気付かなかった。結局、普段から彼女の手を注意して見る理由もなかったのだ。

だから、老夫人が言わなければ、他の人々は気付かなかっただろう。

玲奈は海老の殻をむく動作を一瞬止めたが、すぐに平然とした様子で答えた。「朝、急いでいて家に置いてきてしまいました」

実は、離婚協議書を準備した時に既に指輪を外していた。

離婚協議書と一緒に封筒に入れてあった。

ただ、まだ正式に離婚していないし、老夫人が絶対に離婚に同意しないことも分かっていた。今、智昭との離婚の話を切り出せば、おそらく当分の間は離婚できないだろう。

だから、玲奈は老夫人に本当のことを言わなかった。

老夫人は聞いて、微笑んだ。「そうだったの」

その後、みんなまた普通に食事を続けた。

食事の後、一同はリビングに移動し、フルーツやデザートを食べながら談笑した。

老夫人は相変わらず玲奈と智昭を引き合わせようとした。

また二人を並んで座らせようとする。

智昭は相変わらず玲奈に一瞥もくれない。

玲奈は隣に座りたくなかったが、老夫人の要望を断り続けるのも良くないと思い、智昭の隣に座った。

これは数ヶ月ぶりに、こんなに近くに座ることだった。

玲奈は智昭から漂う馴染みの男性用香水の薄い香りをはっきりと感じることができた。

しかし今の彼女の心は静かな水面のように穏やかで、目の前のフルーツプリンを小さく口に運ぶだけで、智昭に話しかけようとする気配はなかった。

老夫人はとても満足そうで、二人を見つめながら笑顔で言った。「本当に似合いの二人ね」

一人は凛々しくハンサム、もう一人は静かで優しく、そして美しい。外見だけを見れば、確かに相性が良かった。

しかし、それは外見だけのことだった。

他の条件で言えば、玲奈はまだまだ及ばなかった。

ただ、老夫人がこれほど喜んでいるのを見て、麗美と美穂は納得していなくても、その場で老夫人の機嫌を損ねることはしなかった。

その夜、老夫人の意向で、彼らは本家に泊まることになった。

8時過ぎ、智昭が老夫人と書斎で仕事の話をしている時、茜は玲奈の手を引いて、お風呂に入って寝たいと言った。

玲奈は茜と一緒に二階に上がり、お風呂の準備をした。

小さな浴槽に座って、茜は玲奈を見ながら、探るように尋ねた。「ママ、明日の朝……忙しい?」

確かに、明日の朝はママに学校まで付き添ってもらうことは妥協できる。

でも心の中では、やはり優里おばさんに付き添ってほしかった。

だから、ママが明日の朝忙しければ良いのに。

玲奈は首を振った。「忙しくないわ。どうしたの?」

茜はそれを聞いて、落胆して小さく唇を噛んだ。「ううん、なんでもない」

茜が言わないなら、玲奈も聞かなかった。

お風呂が終わると、玲奈は優しく茜の髪を乾かした。

髪が乾くと、茜はすぐに寝たいと言った。

玲奈は茜が携帯を見つめているのを見て、まだ遊びたいのだと分かった。「少し見たら寝るのよ。長く見ちゃダメよ。分かった?」

「はーい」

明日ママが暇なら、優里おばさんにこのことを伝えないと。

茜は優里が知って悲しむんじゃないかと心配で、どうやって伝えようか考えていた。

もともと気持ちが落ち込んでいたところに、玲奈にあれこれ言われて、さらにイライラした。玲奈を部屋から押し出しながら言った。「ママ、もう出て行って。9時半には電源を切って寝るから」

茜はこの点に関しては確かに自制心があった。

玲奈はそれを聞いて、おやすみを言って部屋を出た。

茜はすぐにドアを閉め、内側から鍵をかけた。

玲奈が一歩を踏み出したところで、茜が鍵をかける音が聞こえた。

玲奈は茜が他の人を警戒しているとは思わなかった。

警戒しているのは自分だけだ。

おそらく優里と何かを相談したいのだろう。

実際その通りだった。

茜はドアに鍵をかけるとすぐに戻り、携帯の電源を入れて優里とのLINEを開いた。『優里おばさん……』

二人が何を話したのか、玲奈には分からない。

深く考えることもなく、考える気もなかった。

彼女は部屋に戻った。

老夫人は玲奈を可愛がっていて、よく食事に呼んでいた。

何年もの間に、この家には彼女の日用品が結構置かれていた。

パジャマを見つけて、浴室に入った。

シャワーを浴びた後、いつもの自分の側のベッドに座り、まだ時間が早いので、バッグから本を取り出して静かに読み始めた。

どれくらい時間が経ったのか分からないが、目が痛くなってきたので本を閉じて時計を見ると、もう11時半になっていた。

しかし智昭はまだ戻ってこなかった。

実は、たとえ智昭が最初は自分に騙されたと思っていても、結婚して3年目には、智昭の態度は完全な親密とまでは行かなくても、以前よりは良くなっていた。

しかし、その直後に優里が現れた。

彼は優里を愛するようになり、また彼女との距離を置き始めた。

それ以来、彼はほとんど彼女に触れることもなくなった。

だから、こんなに遅くなっても智昭が戻ってこないのは、戻るつもりがないのか、それとも仕事が忙しいのか、分からなかった。

そんなことを考えているうちに、玲奈は知らぬ間に寝室を出て、階下に降りていた。

その時、近くから声が聞こえてきた。

「みんな寝てしまったわ。こんな遅くまで部屋に戻らないのは、玲奈がいるから戻りたくないの?」

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コメント (34)
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真由美
続きが気になる 旦那と子供の行動や言動が理解できないけど
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理恵
どうなるのか気になります。主人公が可哀想。幸せの展開になるといいと思います
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美佐子
主人公の置かれているいる状況が すごくて…お祖母様の思いと裏腹な 旦那態度、しかも平然と義理の姉妹と不倫してはばからない社会性?倫理観に ぐうの音も出ません
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