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第931話

Author: 風羽
寒真はオーストラリアへと飛び立った。

その日、夕梨は岸本家の邸宅のバルコニーで、のんびりとコーヒーを味わっている。

向かいに腰掛けているのは茉莉だ。

白いウールのワンピースに身を包み、英国調のソファに身を預けたまま、茉莉はどこか心ここにあらずな妹の様子をうかがい、探るように声をかけた。

「朝倉寒真がオーストラリアに行ったって聞いたけど……見送りには行かなかったの?」

あの日下夫人のおかげで、夕梨と寒真の関係は上流階級の間で派手に噂になり、母をずいぶん悩ませた。結果として、岸本家と日下家は完全に袂を分かつことになった。

もっとも――岸本家と周防家は、誰を敵に回そうと痛くも痒くもない。

夕梨はソファにもたれ、指先をいじりながら言った。

「私が行って何をするの?」

もうあれほどはっきり伝えたのだ。

寒真が戻ってきたとしても、もう彼が自分に執着することはないだろう。

日常が静かに元に戻る。

それでいい――そう思えた。

……

ほどなくして澪安と慕美の結婚式の日がやってきた。

メインとなる披露宴は央筑ホテルで行われた。

昼の式を終えたあとは、夜に周防本邸で身内でも特
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