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第10話

Auteur: 錦玉のきらめき
沙耶はアメリカに到着した。

「教授、着きました」

「よかった。すぐに慶介(けいすけ)を迎えに行かせるから、彼に住まいまで案内してもらいなさい」

慶介は教授の息子だ。沙耶が「そこまでしなくても」と返そうとした瞬間、電話はもう切れていた。

背後から、低くて心地よい男の声が聞こえた。「沙耶先生、ですよね?」

振り返ると、スラリと背が高く、顔立ちもはっきりとした男性が立っていた。きちんと仕立てられたジャケットが、広い肩と細身の体をより際立たせている。

彼はすぐに沙耶を見分けて、手を差し出した。「はじめまして。僕は教授の息子の三宅慶介(みやけ けいすけ)です」

「はじめまして」

「厳密には『はじめまして』じゃないんですけどね。沙耶さんは覚えていないだけで。さあ、車に乗ってください」

はじめてじゃない?

沙耶はその場で立ち尽くしていたが、慶介は手早く沙耶の荷物を車のトランクに運び、さりげなく助手席のドアを開けてくれた。

車の中で、慶介は運転に集中していて、一言も話しかけてこなかった。

沙耶は、慶介は無口でクールなタイプなんだろうと思ったが、むしろその方が自分にはありがたかっ
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