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第580話

Author: 風羽
翔雅は結局、家に戻らなかった。

秘書の安奈が英国行きの直近の便を手配し、搭乗手続きまで済ませていた。だが、保安検査場の前で彼の足は止まった。

——英国に追いかけて行って、何になる?

澄佳とはすでに離婚した。

二人はもう他人なのだ。今さら彼女に許しを乞い、やり直そうと望むというのか。澄佳が応じるはずがない。

智也との八年を経ても、彼が悔いて手を伸ばしてきても、澄佳は一度も迷わず結婚を選んだ。彼女は昔から、燃える炎のように強く、常に華やぎをまとって生きてきたのだ。

大晦日の夜、空港のロビーは人で溢れていた。

顔いっぱいに喜色を浮かべる人々の中で、翔雅だけが無様に立ち尽くしている。

登場口を背に、彼は長椅子に崩れ落ちるように腰を下ろした。顔に残る傷跡すら、その端整さを損なうことはなく、少し仰いだ横顔はどこか艶めかしい。通りすがりの若い女性たちが思わず視線を向けるほどに。

安奈は見送りに来たが、長椅子に座り込み、まるで魂を失ったかのような上司の姿に思わず足を止めた。しばし呆然とし、それから恐る恐る声をかける。

「一ノ瀬さん……搭乗のお時間です」

「やめた」

翔雅は腕で目
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