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第5話

Author: 簡図
莉子が目を覚ましたとき、病院のベッドに横たわっていた。

額には分厚い包帯が巻かれ、全身は青あざだらけで、怪我してない所を探すほうが難しかった。

元々の痛みだけでも耐えがたいのに、そばでは誰かがずっと泣き続けていた。

莉子は目を開けて大声で叫んだ。「もう泣くのはやめて。うるさい」

大輝は驚きと喜びで声を上げた。「莉子、目が覚めたんだな!」

「ごめん……俺がすぐに駆けつけられなかった。守ってあげられなかった」

莉子はあの激しく絡み合う動画を思い出し、不快感がこみ上げてきた。

皮肉っぽく言った。「わかってるよ。ああいうときはどうしても抜け出しにくいよね」

大輝はきょとんとした。「ああいう時って?」

莉子は下品な言葉を口にしたくなかった。

自分には品性がある。泣いてばかりのあの替え玉とは違う。

莉子はうつむき、心の中の嫌悪感と悔しさを必死にこらえた。「なんでもない」

莉子は認めている。自分は気が強い。だが、感情がないわけではない。

噂や推測で聞くのと、実際に目で見るのとは全く別のことだ。

八年間も愛し合った男が他の女と交わる姿を見て、平気な女などいないだろう。

でも、自制心はある。

平気なふりくらい、できる。

でもすぐに、本当にどうでもよくなると思っていた。

きっと大輝も後ろめたさがあったのだろう。まるで人が変わったかのようだった。

彼は自ら病室に通い詰めて、莉子の世話をした。

部下に何を言われても決して離れず、昔のように何度も謝り続けた。

毎朝、莉子が目を開けると、いつも大輝の笑顔が目の前にあった。

優しく声をかけてくる。「おはよう、莉子」

「もし俺が変わってあげられたら、どれだけ良かったか」

そんな光景は誰もが羨むものだった。隣のベッドの女性ですら感心した。

「お嬢さん、今どきこんなにいい彼氏は珍しいわよ」

けれど莉子の口は、毒が混じったように辛辣だった。

「本来ならここに寝てるのはあなたでしょう。犯人はあなたの敵で、私は巻き込まれただけよ」

大輝は絶句し、言い返さず謝った。「そうだ……俺が悪い。全部俺のせいだ。叩いてくれてもいいよ」

莉子は考え込むように言った。

「ちょっと気になるんだけど、真央の前でもこんな感じなのか?」

大輝はスマホを差し出した。

「もう彼女とは切れた。あの日きっぱり終わらせた。莉子、信じてくれ。な?」

「俺たちは婚約してるんだぞ、これから一生一緒にいる。絶対にお前から離れない」

そのとき、スマホにメッセージが届いた。莉子は画面を見た。

【莉子、このところ調子に乗ってるわね。私が電話すれば、あなたの男なんてすぐ呼び出せるのよ】

送り主は明白だった。莉子は眉をひそめる。

彼女の記憶の中で、真央はずっと泣き虫で弱々しい女というイメージだった。

こんなふうに爪を立ててくるのは珍しい。

莉子は顔を上げて大輝に尋ねる。「今日、どこか行くの?」

大輝は答える。「行かない。一日中ここにいる」

「じゃあ、約束して」

大輝は甘い顔でうなずいた。「ああ、約束する。今日どんなことがあっても絶対にここを離れない」

そのとき、机の上で電話がけたたましく鳴った。

莉子がちらりと見ると、見知らぬ番号だった。

大輝はその場で電話を取った。

病室を一周したあと、廊下に出て行った。

戻ってきたとき、大輝は慌ただしく莉子に謝った。

「莉子、本当にごめん。会社で大きなトラブルがあって、すぐに戻らなきゃいけないんだ」

彼は莉子の頬にキスを落とした。

「待ってて。すぐ戻るから」

莉子のスマホはまだスリープにもなっていなかった。

あの挑発的なメッセージが、そのまま空中に残っていた。

大輝が慌てて去る姿を見て、莉子は悟った。

この数日間、彼と一緒に、一つの大きな茶番を演じていただけなんだと。

ここでは自分が患者役。

大輝は優しい夫役。

演技が終わったら、彼は去る。

莉子は画面を消し、ティッシュで頬についた唾液をぬぐった。

丸一週間、大輝は戻らなかった。

最初は莉子は痛む体を引きずって、身の回りのことをし、食事もなんとか自分で口にした。

何度かは、とても惨めに感じたこともあった。

でもすぐに、そんな日々に慣れていった。

やがて大輝が再び病室に現れたとき、その顔は険しかった。

「完璧な彼氏」の仮面を剥がし、怒りを込めて書類の入った封筒を莉子の顔に投げつけた。

「俺はちゃんと約束したよな。真央との関係はきっぱり終わらせて、お前と結婚するって……!」

「それなのに、なんでお前はこんなことをするんだ?」
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