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第5話 意外な最初の反撃

Author: 宵更カシ
last update Petsa ng paglalathala: 2026-06-21 17:40:15

 邪魔者が消えた客船で、

「んんぅもっとよぉ純」

 寝言を言う羽海の隣で、俺は人生最高の朝を迎えた。

 日野内グループの不正が世に出回り、暴落した株を俺達『一条グループ』が買い占めた。

 これで莫大な資産、そしてこの船は俺の物。

「お前は最高の女だよ羽海」

 成功の喜びで恋人と唇を交わし続けた俺は、横に寝る女の頬を撫でる。

 『田沢湖 羽海』が不正の話を手にしていなかったら、俺はあいつの言いなりになっていただろう。

 親父の代から、日野内の奴らは気に食わなかった。

 俺達が築き上げてきた業績を、まるで自分の功績のように語ってのし上がりやがって。

 だが、あそこまで蔑まされて、反撃の一つもできないなんて、所詮は父親の力が無ければ何もできないお嬢ちゃんだな。

 会社が続いてなくて良かったと心底思う。

「さて、ちょっと世界でも動かしちゃうかな」

 一夜にして俺は世界的企業を買い上げた若きホープ。

 海賊の娼婦とは次元が違う仕事が待っている。

 バスローブのまま、俺はパソコンへ向かうと、手当たり次第に株や不動産を買いあさった。

「何してるのぉ純」

 背中にくっつく甘い弾力。

 俺は振り返ると、その寝起きの顔にそっと振れた。

「勝負掛けてんのさ」

「ねぇ、私ぃ新しいジュエリー欲しいんだけどぉ」

「『エルアリナイト』についたら、いくれでも買ってやる。けど、俺はどんな宝石よりもお前の方が輝いて見えるぜ」

 ありきたりな口説き文句だが、羽海は喜び身体を寄せてくる。

 そして、俺達はまたベッドへ戻ろうとしたとき、

「純様、大変でございます!」

 扉の向こうでコンシェルジュが息を荒立てで叫ぶ。

 良いところだったのに邪魔しやがって。

 苛立ちを隠さずに俺は応対する。

「なんだ!」

「『エルアリナイト』から入港拒否の通告が!」

「なんだと!?」

 部屋を飛び出して船の操船室に走る。

 そこでは頭を抱えた船長と泣きそうになっている操舵手がいた。

「あぁオーナー。いらっしゃいましたか」

「入港拒否とはどういうことだ! 島は目と鼻の先にあるだろう!」

「それが・・・・・・アレを」

 船長の指さす先を見る。

 苛立ちと共に息を呑んだ。

「海賊か?」

 船を取り囲っていたのは数隻の小船。

 そして引き連れてきただろう灰色の軍艦。

 サマリア周辺は海賊が良く出ると言ったが、

「ありゃどう見ても軍隊だ……どこのどいつだ!」

 風体が小汚い海賊達とは違う。

 『ESG』の文字。ここの警備の連中か。

 すると俺を追ってきた羽海が、

「何をしているの? エルアリナイトはすぐそこなんでしょう?」

「えぇ。ですが、前を塞がれちゃ」

「あんな小さな船、踏み潰しちゃえば良いのよ」

 淡々と言って、俺の腕が彼女の温もりにまかれる。

 あぁそうか。銃や大砲を持っていたって撃てっこない。

 俺は船長に詰め寄り命じる。

「早く船を進めろ! こっちの方が船はデカいんだ! ぶつけてでも」

「無茶言わないでください! アレが見えないんですか!」

「俺が話をつける。無線を貸せ!」

 奪うように無線機を取った。

「前を塞ぐ船! 一条グループの前を塞いでタダで済むと思うなよ! すぐに道を」

「あーあー、一条とか言ったか? まぁ良いや。貴船にここは通せない。すぐに引き返せ。さもなくば撃沈も止む無し」

「引き返せだと? 分かってないようだなお前。どこの馬の骨か知らないが、すぐに痛い目を見る。俺達を敵に回すとな」

 相手が誰だか知らないようだ。

 無知というのは恐ろしい。俺はすぐに島へ連絡を飛ばす。

「一条だが、君たちは警備員の教育もロクに」

 一つ文句を言ってやれば、こいつらも頭を下げて俺に許しを請う。

 そう思っていたが、反応は違った。

「お引き取りを」

 冷たくあしらわれる。

「お前! 誰の指図だ!」

「この島の主からそう承っております。お引き取りを。何事も命あってですので」

「ふざけんな! 海の上で野垂れ死ねってか」

「左様でございます。昨晩、貴方達がなさったようにと、島の主『綱島 慎太郎』様より仰せつかっております。お引き取りを」

 綱島だと?!

 この島の主があの綱島 慎太郎・・・・・・。

 だがそれでも、日野内を乗っ取った俺達を無視できないはず。なのに――

 俺は何も言えず、ただ苛立を電話に叩きつけるしかなかった。

 足蹴にしやがった・・・・・・ふざけんなよ!

 しかし電話が弾けた矢先、船が大きく揺れた。

「な、何?!」

「砲撃だ! すぐに引き返せ」

「ダメだ! なんとしても島に」

「あんた死にたいのか!」

 船長は口答えし、船を引き返させた。

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