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25.東の山

Penulis: 神木セイユ
last update Tanggal publikasi: 2026-06-14 19:00:00

「ニカ、ただいま」

「あ、おかえりなさい……」

 微笑む功一に仁香は目も合わせずキッチンへ戻り、濯いである弁当箱を丁寧に洗う。昨晩の事がトラウマのように蘇る。

 今もだ。あの雰囲気には覚えがある。優しかった頃の功一とは少し違う、愉快そうに笑う姿はまさにルシウスの面影を匂わせる。

 功一はそのままリビングへ行くと佐喜男の側へ行く。

「父さん、東側の山を持て余してたろ ? 実は買取り手がいるんだけど、話を聞いてみない ? 」

「はぁ ? お前……あんな場所が欲しいなんて……騙されてんじゃねぇのか ? 」

「路面や住宅ならそうだけど、相手は電設関係でソーラーパネルを建てたいらしいんだ」

 この話に佐喜男の顔色が変わった。

「土地は……買取りか ? リースか ? 」

「応相談。どう ? 」

「そりゃあ…&hellip

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    「こんな場所に呼び出しやがって ! 」 功一が草木を掻き分けて進んでくると仁香も美羽も既に準備済みだった。 納屋の前に並ぶ供物に周辺を囲う紙垂の付いた縄。「クソ ! 」 一歩踏み込んでしまった功一の靴は地面にズブズブと飲まれていく。「逃げられません。納屋の中に呪術が……まさかこんな場所にあるなんて」 功一の祭壇は納屋の中にあった枯れ井戸の奥底に確認された。「功一さん、この土地を売ってどうするつもりだったの ?」 功一は無言でそっぽを向く。「おそらく、井戸を潰さない事を言い付けて売るつもりだったのだろうね」 井戸は古来より塞いではいけないものだ。恐らく守られるだろう。「でも今日までだ。わたしが責任持って護摩焚きする。 異界の悪神とは今日これまで」 美羽が大きな壺の蓋を開ける。「それでも仁香さんに礼を言うのね。貴方達を無の世界に放り込んだりしないそうよ。 そしてこの壺に二人を封印したらわたしが持ち帰る。 一生分の祈祷料を払ってでも、佐喜男さんや塁さんに呪いが降りかからないようにとね。配慮したのよ。貴方も神代家も、仁香さんには感謝しなさい」 やがて美羽の経が始まった。 一瞬、仁香と変貌した功一の視線が絡んだ。「糞女ぁぁぁっ」 ルシウスだったものから視線を逸らすと、仁香も美羽の側で手を合わせ始めたのだった。 □□□□□□ 雪解け水が流れる川の上。 高速道路へ向かう大きな橋の手前のスペースにて、塁の運転で来た佐喜男と友紀が二人を見送りに来た。 仁香と功一は再び都心部へ戻り、別居を決めた。 本来仁香の家へ婿へ入るべきと美羽に言われたが、塁にもしもの事があったらと、功一は事情を理解したあとも首を縦には振らなかった。「近いうち、お伺いしたいから……仁香さん、お父様に予定を聞いていただけるかしら」 友紀の様子はまさに憑き物が落

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     美羽は経を止めると、ゆっくりと仁香の方へ向き直る。 感覚か雰囲気か。 仁香と美羽の視線が合う。けれど互いに先程までと違った空気が張り詰める。「あんたが……あぁ、あんたがそうかい……」 美羽の唇から漏れる声は何故かとてもしゃがれていた。「俺ぁ、ちゃんとここに造ったんだぁ」「まさか。あなたは……」「ん。功一が産まれた時になぁ。俺がここを造ったんだぁ。 引戸の奴には随分止められたけど、悪神等を封じ込めるにはこの世界の神仏では無理だから」「功一さんのお祖父さん !! でも……それなら男性が短命という噂は…… ? 」「祭壇を造ってから止まっただろう ? もともとは悪神親子の呪いのせいで、一族は呪われてた。 別な次元ってのは存在するんだ。自分たちと同じ魂の構造で。ルシウスと父親は……ガルンと言ったか、向こうの世界で魂を封じ込められ、行き場を彷徨いやがて自分たちと同じ構造の魂がいるこの世界へ目を付けやってきた」「お祖父さんは何故、気付かれたのですか ? 」「もともと引戸んとこは口寄せができる爺様がいてなぁ。神代家に忠告はしていたのさ。 たまたま俺が建てただけで、親族は皆、神代家に憑く悪神の存在を耳にしてはいたんだ。 しかし、この大きな家がそういった行動を許さんで。 俺が祭壇を建てたときは本当に反対されたな」 神代家に憑くルシウスと領主。その存在が悪神とされ歴代当主の寿命を奪ってきた。「じゃあ、やっぱり祭壇を撤去したらまた神代家の寿命は……」「そうだな。また呪いが始まるだろうな。 だがな、巡り巡ってようやくあんたが神代家へやってきた。功一にとってはあんたと一緒にいるのが一番いいんだろうな。 だからね。本当の祭壇を見つけたら、この住職さんに焚

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    「では二階に」 仁香が美羽を誘導しようとすると、美羽がスッと片手を上げて制する。「ごめんなさい。暫く無言になるわね。 あと、美佳はどっか行ってて」「もう。ごめんね。じゃあわたしこっちにいていい ? 」 そう言い美佳はリビングの窓辺の椅子を指した。「はい。大丈夫。あ、よかったらカウンターのお菓子でも」「ありがと♡」 仁香が振り返った頃には既に美羽は階段下からジッと一点を見上げるように固まっていた。「……ああ、そう。じゃあいいけれど」 何やら独り言を呟き仁香へ向き直る。「こういうのってさ。抜き打ちで来ないとバレちゃうんだよね」「でも、誰にも言ってないのに…… ? 」「昨日、電話は部屋でしたんでしょう ? 」 確かに連絡を取ったときは寝室にいた。「あの時、功一さんも一緒にいたわ。寝てたけど……それは大丈夫ですか ? 」「それはその子がどうにかしてくれたみたい」 そう言い、仁香の足元を美羽がいう。しかし、仁香には何も見えないのだ。「多分、たぬきかなぁ…… ? 野生動物を保護した事無い ? 」 仁香には確かに覚えがあった。「父親の仕事の関係で。たぬき……引き取ったことがあります。 凄い。どうして分かるんですか ? 」 仁香の質問に美羽は難しそうな顔をして語った。「この子はずっと仁香さんに憑いてた良い子なんだけど、あの祭壇をきっかけに力をつけたのね。物音を聞いたことない ? 足音とか」「そういえば、祭壇を見つけた日も物音が……昨日も」「今回の事は無責任に聞こえるかもしれないけど、前世の関わりの中で今世で回避できなかったイベントみたいなものなの。深く落ち込まないで」「はい……」

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  • 義実家崩壊の原因は私を守る神です〜悪神に魅入られた花嫁〜   36.共犯者

    「会食に来ないからどうしたのかと思ってたら、警察沙汰になってたぁ !? 」「強盗が奪った物がなんなのかわからなかったんです。功一さんから直近の契約の流れを見てまさかと確認しましたら……」「功一 ! お前の先輩だったんだよな ? 」 功一の顔は仁香からは見えない。しかし、どこか功一は他人事のように「まぁ、そうだな」などとあやふやな返事を返すのみだ。「ひ、被害届は出しましたんで ! 」 竹田が佐喜男をなだめようとするが、収まらない 。無理もない。 太陽電設という感謝もダミー。馬宮という男の存在しか分からない状況だった。「そもそも権利書だけでは売買は成立しません ! 本人の同意書から身分証明書、印鑑証明、全てないと ! 」「俺、それを既に功一に渡してんだよ ! 」「えぇっ !!? 」 ここでようやく、竹田はそばで正座したまま呑気に出された茶を啜る功一を愕然と見上げた。「こ、功一くん…… ! つい先週のお客様だろ ? そんな急ぎ早で契約をするなんて…… ! 」「前の職場では契約はスピード命でしたし。 馬宮先輩もまともそうに見えたので、すっかり……。しかもまさか強盗に入るなんて」「強盗に入ったのが馬宮っての本人で契約に関するものをとりもどせればいいが、これが特殊詐欺だと流石に……細分化されて追いようがないかもしれません」「いや、冷静に考えて。ここの土地を買ったなら持ち主を辿ればいいだけだ。そこから遡ればいいだけで」 そこで竹田が疑わしい目で功一を見始めた。「お父さんの実印やらなんやら……なんで借りる必要あったんだ ? 書類だけで済むものを、なんでうちに持ってきた ? 」「最近多忙でしたので、スキマ時間にやろうかと」「それは通じないだろ 。 佐喜男さん、その土地。最近見に行かれましたか ? 」

  • 義実家崩壊の原因は私を守る神です〜悪神に魅入られた花嫁〜   5.掃除好きの憂鬱

     想定外か、予想通りか──朝起きると、家事は何もされていなかった。 佐喜男と友紀の食べた弁当の空が、乱雑にシンクへ置かれていた。「はぁ……」 思わずため息が出る。 しかし、早寝をしたせいか寝起きがよく、いつもより早い時間にスッキリ目を覚ました。今から炊飯をしても間に合うだろう。 キッチンのカウンターには弁当箱の入ったランチバッグが二つ。 一つは美千花の息子 賢治のものだ。中身を見て好き嫌いをチェック。嬉しいことに昨日も完食。少し嬉しくなる。 功一の弁

  • 義実家崩壊の原因は私を守る神です〜悪神に魅入られた花嫁〜   4.静かな再会

     南の島の庭園はいつも緑が豊かで、雑草を残らず抜く作業も枝の剪定も苦にならなかった。先にいた同性の使用人達も皆、同じ身分で優しかった。 しかし自分には秘密があった。 いつも仕事が終わると各自、小屋へ戻り話したり水を飲んだり自由だ。その中で、いつもの景色を眺めに行くと嘘をついて自分だけ崖へ行く。 いつも自分が先に来ていて、ガサガサと茂みの音が鳴るのを待つ。 そして草木を掻き分けて現れた男は大きく手を伸ばし、自分をきつく抱きしめる。 背中越しに感じる温かさはいつもと変わらない。「待たせた」 二人は

  • 義実家崩壊の原因は私を守る神です〜悪神に魅入られた花嫁〜   1.神代家

     いつも仁香は南の島の崖に立っている。 恋人と会うために。 場所は知らない。何しろ、自分は物心つく前に、庭の手入れの為だけに連れてこられた使用人なのだ。その庭のある豪邸の主人にも名前すら覚えて貰えない。そんな身分だ。 ある日、生活に色がついた。 花は美しく、海はどこまでも続くコバルトブルー。 地平線のスカイブルーがオレンジに変わる頃、仁香はドキンドキンと高鳴る胸を押えて、誰かを待つ。 庭木がガサガサっと揺れる。 振り返ると功一によく似た、身なりの良い青年が出てきて、仁香の細い腰を抱きめ、嬉しそうに笑いながら抱えあげる。 幸せだった。幸せな気持ちだった。 ──この夢は繰り返し

  • 義実家崩壊の原因は私を守る神です〜悪神に魅入られた花嫁〜   0.プロローグ

     雪荒ぶ道。 轍のついた路面の端で仁花《ニカ》は冷えていくサンダルの爪先を見詰めた。 眺めたところで仕方ないというのに、疲労と絶望で思わず顔を下に向けてしまう。 仁花は両手に大きなナイロン袋を提げ、ありったけの日本酒を持っていた。瓶の重なり合い割れてしまうのを見越し新聞紙を持参したが、あまりの重さに一度雪の上へ袋を下ろした。 普段温厚な義父はいつも仁花を可愛がり、気遣ってくれる。そんな義父の頼みとあっては断れないのだ。例え酒が人格を狂わすとしても、味方になりうるのは義父だけ。 今晩、酒を買いに行って来いと義父が言うもので家を出たが、仁花は義母に車を置いていけと言われ徒歩で三キロ先の

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