LOGIN「エリンシアの体調が良いから、一安心だわね可愛いティナ」「はい、ティンタル様、私も母さんが元気そうで嬉しいです」暖炉の傍で暖かなショコラを飲みながら、ティンタルが呟き小さなティナがその言葉に答えた。無事にエリンシアの出産を終えて、しばらくの後ティンタルは自分の怪我の治癒、休養に互いの雪の季節故に黒の国と巨人族の国との戦争、小競り合いは休止状態であるので今もエリンシア達の家にのんびりと居座りを決め込んでいたのだった。「ティナのお焼き菓子は美味しいわ、ありがとう」まだ小さなティナの赤毛の頭を優しく撫でながらテインタルが呟くように言う「テインタル様、ありがとうございます」頬を赤くして、小さなティナ最近は母親のエリンシアに廻りの者たちから料理を習い、ティナは少しづつ料理の腕前を上げてゆく他にも学ぶ事は多く、父親のアーサー達に母親のエリンシアからは楽器の演奏もはじめていた。「テインタル様、また黒の国の言葉を教えて下さい黒の国の絵本を貰いましたから、読みたくて」「ええ、大丈夫よ、良いわ」「異国の遠い国、黒の国の事がもっと知りたいです、ティンタル様」「だって、とても綺麗なティ様、ティンタル様の故郷ですもの」確かに…黒の国は懐かしい故郷、愛する王国束の間…ティンタルの記憶の中にある懐かしい幸せな幼い少女時代の記憶が脳裡をよぎる。だが、今のティンタルは逆らえない命令とはいえ、同胞である黒の国の民に刃を向け、多くを傷つけ、殺した。少し戸惑う表情をしてから、黒の王女であるティンタルは答えた。「…そうね、沢山教えるわ」「本当は武術も教えた方が良いのかしらね」少し考え込む仕草をして「ティナの魔法資質はどうかしら?」
「お湯を沸かさないと!」「エリンシア様!」エリンシアの出産で、家の使用人に手伝い来た数人のアーサーの親戚に友人の妻達が走り廻っていた。「まだ、薬師は?それとも産婆は来られないのか?」「大雪で動きが取れないらしくて…」そんな騒ぎの中で広間のソファで一人、御茶している一人の少女の姿本来は20歳を越えたがティンタルは種族の特性から18歳前後で姿を留め、ひさしい長い黒髪、長いエルフのような耳がピクンと騒ぎに反応して、動く「……大変そうね」のんびり、まったり御茶にティナの作った焼き菓子を召し上がる黒の王女ティンタル「あ、あの…ティンタル様は怪我で療養中の客人なのでごゆっくりされて下さい」気を使う使用人「すいません、ティンタル様」アーサーも湯を沸かす薪を運びながらの一言「ええ、そうしているわ」ティンタル「ティンタル様、ティ様、御茶のお代わりと新しい焼き菓子です」小さなティナがお盆に乗せた御茶に焼き菓子を差し出した。「ティナ、ありがとう」当たり前のように優雅に御茶を飲むティンタル「はい、ティンタル王女様」小さなティナ小さなティナの赤毛の頭を撫でるティンタルそれからじっ…とエリンシアの部屋の方を見ていた黒の王女ティンタル束の間、目の色が黄金色に代わり…すぐにまた、いつもの深紅の色に戻る。「……」「どうかされましたか?」「私が父王から少しだけ受け継いだ黄金の魔法の力を使って、エリンシアを透視したけど」「エリンシアの身体は弱っているから、大変そうね」「私は父王のアージェントのような予知は出来ないみたいだけどね」そう言って立ち上がり、スタスタとエリンシアの部屋へ「入るわ」ティンタル廻りが驚き、動きが止まる「水で良いから、持っていらっしゃい私が魔法でお湯に変える…それから…」ベッドで小さく呻き声、あえぐエリンシアの傍に…「大丈夫かしら?エリンシア」うっすらと目を開けるエリンシアエリンシアの瞳には涙が浮かぶ「大丈夫、私も居る、貴方の大事なアーサーも、貴方を大事に想った私の父に母」「……?」「出産の手伝いは無理だけど、身体を一時的に癒して体調を整える魔法ぐらいならね」ティンタルは心の中で思うエリンシアの身体を完全に癒し、回復する事は私の魔法では出来ない私の本来の魔法の力は、戦いの為のもの破壊して
エリンシア は 暖炉でショコラを作っていたそれに焼き菓子の準備も…怪我をして家に来た黒の王女ティンタルの為に…◇ ◇ ◇パチパチパチ…と小さく暖炉の薪の火がはぜる音がする。「怪我の具合はティンタル様?」アーサーが心配そうに聞くとその問いかけにティンタルは…「大した事は無いわ」とても、素気なく答えた。「まぁ、兄さま達が私の事を心配して連れて帰りたかったみたいだけど…」「ふふっ…まさかアーシュラン兄様まで来るなんて」肩をすくめ、黒の王女ティンタルはつぶやく「セルトは殺し損ね、リュース公達には逃げられたわ」「…黒の国はあの綺麗な雪花が咲き出す頃かしらね」桜に似た美しい雪のような花ビラの情景を想い出すティンタル黒の王女ティンタル「ティンタル王女様」アーサー「分かっているでしょう、アーサー」ティンタル王女の深紅の深い…赤の瞳がアーサーを見めながら告げた。「この呪いの入れ墨、私の身体に刻まれた入れ墨の呪縛がある限り、私は巨人族の王に従い続けるの!」「ええ、そうね…私の肉体が滅びるまで死ぬまでね」悲哀と苦痛に満ちた声 ティンタルの叫びに似た声コンコンと二人が居る部屋のドアを叩くノックの音「お邪魔致します」ティンタルの部下で、実は 見張り役のランディが入って来た。それと心配そうな表情をした身重のエリンシアアーサーの妻、白の姫「ランディ、報告は黒の国の者たちが隠密に入り込み、黒の国の奴隷達を救出しょうとしたそれだけよ」「…ランディ」今度はアーサーが強い 調子で彼の名前を呼ぶ「分かりました、アーサー様、ティンタル様そのように報告致します」「あら、エリンシア姫、暖かそうなショコラね」頷くエリンシアがティンタルにショコラを差し出した。「ありがとう、頂くわ」「ティンタル様、傷が癒えるまでゆっくり私の家に滞在されて下さい巨人族の王の許可はとってます」「貴方がいれば、エリンシアも娘のティナも喜びます」アーサー「まあ、良いのかしら?」ティンタルはチラリと眉をひそめ、身重のエリンシアを見る。エリンシアは笑顔で頷いたのだった。
寸前で避けて、かわすが…「私の方が魔力は上よ!兄さま」ティンタルが叫ぶ「炎の蛇!」しなり、絡みつく蛇を思わせる魔法の炎炎の魔法、灼熱の炎がアーシュランに再び襲いかかった!黒の王アーシュランは異母妹ティンタルの激しい猛攻を払い除け続けるその合間にも、今度はセルトに魔法の呪縛をかける「我が命を下す、命じる!竜人セルトを捕縛せよ!岩のゴーレム!大地の精霊!」「うぁ!うおおっ」セルトは足元の土から伸びた泥に絡みつかれて、次には現れた岩のゴーレムに抱きつかれた「絞め殺せ!」ティンタルの叫びに似た声「くっ、セルト!」「黒の王が命を下した!砕け散れ!岩のゴーレム よ」アーシュランの魔法解除により大きな音を立て砕け散る岩のゴーレムしかし、まだ土精霊の魔法は解除出来ていない隙を見て、アーシュはリュース公達に目配せで合図をしながら次には剣で打ちかかるティンタルの刃を手に現れた魔法の剣で勢いよく、打ち返して薙ぎ払う「ティンタル!ティ!アル…リュース公の娘のアルティシアも待っている…もう、帰って来るんだ!」ほんの少しの間、ティンタルの攻撃の手が止んだ。「…無理よ、わかっているくせに」幼い頃に過ごした幼友達のアル、アルテシアの明るい笑顔…アーモンドを思わせる勝ち気そうな瞳優しくて、世話好きなアル…。束の間の想いにふけたティンタル…ティンタルの僅かな隙後ろからの影にハッとするリュース公によって魔法の呪縛から解放されたセルトの姿だった!
セルトに向かった ティンタルの魔法攻撃宙に浮かぶもの複数の槍のような土、岩のように硬く尖り炎の魔法で包まれたものが…セルトに向かい、一直線に勢いよく飛んできた!身動きが取れない竜人のセルト鋼鉄のような鋼の鱗を持つセルトでも貫かれれば当然、命は無い!「セルト!」叫ぶ少年の声雪避けのフードを纏った少年がセルトの前に立ち次々と素早い動作で打ち払う フードから覗けるもの、その姿に顔釣り上がり気味の瞳はティンタルと同じ深紅の瞳稀なる赤い瞳「アーシュラン様」「我が君、黒の王様」皆が口々に言うのだった「お前達がなかなか戻らんから、迎えにきたぞ国政の仕事が滞る」ボソリと言うそんな少年、今は少年の姿の兄に「……まぁ、兄さま」黒の王女ティンタルは目を細め笑みを浮かべた。「ああ、なんて事、大好きな私の兄さま昔の姿に若返った私の兄さま…」「久しぶりだな、ティ」少年、黒の王…ティンタルの兄が冷たい表情で言う「うふふ、私が憎い?貴方の大事なエイルを傷つけたわ…」それに子供の頃の記憶を無くしたアーシュラン兄様には私に情など無いわ、黒の民も沢山、沢山傷つけた」泣き笑いのような表情をするティンタル「ティ、もう良い、帰って来い!アルが泣いていた…優しいエイルはお前を許せと俺に言う」「…優しいのね、でもね…でも無理」「私に、私の身体に刻まれた呪いの入れ墨が…」憎しみに満ち溢れたような不気味な笑顔目を釣りあげてティンタルが言う「愛しい貴方を殺したいの!」ティンタルが雪の中で燃え上がるような炎の魔法を放つ
「セルト殿!」「セルト殿ぉぉ!」彼らは炎に包まれたセルトに対して口々に悲鳴に似た叫びを上げたのだった。雪避けのフードはすぐに燃え尽きたが、セルトは…セルトは軽く、己の剣で身体を包んだ魔法の炎を払いのけた。竜の人型のセルト…特別な加護がある彼、それに固い鱗の身体ほぼ、火傷もない…。「そう、やはりね」黒の王女ティンタルが呟く。其処にリュース公、タルベリィの部下達が駆けつけた「ご無事ですか!」雪避けのフードを纏う彼らは声をかけた…その中にかなり、小柄な者が一人混ざっているが今は誰も気がついていない。「お前達、兵士達よ、リュース公とタルベリィを捕らえなさい」「他の者達…そうね、拷問に掛けられるでしょうから、そんな酷い目に合うより殺した方が良いでしょうね」ティンタルの合図に今度はタルベリィやリュース公、その部下達に襲い掛かる。「タルベリィ殿、リュース公!」慌ててセルトが叫ぶ「セルト、貴方の相手は私よ!よそ見している場合じゃないわ…ねえ、これならどうかしら?」ティンタルの深紅の瞳が燃え上がるように輝いた「炎の蛇よ、敵を捕らえよ!」ティンタルの魔法で赤い魔法陣がセルトの足元に出現したかと思うと蛇を思わせるクネクネした細長い炎がセルトの足元を捕らえた!「うっ」ジュッと言う音に嫌な焼ける臭いがする。セルトは蹴り、剣で払いのけようとする「セルト殿!…水よ、竜人セルト殿を救え!」敵の兵士達と戦いながらもリュース 公が水の魔法を放ち、セルトの足元の炎を消した「炎よ、大地の槍に抱かれ、我が敵を貫き、焼き殺せ!我が名は焔の姫、黒の王女ティンタル、我に従い敵を討て!」空中に浮いた幾つかの大きな土の塊その土の塊がが細長く、先を尖らせた形に変化したかと思うと…次に赤い炎を纏い、勢いよくセルト目掛け飛び掛かった!すると、リュース公達の部下の兵士雪避けのフードを被る小柄な者がセルトの方に駆け寄る。