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【11】④

last update 最終更新日: 2025-08-21 22:00:37

 彼女のほうへと視線を向けると、厳しい表情で腕組みをしていた。その一瞬で場の空気が張り詰める。

 

「結果的に『芽球』だったことは評価するべきでしょう。けれど、経験不足の学生が『芽球』と判断するのは危険です。現場では、見落としよりも誤認のほうが問題になることもありますから」 

「……申し訳ありません」

 「でも合っていたのだから……」と胸の奥で反発心が芽生えかける。 

 けれど、新庄さんの言葉は正論だった。私は素直に頭を下げる。

 

「新庄さんの言うことももっともです。でも、現場でも気付いた人間の一言が患者さんを救うことがありますから」

 織田さんがフォローを入れてくれて、少しだけ救われた気がした。

 

 ◆◇◆

 

「私、生意気だって思われてるのかな」

 昼休み、病棟の休憩室。コンビニの惣菜パンを頬張る翠に、ため息まじりでつぶやいた。

 

「誰に?」

 

「新庄さんに。彼女が巡回に来ると、毎回怒られてるような気がして」

 この一週間、血液検査室での実習中、彼女に何度も厳しく指摘された。

 

 血液像標本の作成では「端まで伸びていないから分布に偏りが出る」と。 

 血球計数用の検体を機械にかけたときは「混和不足で再検になる」と。いずれも鋭い口調だった。

 しかも織田さんに確認すると「私は問題ないと思ったのですが」と言う。

 つまり、特に問題のない行動に対しても注意されている可能性があるのだ。

「言われてみれば、瑞希には妙に厳しいかもねぇ。山口くんたちもそう言ってたよ。瑞希のこと細かくよく見てるねって」

「……やっぱり?」

 山口くんとは、同じ班のメンバーだ。私はお弁当の卵焼きを口に運びながら首をかしげる。

 そもそも新庄さんは

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