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第10話

Author: 清瀬
郁人は喉が詰まり、思わず一歩後ずさりし、布団を暮葉の方へ引き寄せた。「姉さん、何をしているんだ?」

しかし暮葉は再び布団を押しのけ、手を伸ばして彼の手首を掴んだ。甘えた眼差しで彼を見つめて、「郁人、後悔しているの。他の人と結婚したことを。結婚して初めて気づいたの、私の心の中にずっといる人は、あなただったって……」

郁人は呆然とした。「何て……言った?」

「郁人、あなたのことが好きなの」

暮葉は微笑み、彼の腰を抱きしめ、体を彼にすり寄せた。「実は、あなたも私のことが好きなんでしょ?」

郁人の頭の中は混乱し、口を開いたが、何を言えばいいのかわからなかった。

そして暮葉は口元を緩め、流されるように顔を上げ、ゆっくりと彼の唇に近づき、口づけした。

郁人の指が少し震え、頭の中に複雑な影が一瞬走った。

この光景は、三年前、彼が無数に想像したものだ。

しかし今この時、それが現実になったとき、彼はどうしていいかわからなくなってしまった。

本来ならばしっかりと抱き返すはずの手も、かつて彼女に抱いた衝動的な欲求のように、彼女の腰を抱き寄せるのではなく、わきに下ろしたまま、葛藤していた。

暮葉のキスの技術は明らかに雲凛よりずっと上手だ。

雲凛はキスするたびに受け身で、信じられないほど未熟で柔らかかった。

一方の暮葉は、蜘蛛が吐く粘り強い糸のように、彼に絡みつき、挑発と誘惑に満ちていた。

郁人は導かれるように、無意識に唇を動かし、彼女の口づけに応えた。

暮葉の目にほくそ笑みが光り、主導的に彼の手を握り、自分の胸に当てた。口調は水のように優しい。「郁人、私が好きだって言って」

「君が好き……」

彼はぼそりと声に出した。しかし次の瞬間、喉が微かに震え、かすかな音を発した。「雲凛……」

たったこの短い名前が、衝撃のように、郁人の心を強く打った。

彼は夢から覚めたように暮葉を押しのけ、心にはかつてない動揺があった。

彼はたった今、暮葉とキスしている間、頭の中に浮かんでいたのが、全部雲凛とのキスの情景ばかりだったことに気づいて驚いたのだ。

暮葉の顔色が少し変わった。「郁人、今何て言ったの?」

「何でもない」

郁人は慌てて顔を背け、声は少し嗄れていた。「急にやることを思い出した。先に行くよ」

「こんな夜遅くに、何の用事があるっていうの?」

暮葉は彼の
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