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作者: 琉斗六
last update 最終更新日: 2026-01-16 21:01:46

 白鳥は、真壁の着ていたシャツにそっと手をかけた。

 汗で肌に張りついた白布を、ゆっくりと剥がす。

 滑らかに露わになる背中──その曲線に、思わず息を呑む。

──ほんと、背中だけで説得力あるんだよな、この人。

 真壁の体は、決して華奢ではない。

 むしろ、均整のとれた骨格と、抑制のきいた筋肉の付き方は、どこまでも理性的で静謐だった。

 だが、その静けさが、逆にひどく艶めいている。

 服の上からでは分からなかった。

 制服越しに見ていたものは、ほんの断片にすぎなかったのだと、白鳥は思い知る。

 伸びたうなじから、肩甲骨へ。そこからしなやかに腰へと続くライン。

 触れずとも美しいその軌道に、どうしようもなく心を奪われる。

「……やっぱり、綺麗だ」

 呟きは、誰に向けたものでもない。

 ただ、抑えきれない胸の高鳴りが言葉を紡がせた。

 白鳥は、背骨にそっと唇を落とす。

 触れた瞬間、真壁の肌が小さく震えた。

「教官の背中、好きです。入ったときから、ずっと」

「……気持ち悪いな」

 真壁は、少しだけ声を震わせてそう言った。

 だが、拒絶ではない。

 この距離にいて、触れてもなお、突き飛ばされない──それが答えだった。

 白鳥は、まるで壊れ物を扱うように、真壁をベッドへと誘導した。

 官給品のパイプベッドは、ギシリと音を立てる。

 ゆっくりと身体を倒し、シーツの上にその身を横たえさせた。

 一度、肌から唇を離したあと、改めてそっとキスを落とす。

 鎖骨から肩、肩甲骨の縁、そして腰のくびれに至るまで、熱を乗せるように触れていく。

 そのたびに、真壁の肌がわずかに波打つ。

 声には出さずとも、確かに反応がある──その沈黙が、むしろ官能的だった。

 白鳥は、ポケットから取り出したローションを手に取り、片手で馴染ませながら、真壁の双丘へと指を這わせた。

 入口をやわらかく撫でるたび、呼吸が浅くなるのを感じる。

 壊したくなるほど、欲しい。

 それでも、乱暴にしてしまえば、きっとこの人は二度と触れさせてくれない。

 その思いだけが、白鳥を慎重にさせた。

 濡れた指を、奥へと沈ませていく。

 ぬるりとした感触の中に、真壁の体温が絡みつく。

 その熱に、自分自身の欲望がぞくりと反応する。

「……んぁ……っ!」

 白鳥の指に翻弄されて、美しい背中がのけぞる。

 真壁の反応から、初めてではないことが伺えた。

「教官……入れますよ」

「……好きにしろ」

 投げやりにも聞こえる声が、返される。

 それが、どれだけの許しだったか──。

 白鳥は胸の奥でその重さをかみ締め、そっと自身をあてがう。

 静かに、深く、体を沈ませていく。

 狭い内部に押し込むたび、真壁の背中が弓なりに反る。

「く……っ、ぅ、あ……」

 真壁が、白鳥の質量に息を呑むのが分かる。

 シーツを掴んだ手に力がこもり、あの背中が更に美しい弧を描いた。

 白鳥は、思わずその背骨にキスをする。

 ゆっくりと、深く沈み込むたび、奥に熱がこもっていく。

「……すごく、あったかい。……奥、きついです」

「黙れ……っ」

 真壁の声が震えている。

 痛みと快楽のはざまで、揺れているような声音だった。

 白鳥は、無理な動きはしなかった。

 まるで大切なものを抱くように、ゆっくりと、深く、何度も沈めていく。

「もっと……ちゃんと感じてほしい」

 白鳥は、真壁の手を探し、そっと指を絡めた。

「今日、触れたときから、これが夢じゃないって証拠が欲しくて……ずっと、この瞬間を想像してた」

「……お前、ほんとに……」

 その先の言葉は、唇の震えに消えた。

 やがて、真壁の口元から、押し殺した声が洩れ出す。

「あっ、あっ……ん、んんっ……!」

 顔を背けながらも、甘く震えるその声に、白鳥の心がふるえた。

「気持ちいいんですね……教官」

「……っ、黙れ……」

「……嫌です。もっと教えて。あなたの全部が、ほしいから」

 唇が、肩甲骨の上をなぞり、軽く吸いつく。

 微かな赤が、肌に刻まれていく。

「……やっぱり、好きです。ずっと、触れたかった……」

 動きが、徐々に深く、速くなる。

 つながった場所が、ぬちっと濡れた音を響かせた。

「ふ……ぁっ……! や……あっ……っ!」

「可愛い……真壁さん……」

 強く、背中から抱きしめる。

 熱にもだえるその体を抱きしめながら、白鳥は自分の想いまでも伝えるように腰を沈めた。

──誰にも、この背中を見せたくない。

 なのに、同時に、世界中に知らしめたいほど美しいと思った。

 その矛盾が、胸を裂くほど愛しかった。

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  • 空に墜ちる   §

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