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第9話

Author: 愛月花音
last update Last Updated: 2025-10-06 18:17:51
「もういい。お前は、本当に最低な女だな!? 美優がどんな思いで人生を歩んできたか、知ってやったのか?」

「人生……?」

「美優はもともと施設育ちなんだ。実の両親は不仲で。父親の不倫のせいで母親は精神的におかしくなって、赤ん坊の美優を捨てた。ずっと施設で酷いイジメに遭って……やっとの思いで両親の場所を知って、命からがら逃げてきたんだぞ」

 どういうことだろうか? 彼女は星野グループの社長令嬢なのに。

 星野グループは、電気機器など多くの会社経営している、日本でも数少ない大手企業だ。

(星野美優が施設育ち? いや、それよりも赤ん坊の頃に捨てられたって)

 春美が驚いたのは、それだけではない。自分も同じ境遇だったからだ。

「母親は未だに精神が病んだままで認識すらされていない。それでも健気に頑張っているんだぞ? そんな辛い経験をしてきた彼女に同情するならまだしも、よくそんな酷いことがやれるな!? お前には血と涙がないのか?」

「そ、そんなつもりは……それに、だったら私も同じじゃない」

 春美自身だって、赤ん坊の頃に施設に捨てられた。イジメは受けていないが、寂しい思いはしてきたのだ。彼は、そのことを忘れたのだろうか?

「はっ? お前が美優と同じ? 加賀野家に引き取られて、幸せに暮らしているではないか。彼女と一緒にするな。俺は自分の恩人を屈辱されるのは許さない」

 そう言って、怒鳴られる。春美は啞然とする。

 それだったら、星野美優も同じではないか? 今では誰よりも裕福なお嬢様の立場だ。

 本当の両親の元に帰っている。父親から溺愛されているのは世間でも有名。星野グループが、彼女の出演しているドラマなので多くスポンサーを務めている。

 だからこそ、彼女のどんなワガママでも通る。神崎芸能プロダクションと星野グループを敵に回すわけにはいかないからだろう。

 しかし、何かがおかしい。こんな偶然あるのだろうか?

 同じ赤ん坊から捨てられたと言い、施設育ち。しかも涼介の初恋で恩人。自分と正反対ではあるが、何かが切り取られているような感覚がした。大切な何かを。

「でも……やったのは私じゃない。それに、あなたの命の恩人は私。あなたを助けたのは私よ!」

「はっ?」

 すると、h星野美優は涼介の腕を掴んだ。

「もういいよ……涼介さん美優が全て悪いの。ううっ~お腹が痛い」

 そう言いながら、突然お腹
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