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第592話

Author: 風羽
澪安がもし本気で結婚したいと思えば、大通りを歩くだけで相手はいくらでも見つかる。苦労する道理などない。

翔雅は膝の上の章真に頬を寄せ、軽くキスをした。「だったら一人連れて帰ってきて、俺たちに紹介してみろよ」

澪安は鼻で笑い、相手にする気もなく視線を逸らした。

その時、章真と芽衣がミルクを飲み終え、そろって澪安のもとに駆け寄る。「おじちゃん!」

——なんとも仲睦まじい。

澪安はしゃがみ込み、片腕ずつ抱き上げて連れ去ってしまった。

翔雅は呆然とその背中を見送るしかない。

一方で、使用人は子どもたちが寝ていた場所を片付けながら微笑んだ。

「章真と芽衣はおじちゃんととても仲がよろしいのですよ。ロンドンにいた頃も、澪安さまは毎月のように飛んで来て、ずっと可愛がっておられましたから。ご主人も少しずつ慣れれば、お子さまたちもきっと懐きますよ」

翔雅の胸には失望が広がったが、長居するのも憚られると悟っていた。澄佳が明らかに距離を置いているのが分かるからだ。

すると使用人が、ぽろりとこんな話を漏らした。

「舞さまのお友達の中には、澄佳さまに縁談を勧めたいという方が少なくありませんの。澄佳さまはずっと断っておられますけど、女性は年頃になると気が変わることもありますし……澄佳さま、まだ三十にもなられていませんしね」

その言葉に、翔雅の胸は一気に冷えた。

一ノ瀬家に戻ると、一ノ瀬夫人は家の中を忙しそうに立ち回っていた。デザイナーを呼び寄せ、子どもたちのためのキッズルームを改装しようとしていたのだ。

まだ幼い二人のために、一つの部屋を用意するつもりらしい。

だが一ノ瀬夫人は頭を抱えていた。

双子は男の子と女の子——壁をブルーにすべきか、それともピンクにすべきか……

息子の帰宅に気づいた一ノ瀬夫人は、設計図を渡し意見を求めた。翔雅はしばらく眺め、「ベージュにしましょう。落ち着いた色合いで男女どちらにも合う」と答える。一ノ瀬夫人は納得して頷いた。

だが周防家から戻った息子の表情が、しおれた茄子のように冴えないことに気づき、怪訝な顔をした。

「どうしたの?子どもが二人もいるのよ、喜ばしいことでしょう?父さんと相談したの。この子たちを隠しておくわけにはいかないけど、大々的に騒ぎ立てるのもどうかと思うのよ。

だからね、良い日を選んでささやかな食事会を開きましょう
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