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第870話

Auteur: 青葉凛
州は、目の前で潤んだ瞳を揺らす令嬢を不可解に思っていた。

海外から帰国したばかりの、恵まれた美貌と家柄を持つ娘だ。

いくらでも素晴らしい相手は見つかるはずなのに、なぜ自分を拒絶する男にここまで固執するのか。

彼女がどれほど健気に振る舞い、周囲の人間を巻き込もうと、浩一の心が動くことは絶対にないというのに。

親に強いられた愛のない結婚など、ただの呪いだ。

仮に力技で浩一を繋ぎ止めたとしても、待っているのは地獄のような結婚生活でしかない。

浩一が彼女を愛することは永遠になく、最終的に惨めな思いをするのは結衣自身なのだ。

少しでも傷が浅いうちに、目を覚ましてほしい。

そんな大人の男としての情けから、州はあえて厳しい言葉で結衣を諭そうとしていた。

「どうしてわざわざ、自分から苦しいだけの道を選ぶんだ?」

「ちょっと待ってよ、州さん。昨日、私たちのこと手伝ってくれるって約束したじゃない!

急に言うこと変えるなんてずるいよ。それに、私と浩一くん、すごくお似合いだと思わない?」

結衣は引き下がるどころか、むっとしたように唇を尖らせた。

その瞳には、一欠片の迷いもない。

「
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