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第1023話

Author: 風羽
電話の向こうで、寒真は感情を込めて言った。

「夕梨、六千億円なんて、お前と比べたら何の意味もない」

夕梨はわずかに目を閉じた。

無言で電話を切る。

彼女は顔を横に向け、掃き出し窓の外を眺めた。

午後の日差しは心地よいが、冬の訪れを感じさせる微かな寂寥感があった。

二羽の雁が南へ飛んでいく。

この季節ではもう遅いかもしれない。彼らは旅の途中で、無事に過ごせるだろうか。

その時、秘書がノックして入ってきて、静かにリマインドした。

「岸本さん、四時に小川先生の検診予約が入っています。お車の手配をしましょうか?」

夕梨は淡く微笑んだ。

「お願い」

そう言って、彼女は自分の小指を見つめた。

あの年以来、彼女は自分で運転することは極端に減り、移動はもっぱら運転手に任せていた。

その後、寒真と暮らしていた頃、夜中にふと目覚めると、彼が彼女の指を撫でているのを感じることがあった。まるで、そこが本当に元に戻らないのかを確認するかのように。

彼もまた、彼女の下腹部に手を当てていた。あの時、彼女は思ったものだ。彼は後悔しているのだろうかと。しかし、この世に後悔を消す薬はない。寒
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