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14.裏切りにはそれ相応の制裁を*⑤

Auteur: 鷹槻れん
last update Date de publication: 2026-08-04 21:23:28

 偉央いおだって愛する結葉ゆいはに笑っていて欲しくないわけじゃない。

 だけど彼女の手綱たづなを緩めることで、結葉ゆいはが自分から離れて他の男とどうこうなる姿を見せられるくらいなら、結葉ゆいはの笑顔を消しても構わないから、永遠にこの部屋に閉じ込めてしまおうかとすら思ってしまう。

 ギリギリのラインで結葉ゆいはを物理的に縛り付けることだけはセーブしている偉央いおだったけれど、それも正直そろそろ限界な気がしている。

 そんなことを暴露したら、結葉ゆいははさすがに自分から逃げようと足掻くだろうか。

「結葉ゆいは、あっちを向いて跪ひざまずけ」

 ズルリと結葉ゆいはの口腔内から固くなったモノを抜き取ると、肩で息をするように喘ぐ結葉ゆいはに休む間を与えずそう命令を下す。

 結葉ゆいはにとって無理難題を吹っかけるのは、偉央いおにとってある意味結葉ゆいはがどのくらい自分に服従出来ているかを知るための儀

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    「あのね、想ちゃん。私、今日も午前中、ちょっとだけお出かけしてこようと思ってて」 想に弁当を手渡しながら言ったら、「どこに?」と問われて弱ってしまった結葉だ。 素直に「偉央のところへ食べ物を届けに」と伝えるのはさすがにないと思ったら「昨日百均で……」と思わず口から出てしまって、自分でも何と続けたら良いのか分からずに戸惑ってしまう。「……百均?」 それでもそれを想に繰り返された途端、「欲しかったものが在庫切れでね。店員さんに聞いたら、他店舗から在庫を取り寄せるから後日もう一度出直して欲しいって言われたの」と驚くほどスラスラと嘘がつけてしまってびっくりする。「ああ、そうなんだ」 昨日結葉が買い物に出ていたことを知っていた想は、結葉の嘘にいとも簡単に騙された。「今日は、結構寒いし暖かくして行けな?」 想にポンと優しく頭を撫でられて、結葉は俯いてギュッと唇を噛んだ。 こんなにも優しくしてくれる想に嘘をついてしまった自分が、ものすごく醜いものに思えて「うん、有難うね、想ちゃん」と答える声が、不自然に震えてしまった。*** 独身の頃、ハムスターの福助を連れて、『みしょう動物病院』までバスで行ったことがある。 山波家近くの最寄りのバス停でお目当てのバスが来るのを待ちながら、結葉はその時のことを思い出していた。 母・美鳥が作ってくれたトートバッグに入れた福助が、キャリーケースの中でチョロチョロと動くたび、コトコトとケージが揺れるのを感じて、何度も何度も隙間から中の様子を確認した。 黒々としたまぁーるい目と視線がかち合うたびキュンと胸が高鳴った。 福助は、結葉が初めて飼った生き物だったからだろうか。 何て可愛いんだろう!とそのつぶ

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     散々酷い目に遭わされたくせに、その相手にこんなことをしたいと思っている自分の気持ちを、想に理解してもらうのはすごく難しい気がした。 何より、離婚したい相手に対して、未だにこんな気持ちを抱いていることを想には知られたくないと思ってしまったのだ。(想ちゃんは、私のためにすごくよくしてくれているから……イヤな思いをさせたくない) 正直、結葉は昔みたいに想に惹かれ始めていて……想と家族みたいに暮らせている今の生活を、とてもとても大切に思っている。 それを壊しかねないこの愚行は、秘密裏に処理しないといけないと考えた。(すっごく怖いけど……きっと大丈夫……だよ、ね?) 行く前に匿名で『みしょう動物病院』に電話して……受付に偉央さんが勤務中かどうかを確認する。 「いる」って言われたら「分かりました」って答えて電話を切ってから、マンションにこっそり入って冷蔵庫の中に料理だけ仕舞って……コンシェルジュのお二方にその旨をお伝えする、というのはどうだろう。 あの日、逃げるようにあの場を後にしてしまったから、散々お世話になったコンシェルジュのふたり――斉藤と白木――に、ちゃんと礼を言えていなかったのもずっと引っかかっていた結葉だ。 あの時借りた制服も、結局想に返しに行ってもらってしまった。(行ったら、それも含めてお礼を言おう。おかげさまで、元気に暮らしていますって伝えよう) そんな風に思った。 結葉は、想に内緒で偉央の部屋に侵入するという恐怖を、コンシェルジュの二人に礼を言うという大義名分でコーティングした。*** 翌日の早朝。 前の日から仕込んでおいたおかずと、今朝作ったおかずとをずらりキッチンに並べた|結葉《ゆいは

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     今朝想に宣言した通り、結葉は街に出ていた。 多くのショップが開店する十時過ぎを目掛けて外出してみたのだけれど、考えてみればここ数年、一人でこんな風に街に出てフラフラとショッピングを楽しんだことはなかったな、と思い出した結葉だ。(どうしよう。私、いま、すっごく楽しいっ) もちろん、休日などは偉央と一緒に大型モールに買い物に出たりはしていた。 だけど、あれはずっと偉央に監視されている感じがして気詰まりがして、心からウィンドウショッピングを楽しめていなかった。 そう言えば想に助けてもらってすぐの日、彼と一緒に出かけた市外のモールは、偉央とのショッピングと違って大分開放的な気分でアレコレ見て回ることが出来た。 でも、あの時はまだ気持ちに今ほどゆとりがなかった。(一人で自由に動き回れるのって……こんな感じだったっけ) 独身の頃は普通に出来ていたことだし、何なら一人でうろうろするのは寂しいから、誰かお友達と来ればよかったなぁとか思っていたと言うのに。 今は誰にも気兼ねせずマイペースにウロウロ出来ることが、ひたすらに幸せだと思ってしまった。 ただ、独身の頃と違うことがあるとすれば、いまは自由に使えるお金がないと言うこと。 一応カバンの中に、〝家事の対価〟という名目で純子から渡された三万円が入っているのだけれど、それは、単純に純子からの厚意に過ぎない。 だから、甘えてはいけないと思っている結葉だ。 ちゃんとお勤めを始めて、山波家に家賃なり何なりを収めることが出来るようになれたなら……今日これからひとまずお借りせねばならない封筒の中のお金に関しても、キッチリ満額揃えて純子にお返ししようと心に決めている。 だから浮き足立ってアレコレ不必要なものを買わないようにセーブしなくちゃ、と結葉は心を引き締め直した。 なるべく支出額が抑えられるようにと、結葉が一番

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    「想ちゃん。私、今日はちょっとだけ街へお買い物に出てみようかなって思ってるの」 朝。 いつものように想にお弁当を手渡しながら結葉が言った。 想は思わず「……平気なのかっ?」と差し出された弁当の包みごと結葉の手を握ってしまっていた。 そのことにハッと気づいて慌てて想が手を離したら、結葉も驚いたように手を引いた。 ――ゴトッ! 鈍い音を立てて二人のちょうどド真ん中に、支えを失った弁当が垂直落下した。「お弁当っ」「俺のっ」 二人同じように言って、慌てて手を伸ばしてかがみ込んだら、額同士をゴチンッとぶつけてしまう。 結果、今度こそ二人同時に「痛っ!」「痛っ!」と声が出た想と結葉だ。 結局弁当は想が拾い上げて、結葉は髪の毛の下、ほんのり赤くなった額をさすりながら「想ちゃん、ごめんね」と眉根を寄せた。「バーカ、お互い様だろ」 前髪が短めだからだろうか。 想の額がほんのり赤くなっているのが見えて、結葉は自分も見えないだけで同じだろうなぁと思った。「うん、頭もなんだけど……お弁当も」 想の手にした包みを指差したら「ああ、中身の心配?」とククッと笑われた。「多分大丈夫だろ」 想がそう太鼓判を押すのには、ちゃんと根拠がある。 結葉が作る想のお弁当は、想にたくさん食べさせたいという思いが一緒に入れてあるみたいに、中身が結構みっちり詰まっているからだ。 恐らく垂直落下したぐらいでは寄り弁になんてなっていないだろう。 それでもやっぱり作り手としては、中の様子が気になるらしい。「でも……一応どうだったか教えてね」 言い募るように

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