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第1169話

Author: 風羽
願乃はかつて彰人を愛していた。

――深く、どうしようもなく。

同時に、彼を憎んだこともある。

頭の中で、極端な考えがよぎったことさえあった。

けれど――愛して、憎んで、そして今もなお絡め取られている。

逃げられないことはわかっている。

本気で断ち切るなら、徹底的にやるしかない。

周防家、岸本家、朝倉家――三家が手を組めば、彰人一人を排除することなど難しくはない。

……でも。

それができるのか?

――できるはずがない。

ほら、やっぱり。

彰人はそこを突いてくる。

彼女の世界に、好き放題に出入りし、踏み込み、かき乱す。

そして願乃は何もできない。

……

今、男に見つめられているだけで、耐えられなかった。

瞳には涙が溜まっている。

見せたくなくて、そっと顔を背ける。

だが、彰人はそれを見逃さない。

しばらく黙って見つめた後、ティッシュケースから一枚引き抜き、そっと彼女の涙を拭った。

その仕草はあまりにも優しくて――

「どうした?急にそんな顔して。昨夜はあんなに良かったのに」

その言葉に、近くにいた使用人は思わず赤面した。

――なんてことを平然と
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