Share

第2話

Author: 悠木 ぬくも
家に帰り着いた私は、部屋のキャビネットいっぱいに並ぶプレゼントを見つめた。

すべて敏昭から贈られたものだ。

かつては宝物のように大切にしていたのに、今となっては滑稽な皮肉でしかない。

目頭が熱くなり、それらを段ボール箱へと乱暴に詰め込んだ。

ちょうどゴミ捨て場へ持っていこうとしたその瞬間、スマートフォンが激しく鳴り響く。

画面に出た敏昭のアシスタントは、切迫した声で叫んだ。

「武内さん!高柳さんがワイヤーアクションの撮影中に事故に遭いました!頭を強打して意識不明の重体です……危険な状態なんです、すぐに来てください!」

危険な状態――その言葉を聞いた途端、頭の中が真っ白になった。

無我夢中で駆けつけ、気がついたときには病室の前に立っていた。

だが、足を踏み入れようとした瞬間、扉の向こうからアシスタントと敏昭の声が聞こえてきた。

「やっぱり高柳さんは頭がいいですね。結婚したことが遅かれ早かれ武内さんにバレると察して、いっそ記憶喪失のフリをするなんて。これなら武内さんも責めないどころか、おとなしく3年間待ってくれますよ」

敏昭が低く警告する。

「黙れ。二度とその話をするな。俺が愛しているのは柚晴だけだ。あと3年待って美遥の病状が落ち着いたら、記憶を取り戻したことにして柚晴と結婚する」

耳を疑った。

全身の震えが止まらず、喉から声すら出ない。

2年前、敏昭は肺に腫瘍が見つかったときも、手術が終わるまで隠し通していた。

あのとき、私は泣いて怒り、別れ話にまで発展した。

彼は「二度と嘘はつかない」と誓ったはずだった。

それなのに、これが2度目の嘘だった。

そのとき、背後から美遥の甲高い悲鳴が響いた。

彼女はいきなり廊下の床に膝をつくと、私の手を無理やり引き寄せ、自分のお腹へと何度も打ちつけ始めた。

「お願い、敏昭から私を引き離さないで!私の子どもを傷つけないで!お願いだから、この子だけは見逃して……!」

咄嗟に手を引き戻そうとしたが、美遥は狂気じみた力で手首を掴んで離さない。

これではまるで、私が彼女の腹を殴りつけているようにしか見えない。

引き寄せられた至近距離で、美遥の口元に勝ち誇った笑みが浮かんだ。

彼女は私の耳元で、低く囁いた。

「ねえ、今度は敏昭がどっちを選ぶと思う?」

青ざめる間もなく、病室のドアが勢いよく開いた。

敏昭の怒声が飛ぶ。

「柚晴、その手を離せ!」

次の瞬間、私は敏昭に激しく突き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

後頭部をコート掛けに強打し、目の前が真っ暗になる。

激痛に意識が飛びかけ、その場に崩れ落ちそうになりながらも必死に体を支える。痛む首筋に触れると、指先にべっとりと赤い血がついた。

「敏昭……っ」

かすれた声で助けを求めようとしたが、敏昭は私を一瞥すらしない。

彼は倒れ込む美遥のもとへ真っ先に駆け寄り、その体を抱きしめた。

「敏昭、お腹が痛い……」

美遥は彼の腕の中で小さくすすり泣く。

「あの人に突き飛ばされて……っ」

敏昭は美遥の背中を優しく撫でた。その声は、かつてないほど穏やかだった。

「怖がるな、俺がいる」

心臓が音を立てて底へと沈んでいく。

以前は、私だけに向けられていた温もり。

いま敏昭が必死に守っているのは、美遥だった。

立ち上がった彼が私を睨みつける瞳には、冷たい嫌悪しか宿っていない。

「柚晴、お前が俺の彼女を自称しているらしいが、兄貴の顔を立てて不問にしてやる。だが、美遥を傷つけるつもりなら絶対に許さない。

よく聞け。俺の妻は美遥ただ1人だ。二度と俺たちにつきまとうな」

血の気が引き、視界が涙で滲む。

1年前、美遥を冷たく切り捨てたあの光景と瓜二つだった。

ただ1つ違うのは、今回切り捨てられたのが私だということ。

そのとき、下腹部に鋭い痛みが走った。

針で刺されたような刺激は、瞬く間に腹を引き裂かれるような激痛へと変わる。

恐る恐る見下ろすと、淡い色のスカートに赤黒い染みが急速に広がっていた。

温かい血が、太ももの内側を伝って床へと滴り落ちていく――

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • 秘密の恋3年、彼は別の女と入籍した   第21話

    ハネムーンの最初の目的地は、南の島だった。雅之はプライベートビーチを丸ごと貸し切り、昼間はパラソルの下で並んでココナッツジュースを飲んだ。彼はサングラスをかけて読書をし、時折ふと顔を向けて私を見つめる。私がちゃんと隣にいることを確かめてから、再び本へと視線を戻す。夕暮れどきになると潮が引き、きめ細かな白い砂浜が広がった。雅之に手を引かれ、素足のまま波打ち際を歩く。寄せては返す波が足首を洗い、心地よい冷たさを残していった。「柚晴」不意に彼が足を止めた。サーフパンツのポケットから何かを取り出す。親指ほどの大きさの、淡い桜色の貝殻だった。海水に濡れてつややかに輝いている。雅之はそれを私の前へ差し出した。「拾った。やるよ」受け取って眺め、私はくすりと笑った。「川津社長、東都一の大富豪が、奥さんへのハネムーンプレゼントに貝殻1つ?」雅之は片眉をぴくりと上げ、サングラスを少し押し上げた。「大富豪だって人間だ。それに――」顔を寄せ、私の唇にそっとキスを落としてくる。「――これは俺が自分で拾った。買ったどんな宝石より価値がある」小さな貝殻を握りしめると、手のひらがじんわりと温かくなった。*ハネムーンから戻ったあとの日々は、穏やかに過ぎていった。ある日の午後、中庭に並べたラタンの椅子に2人で腰掛けていた。日差しはぽかぽかと温かい。雅之の肩に頭を預けてまどろんでいると、頭上からふいに声が降ってきた。「柚晴」「……ん?」「数日前、刑務所へ行ってきた」意識が少し浮上したが、私は目を閉じたままでいた。「越己から人づてに伝言があってな」雅之の声はとても静かだった。「向こうでたくさん本を読んでいるらしい。お前が子どもの頃に一番好きだった絵本を見つけたから、渡してほしいと頼まれた」中庭は静まり返り、風が木の葉を揺らすサラサラとした音だけが響く。「あいつに持たせておいた。お前があいつを許すことは金輪際ないし、いまは何不自由なく幸せに暮らしていて、存在すら忘れていると伝えた」私はそっと目を開け、雅之を見上げた。横顔に差す光が、くっきりとした輪郭とすっと通った鼻筋、引き締まった顎を際立たせている。視線に気づいた雅之が、こちらを向いて小さく微笑んだ。「……間違っていた

  • 秘密の恋3年、彼は別の女と入籍した   第20話

    式場は、海辺にたたずむ小さなガラスの教会だった。足元まで届く大きな窓の外には、穏やかな灰青色の海が広がっている。雲の切れ間から差し込む光が、白いバージンロードを斜めに照らし出していた。大勢の招待客は呼ばず、参列したのはごく一握りの側近だけ。誓いの言葉を交わすとき、司祭が雅之に「武内柚晴を妻として迎えるか」と問いかけた。雅之は私を優しく見つめ、「誓います」とはっきりと告げた。私に同じ問いが向けられたときも、まっすぐに「誓います」と答えた。続いて、指輪の交換。雅之が私の左手薬指へリングを滑らせる。その指先がかすかにこわばり、緊張を隠しきれずにいた。顔を上げ、彼の目を見つめる。「手、震えてるよ」雅之は片眉を跳ね上げ、指輪を根元まで押し込むと、そのまま私の手をぎゅっと握りしめた。「この日をどれだけ待ちわびたと思ってるんだ。手が震えるくらい当たり前だろ」思わず吹き出してしまった。司祭が誓いのキスを促す。雅之が身をかがめ、静かに唇を重ねてきた。窓の隙間から吹き込んだ海風が、ウェディングドレスの裾をふわりと揺らす。静まり返った礼拝堂に、寄せては返す波の音だけが心地よく響いていた。彼の口づけはどこまでも優しく、そして切実だった。失くした宝物を、ようやく取り戻したかのように。唇が離れ、そっと目を開けると、雅之の目元が赤くにじんでいた。「……これから、なんて呼べばいい?」頬を染めながら尋ねてみる。「雅之」彼の眉尻が下がり、満足そうに口元が緩んだ。「もう1度」「雅之……もう、しつこいよ」雅之は低く喉を鳴らして笑い、私をいっそう強く抱き寄せた。「しつこくていい。これからは毎日聞かせてくれ」式を終えて参列者たちが帰ったあと、雅之と手をつないで教会の外へ出た。砂浜に2人の足跡が並び、やがて満ちてきた潮の波にゆっくりと消されていく。雅之がふと足を止め、遠くの海岸線を指さした。「あのあたりだ。昔、お前が俺を拾ってくれた場所は」指された方へ顔を向ける。岩場は昔と変わらずそこにあり、引き潮で顔を出した濡れた黒い岩肌は、あの日の記憶そのものだった。「あの少し先の海の底に、この数年間抱えていた俺の未練も執念も、全部沈めてきた」彼は視線を落とし、私をまっすぐ見つめた。「

  • 秘密の恋3年、彼は別の女と入籍した   第19話

    家に戻ると、雅之は身をかがめ、私の額に自分の額をそっと重ねた。互いの吐息が触れ合い、重くよどんでいた頭の中が、すっきりと澄み渡っていく。「柚晴、過去のことはもう終わったんだ」不意に鼻の奥がツンと痛み、私は雅之の首元にぎゅっと抱きついた。「川津さんも……いつか私に嘘をつくの?」雅之は2秒ほど沈黙した。それから私を腕の中からそっと離し、まっすぐに視線を合わせて、一言ずつ噛みしめるように告げた。「絶対にない。お前を何年も捜し続けたんだ。その年月を冗談になんかするものか」見つめる雅之の瞳が、わずかに赤くにじんでいた。あの日、傷だらけで漁船の中に身を潜めていた少年の姿が蘇る。ぼろ布で刃物の傷を縛り、顔の半分を血まみれにしながらも、ちぎったパンを差し出して笑いかけてくれた。「怖がらなくていい、取って食ったりしないから」あの頃の私は15歳で、何も分からなくて、見知らぬ他人だった雅之を半月もかくまい続けた。祖父母の目を盗んで毎日食べ物を運び、緊張のあまり手が震えていた。今にして思えば、あれも運命の巡り合わせだったのかもしれない。鼻をすすり、私は雅之の胸元へ顔をうずめた。「じゃあ、毎日私の名前を呼んで。愛してるって、1日3回言って。それから、勝手に――」雅之が不意に顔を寄せ、唇を重ねてきた。そのあとの言葉をすべて塞ぐように。「柚晴、条件が100個あったって全部飲んでやる。泣くな。お前に泣かれると、どうしていいか分からなくなる」*結婚式は12月中旬に決まった。雅之は当初、財界の重鎮を招く盛大な披露宴を考えていたが、疲れてしまうから嫌だと伝えた。すると彼は親しい顔ぶれだけの小規模な式にしようと笑ってくれた。式の前夜、敏昭からまた新しい番号で長文のメッセージが届いた。川津邸の門前で一晩中立ち尽くしていたこと。美遥の私物をすべて焼き捨てたこと。そして、金庫にしまっていた私への贈り物を並べた写真が添えられていた。そこに写る部屋には、足の踏み場もないほどプレゼントが埋め尽くされている。口紅からネックレス、マフラーからヒールに至るまで、年と日付が几帳面に記されていた。最後の1行には、こう書かれていた。【明日、あいつと結婚するのをやめてくれないか】読み終えた私は、たった

  • 秘密の恋3年、彼は別の女と入籍した   第18話

    庭は静まり返り、風がこずえを揺らすかすかな音だけが響いていた。軒下に吊るされた灯りを、私はしばらくじっと眺めた。「手配をお願い。会いに行くわ」秘書は深々と一礼し、静かに下がっていった。*面会当日は一面の曇り空だった。雅之が付き添ってくれた。彼は何も詮索しなかった。朝出かける際に私の手をそっと握りしめ、車に揺られる道中も静かに隣に寄り添っていてくれた。面会室の中央には、透明なアクリル板が据え付けられていた。奥の扉から連れられてきた越己は、私の姿を捉えた瞬間、ぴたりと足を止めた。ニュースの写真で見たときよりもさらに痩せこけ、頬は深く削げていた。だが、その瞳だけは昔の兄のままだった。仕切りを挟んで向かい合って腰を下ろす。数秒の間、互いに視線を交わしたまま、どちらも口を開かなかった。先にわずかに身をかがめ、仕切りの中央にある通話孔へ顔を寄せたのは越己だった。「……柚晴」かすれたその声は、長い間まともに人と会話していなかったことを物語っていた。私は返事をせず、透明なアクリル板越しに、ただ静かに兄を見据え続けた。越己が顔を上げる。その目は赤く腫れていた。「……俺を、恨んでいるか?」少しだけ考え、私は小さく首を横に振った。どれほど憎くても実の兄であり、幼い頃はあんなにも私を可愛がってくれた。「恨んではいないよ。でも、もう二度と関わりたくない。ここに来たのはこれが最初で、最後だから」越己はきつく目を閉じた。涙が頬を伝ってぼろぼろとこぼれ落ちる。拭おうともせず、ただうなだれたまま座っていた。「すまなかった……」震える声が漏れ出す。「あの頃の俺は、どうかしていた。徹也のことばかり頭にあって、お前が俺のたった1人の妹だってことすら忘れていたんだ……」私は椅子に腰掛けたまま、静かに兄を見つめていた。目頭が熱くなったが、涙はこぼれなかった。長い沈黙のあと、越己はようやく顔を上げ、袖口で顔を乱暴に拭った。声は依然としてかすれていた。「あいつは……」越己は視線を泳がせ、私の背後へちらりと目を向けた。「お前を大切にしてくれているのか?」振り返ると、雅之が面会室の入り口にたたずんでいた。部屋には入らず、ドア枠に背を預けてスラックスのポケットに手を突っ込み、ただ静かに

  • 秘密の恋3年、彼は別の女と入籍した   第17話

    敏昭は涙で顔を濡らしながら、壊れたように同じ言葉を繰り返した。「すまない、柚晴……もう二度と嘘はつかない。頼むから、俺のそばに戻ってきてくれ。他の男と結婚なんてしないでくれ……俺が悪かった。本当に、俺が悪かったんだ!」彼はポケットから指輪を取り出すと、手のひらに載せて私の前へ差し出した。それはシンプルなダイヤの指輪だった。見覚えがあった。3年前、敏昭に連れられて特注で作ったものだ。「ふさわしいときが来たら渡す」と約束していた。「この指輪、美遥には渡していない。ずっと金庫にしまっていたんだ。昨日、お前が川津と結婚する夢を見て……本当に気が狂いそうだった」差し出された指輪を一瞥し、私は冷ややかに顔を上げた。「謝罪は受け取れない。帰って。もう2度と私の前に現れないで」背を向け、迎えの車へと乗り込む。背後で泣き叫びながら許しを乞う敏昭の声を置き去りにした。その惨めな悲鳴は、車のドアが閉まると同時に遮られた。*それから、私は体の養生に専念した。敏昭の名を再び耳にしたのは、数日後のことだった。週刊誌のトップ記事で極秘入籍と二股交際のスキャンダルを大々的に暴かれ、所属事務所は最優秀主演男優賞の選考辞退を発表。さらに、10数本あった広告契約も次々と打ち切られた。彼を待ち受けていたのは、莫大な違約金の山。対応に追われて頭を抱えながらも、敏昭は毎日私へ謝罪のメッセージを送り続けてきた。着信拒否に設定しても、次から次へと別の番号に変えて連絡を寄越してくる。敏昭からのメッセージは、毎日届いた。謝罪から思い出語りへ、思い出から哀願へ、そして哀願から狂気じみた告白へ。私はそのすべてに目を通し、そのすべてを無視した。敏昭はこの3年間の記憶を細かく切り刻み、1日ごとに語りかけてくる。撮影現場で初めて会った日の私が、白いワンピースを着ていたこと。雨の夜におぶわれて帰る途中、私が彼の肩に顔を寄せて歌を口ずさんだこと。妊娠が分かったあの日、本当は指輪を用意してプロポーズするつもりだったこと。だがその日に美遥から「屋上から飛び降りる」と泣き叫ぶ電話がかかってきたこと。【あの日、あの電話に出さえしなければよかった】画面に浮かぶその1行を見つめ、私は削除ボタンの上で親指を一瞬止めたあと、迷わずタップした

  • 秘密の恋3年、彼は別の女と入籍した   第16話

    リビングのソファに腰掛け、モニターの画面を見つめていた。映像の中、越己が泣きじゃくりながら、私に1度だけでも会わせてほしいと懇願している。いつの間にか帰宅していた雅之が、背後からそっと私を抱きしめた。私の頭の上に、彼の顎が優しく乗せられる。「会いに行くか?ついていってやってもいい」画面いっぱいに映る越己の顔を、私はじっと眺め続けた。顔は涙で濡れ、瞳には後悔がにじんでいる。けれど、脳裏をよぎるのは別の光景だった。あの暗い港で、容赦なく切られた電話のコール音。病室で浴びせられた、激しい平手打ち。「野垂れ死のうが知ったことじゃない」と吐き捨てた、あの冷酷な声。私は静かに首を横に振った。「これからは、あなたが私の家族です。2度目の命をくれたのはあなた。他の人はもう、どうでもいいです」雅之は何も言わず、私を抱きしめる腕に少しだけ力を込めた。ドレスの試着を終えたあと、雅之は急ぎの役員会議へ向かった。私は一足先に車で川津邸へ戻り、体を休めることにした。だが、屋敷の目前で、敏昭が強引に車の前に立ちはだかって停車させ、私の目の前へと詰め寄ってきた。警護の者たちが慌てて止めに入ろうとしたが、私は手で制して彼らを下がらせた。ここで完全に決着をつけ、すべてを終わらせるべきときだった。車から降り、敏昭と正面から対峙した。前回の対面よりもさらにやつれ果て、目の下には濃い隈が浮かび、スーツもしわだらけだ。何日もまともに眠っていないことがひと目で分かる。私の姿を認めた敏昭の瞳に、すがるような光が灯った。立ち尽くすその姿は、まるで叱られるのを恐れる子どものようだ。「……全部、思い出したんだ。愛してる、柚晴、本当に愛してるんだ。取り返しのつかないことをしたとは分かってる。でも記憶を失っていたんだ、俺を責めないでくれ。記憶は全部戻った。頼むから、もう1度だけやり直すチャンスをくれないか」私は1歩後ずさりし、敏昭が近づくのを拒絶した。その瞳に浮かぶ痛ましげな色を無視し、冷ややかに告げる。「私に隠れて美遥と籍を入れたあの瞬間から、私たちに未来なんてないのよ」敏昭は取り乱したように言い訳を重ねた。「あいつにだまされていたんだ!3年間付き合っていたのは本当にあいつだと思い込まされていた!それに徹也

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status