「あぁ、新庄さん、お疲れさまです。……そういえば、臨床実習の担当をされているんですよね。よろしくお願いします」
「朝比奈先生の妹さんとあれば、それはもちろん」
新庄さんはにっこりと兄に笑いかけた。それから。
「――仲のいいごきょうだいでとってもうらやましいです。朝比奈先生のそんな笑顔、私、初めて見ましたよ」
……?
彼女の声や言葉にトゲを感じて、彼女の横顔を思わずじっと見つめる。
とても愛想のいい笑みを浮かべているのに、目の奥はどこか冷めているというか、兄の反応を窺っている節がある。
それに、言葉の内容。後半部分は親しい仲だったり、付き合いの長い相手に宛てるような台詞だ。
彼女に違和感を覚えたのはこれで二回目。前回も同じように、兄との距離の近さを感じさせる物言いをしていたけれど……。
「たったひとりの妹なので。でも、実習ではビシバシ鍛えてください」
兄のほうは意に介さない様子で、明るくそう言うに留めた。
意図的にスルーしたのかもしれないし、そもそも気付いていなかったのかもしれない。深々と頭を下げると、兄はそこで会話を打ち切り、廊下を進んでいった。
「たったひとりの妹、ね……ふうん。ずいぶん大事にしてるんだ。あなたのこと」
兄のうしろ姿を目で追いながら、新庄さんがひとりごとのようにそう口にする。 低く、吐き捨てるような声のトーンがちょっと怖い。「新庄さん……?」
恐る恐る新庄さんに呼びかけると、彼女はあからさまにツンとした態度で「さぁ」と続ける。
「――無駄話はこの辺にして急ぎましょう」
「す、すみません……」
確かに、今は実習中だ。立ち話はよくない。
私は素直に頭を下げてから、彼女とともに速やかに生化学検査室へと向かった。
くちゅり、と粘着質な音を立てながら、漣くんの熱い切っ先が秘裂に触れる。 ゆっくりと体重をかけられると、少しずつ私のなかへ呑み込まれていった。「ん、んぁっ……」「つらい?」「大丈夫……痛くはないから、そのまま……」 前回から少し時間が空いていたせいか、苦痛ではないけれど、確かな圧迫感に身体がびくびく震える。「無理だけはするなよ。今日はとにかく、瑞希を気持ちよくしてあげたい」 耳元でそうささやいた漣くんが、左の耳朶にちゅっと吸い付く。「あぁ、んんっ……!」 耳輪を舌でなぞられるたび、ぞくぞくと快感が駆け上がる。 さらに軽く歯を立てられると、また違った愉悦が背筋を走った。「気持ちいい? ……ほら、もっと溢れてきた」「ん……気持ちいいっ……」 眩暈がしそうな快楽に翻弄されながら、私は素直に答えていた。「正直で偉いな」 褒めるような声音でそう言うと、漣くんがご褒美と言わんばかりに唇を重ねてきた。 口腔内を這い回る舌が、私を淫らな気持ちに染め上げていく。「ふ、ぅっ……んくっ……んんっ…」 ――掻き混ぜられて気持ちいい。もっと欲しい。 そんな願望を抱いた矢先、彼は唇を離して私の瞳を覗き込む。「かわいい……そのとろんとした目、堪らない……」「あっ!」 興奮に掠れた声を洩らしたあと、漣くんがゆるやかな律動を始めた。「んんっ、ぁあ――」 大きな質量が前後に動くたび、粘膜同士が擦れ合って、お腹の奥から痺れるような悦びが弾ける。「っ、はぁっ&
漣くんが避妊具を装着している間、どうにも落ち着かなかった。 ベッドに横並びで座りながら、私はそわそわと意味のないことをしてしまう。 兄の部屋の天井の四隅や、シーリングライトの形なんて普段気にも留めないものを、やけに真剣に観察していた。「瑞希、どうした?」「な、なんでもないっ」 不思議そうに顔を覗き込んでくる漣くん。 私は慌ててぶんぶんと首を横に振り、視線を逸らした。「……うそが下手だな。いかにも『目のやり場に困ってます』って顔してる」「っ、ごめん……まだ、その……慣れなくて」 図星を突かれて、顔を背けながら小さく謝る。 漣くんは私のことを、やっぱりなんでもお見通しだ。「そういうところも、かわいい」 ぽつりと呟くと、彼は私を抱き寄せた。 熱を帯びた胸に顔を埋めると、ドキドキがさらに加速する。 意外と筋肉質な腕が私の背中を包み、首筋にキスがひとつ落ちた。「――愛おしくてたまらない。瑞希が俺の腕の中にいてくれるのが、本当にうれしい」「私も……漣くんとこうして一緒にいられて、すごく幸せ」 少し前の私は、こんな未来が来るなんて想像できなかった。 奇跡でも起きない限り、望めないと思っていた。 でも――その奇跡は起きた。 大好きな人の温もりが、その証拠として今ここにある。「……ずっと謝らなきゃって思ってた。初めて瑞希を抱いた、あの夜のこと」「……?」 幸福感に浸っていると、不意に神妙な口調で切り出され、私はほんの少し身を離して彼の瞳を見つめた。「瑞希が初めてだってわかってたのに、ちゃんと『好きだ』って伝えられなくて……中途半
漣くんは私の頬に軽くキスを落とすと、そのまま足元へとずり下がった。 そして、私の両脚をそっと開き、その間に身体を割り込ませる。「な、なにするのっ……?」「いいから」「あっ、やぁ――!」 まさか、と思った次の瞬間。 漣くんが私の脚の間に顔を埋め、まだ絶頂の余韻で蜜を吐き続けている入り口に舌を這わせてきた。「だっ、だめだってば、漣くんっ……! そんなところ、汚いっ……!」「そんなことない。瑞希の身体に、汚い場所なんてないよ」「で、でもっ……あぁっ……!」 指で触れられるよりも鋭く、直接的な刺激。 粘膜の上を舐め上げられるたび、羞恥と快感が入り交じって全身を駆け抜ける。 ――顔から火が噴き出そうなほど恥ずかしい。 それなのに、どうしようもなく気持ちいい……!「んぁ、やぁ……漣くん、だめぇっ……!」「どうして? 気持ちよくないの?」「そういうんじゃ……っ、なく、てっ……!」 ざらついた舌先が秘芽を嬲るたび、えも言われぬ悦楽がほとばしる。 必死に足をばたつかせようとするけれど、彼にがっちりと押さえ込まれて身動きが取れない。 強制的に快楽を与え続けられる状況に、抗う術はなかった。「だめ、漣くん、本当にだめっ……! また、おかしくなっちゃう、ぁああっ……!」「何度でもおかしくなっていいよ。どんな瑞希も、大好きだから」「あぁっ、やぁ――っ……!」 濡れそぼった入り口に呼気がかかるだけでも、今の私には十分な刺
秘芽を探り当てた漣くんは、そこを親指で転がしながら、中指の先で入り口をくすぐった。 強烈な刺激に、あふれる蜜の量はさらに増していく。 熱を帯びたその場所は、圧をかけられるたびに少しずつ柔らかくなり、彼の指先を受け入れはじめていた。 ――わかる。漣くんの指が、私の中に入ってきているのが。「だ、めぇ……それ、だめぇっ……! んぁんっ……!」 声にならない声を上げても、秘芽への鮮烈な刺激は止まらない。 呼吸を忘れてしまいそうな愉悦に喘ぐ私の耳元で、彼がいじわるにささやく。「瑞希のここ、指に吸い付いてくる。……ナカにほしかったんだろ?」「ち、がっ……やぁ、んぁっ……!」 否定の言葉を必死に口にするけれど、その声は快感に震えて、むしろ悦んでいるようにしか聞こえない。 大好きな漣くんに“いやらしい女”だと思われたくなくて否定しているのに、身体の反応は正直すぎた。「まだ狭いけど……思ったよりすんなり広がりそうだ。ほら、もう全部入った」 下腹部に視線を落とした漣くんが、熱を帯びた声で言う。 気づけば、中指の根元まで呑み込んでいた。「熱くて、ぐにゅぐにゅしてて……瑞希が悦んでるの、伝わってくる」 出し入れされる指の感触に、腰がひとりでに揺れてしまう。 十分に潤っているのを確かめた漣くんは、さらに指を一本増やした。「ひぁっ……!」 二本の指がするりと埋め込まれ、奥を擦られた瞬間、腰が大きく震える。 お腹の裏側にぶつかるような感覚に、甘い悲鳴が止められなかった。「あぁ、ああっ……漣く、んっ、それ、やぁ…
「噛まれるの、いや?」「いやじゃ……ないっ……気持ちいいっ……」 舌先で頂を突きながら、上目づかいで問いかけてくる漣くん。 私はかぶりを振り、恥じらいに頬を染めながら答えた。 前みたいに壊れものを扱うように触れてくれるのも、大切にされている感じがしてうれしい。 けれど、こうして衝動的に愛撫されるのも、彼の思いの丈を全身で受け止めている気がして――いやじゃない。 むしろ、うれしくてたまらなかった。「もっとしてあげる」「ふぅ、んんっ……ぁあっ……!」 私の反応が気に入ったのか、漣くんはもう片方の頂も同じように愛撫してくる。 硬くなった先端に舌を這わせ、唾液を塗りつけ、軽く歯を立てて刺激を与える。 そのたびに背筋がぞくぞくと痺れ、びくびくと身体を反らしてしまう。「んっ……! やぁ……っ」 胸を責められているだけで、息が乱れる。 そんな私を見つめる彼の瞳は、熱を帯び、獲物を逃さない獣のように鋭かった。 愛撫を続けながら、彼の手が下腹部に降りていく。 恥丘を撫で、入り口を覆うレース越しに触れた瞬間、漣くんがふっと笑う。「すごいね。ここ、まだ触ってないのに、もう……」「だって……漣くんが……するからっ……!」 羞恥に耐えながら、震える声で反論する。 けれど自分でもわかっていた。 まだ触れられていないのに熱がこもり、レース越しでもわかるほどに蜜が溢れてしまっていることを。 はしたないと思うのに、止められない。そもそも、こんなふうにしたのは漣く
「んっ、あぁっ……」「かわいい声。もっと啼かせたい」 頬や首筋、鎖骨、脇腹へと熱を帯びたキスが降り注ぐ。そのたびに、肌がじんわりと火照っていく。 漣くんも自分の衣服を脱ぎ捨て、下着一枚だけを残して逞しい身体を晒したから、思わず息を呑んだ。「漣くんっ、やぁ……」 抗うように声を上げても、唇が触れるたびに甘い快感が弾けて散る。 柔らかなキスひとつひとつが、私の抵抗を簡単に溶かしてしまう。「やだって言いながら……ねだるみたいな声、出してる。……自覚ない?」「っ……!」 耳元に落とされた指摘に、顔が一気に熱くなる。 ――そうだ、漣くんの言う通り。 拒む言葉を口にしているのに、声色は媚びるようで、むしろ悦んでいるみたいに聞こえてしまう。 恥ずかしくて反論できずにいると、彼はふっと笑い、次の瞬間、強引に唇を奪ってきた。「んんっ――ふ、ぅっ……」 衝動的で、乱暴といってもいいキス。けれど不思議と怖くはなかった。 荒々しい熱情のなかに、私への欲望と独占欲がありありと伝わってきて、むしろ心地よかった。 強引に唇を押し開かれ、舌を絡められる。 抗う暇もなく深く侵入され、されるがままになっているうちに、頭の芯がじんじん痺れていく。「……そういう反応されると、優しくできなくなる。もっと大事にしたいのに」 名残惜しそうに唇を離した漣くんが、じれったそうに吐き出す。 それほどまでに私を想ってくれている。そう実感できる言葉だった。「だ、大丈夫。私、ちゃんとわかってる。……前に漣くんが、すごく慎重に……抱いてくれたこと」 私は首を振り