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第4話

Author: かももももももものうち
涙を流す二人がこらえきれずに唇を重ねる姿を見つめた。

その瞬間、僕の目元が潤み、熱くなった目をこすらずにはいられなかった。

隣にいたスタッフが、話し相手を見つけたと言わんばかりに興奮気味に話しかけてきた。

「あなたも感動したでしょう? セレブの世界にも本当の愛があるなんて。あの二人は絶対に相愛ですよ。瞳は嘘をつけませんから」

僕は力なく笑みを浮かべた。

「ええ、きっと愛し合っているんでしょうね」

静が何かを感じ取ったのか、突然こちらに視線を向けた。

僕は反射的に帽子のつばを下げ、素早く顔を伏せた。

悠も釣られてこちらを向き、その瞳に勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

「どうしたんだ、静。知り合いでもいたか?」

静は一瞬呆然としたが、すぐに答えた。

「……いいえ、何でもないわ。私の見間違いよ」

僕は再び顔を上げ、二人が纏っている礼服を見つめて静かに呟いた。

「これで、夢は叶ったのかな」

新郎のタキシードを着て、結婚の儀式を執り行うのは僕ではない。けれど、少なくともこの衣装は僕が心血を注いでデザインしたものだ。

僕の六年に及ぶ青春と、燃えるような愛情に、無理やりではあるが区切りをつけられた気がした。

リハーサルが終わると、僕は楽屋の入り口で悠に呼び止められた。

悠は僕を上から下まで品定めするように眺め、口元に嘲笑を浮かべた。

「この数日間、これほど見せつけてやったのに、まだ諦められないのか? たしかに静はお前を愛していた時期もあったかもしれない。だが、本当に愛しているなら俺と結婚なんてしないし、俺と寝たりもしないだろう?

お前と俺たちは住む世界が違うんだ。今までは静の彼氏だったからこそ、友人としてお前と付き合ってやった。勘違いするな。身の程をわきまえて、さっさと消えろ。二度と俺たちの前に現れるな」

言い捨てると、悠は鼻で笑って背を向けた。

その時、スマホから専用の着信音が鳴り響いた。静からの電話だった。

僕は電話に出なかった。すぐに静からメッセージが届いた。

【圭くん、昨日は残業で遅くなっちゃったから、あなたの邪魔をしたくなくて帰らなかったの。

急に二日間出張することになっちゃった。明後日には帰るから、怒らないでね。帰りに大好きなケーキを必ず買っていくから】

このメッセージを見て、胸の奥が冷たくなった。

結婚式の準備を進めながら、僕を騙し、なだめる苦労してきた静の姿を思うと、皮肉でしかない。

目頭が熱くなったが、涙はこぼれなかった。裏切った者のために、悲しんだり傷ついたりする価値などない。

僕は返信せず、そのまま着信拒否をして連絡先を削除した。

家に戻ると、スマホにある悠からの挑発的なスクリーンショットと、二人のキスを収めた動画をまとめ、明日花を届ける予定の配達員に送った。そして、こう言い添えた。

【花嫁の前で、この動画を再生してください。よろしくお願いします】

結婚式当日、僕はスーツケースを引いて空港へと向かった。

式場では、悠が満面の笑みで賓客をもてなしていたが、静はしきりにスマホを気にしていた。

僕からの返信が一向になく、電話も繋がらないことに、静の心には言いようのない不安が募っていた。それでもその場を離れることはできず、焦燥感に駆られながら式が終わるのを待つしかなかった。

ついに司会者が式の開始を告げ、新婦が入場した。そこへ、一束の花を抱えた配達員が現れ、静の手元に届けた。

悠が壇上でスピーチをしている間、静は微笑みながら花を受け取った。しかし、カードの内容を目にした瞬間、その顔面は一気に蒼白になった。

配達員はタイミングを見計らって口を開いた。

「お客様、もう一つ動画がございます。送り主の男性から、必ずご覧いただくようにと言付かっております。

彼はこう言っていました。一生を共にする相手が見つかっておめでとう、末永くお幸せに。それから、今生でもう二度と会うことはないだろう、と……」
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