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第9話

مؤلف: 錦玉のきらめき
真美が辞職を申し出て、白川家を出て行った。

達也はひどく落ち込み、正気を失ったように部下を総動員して真美を探し回った。

傷ついた沙耶のことも、颯太のことも、もう気にかけようとしなかった。

毎日のようにバーに入り浸り、酒で自分を誤魔化す日々。

沙耶は、そんな達也を初めて見た。以前、仕事で莫大な損失を出したときでさえ、これほどまでに打ちひしがれたことはなかった。

――真美は、達也にとってそれほど大きな存在だったのだ。

ある日、酔いの残る達也が沙耶を訪ねてきた。

無精髭に青白い顔、目の下には深いクマができている。

長い間まともに身なりを整えてもいないし、眠れてもいないのが一目でわかった。

達也は離婚届を沙耶の前に差し出した。

「真美さんが言ったんだ。自分が第三者になるのは嫌だから、俺が君と離婚しなければ戻らないって」

離婚届には、驚くほど高額な慰謝料が書き込まれていた。沙耶はその額を見つめ、皮肉な笑みを浮かべる。

「本当にこれでいいの?」

「……わからない。でも、俺も颯太も、もう真美さんなしじゃいられないんだ。沙耶、これは一時的なものだ。いずれ颯太が大きくなったら、また君とやり直すつもりだ。どうなっても、君は颯太の母親であることに変わりはない。血のつながりは、何よりも強いはずだろ?」

達也は、もし沙耶が離婚届にサインをしなかったら、無理やりでも押し切るつもりでいた。

だが思いもよらず、沙耶は何のためらいもなくペンを取り、離婚届にサインした。

あまりにもあっさりとしたその態度に、達也の胸には一瞬、妙な虚しさが広がった。

けれど、「これで真美さんが戻ってくる」と思い直すと、達也はすぐに元気を取り戻し、離婚届を手にしてそのまま家を飛び出していった。

沙耶は思わず苦笑いしながら、静かにスーツケースを用意し始めた。

達也は、もう沙耶の個人的なものが寝室から消えていることにも気がついていなかった。

――まあ、これでいい。

離婚すれば、もう何も心残りはない。あとは思う存分、芸術の世界に没頭すればいい。

達也は、沙耶がまだ家にとどまるつもりだと思っている。仮の離婚だと信じているのだ。

だが、沙耶の心はもう、完全に離れていた。

最後の日。

沙耶は荷物をまとめて送り出し、街の友人たちにも別れを告げた。

後になって友人から、達也が沿岸の都市で真美を見つけ、彼女が勤務する施設を丸ごと買い取り、毎日新鮮なバラの花束を届けていると聞かされた。

さらには会社のクルーズを使って、真美にサプライズを仕掛けたらしい。

その晩、海の上で数千万円分の花火を打ち上げ、達也はダイヤの指輪を手に片膝をつき、真美にプロポーズした。

まるで恋に夢中の少年のように、情熱的に真美を追いかけ続けた。

真美はプロポーズを受け入れ、その様子はメディアにも大きく取り上げられた。

白川家の両親も、真美の家柄や育ちにとても満足しているようだった。

出発の日。

沙耶は達也の秘書に財産の整理を頼んだ。

車も家も手放すつもりで、すべて現金に換えてほしいと伝えた。

「奥様、社長は『これはただの駆け引きだ』だと。『離婚は仮のもの、今まで通り奥様の権利も家も車も使える』と言っていました」

沙耶は首を振り、静かに断った。

秘書は仕方なく、沙耶に小切手を手渡した。

沙耶は満足そうに受け取り、車と家の鍵をテーブルに置いて、スーツケースを引いて家を後にした。

玄関のドアの陰で、小さな頭がじっと沙耶を見つめていた。

心変わりした夫。そして、別の女性を母親として選んだ息子。

彼らがもう自分を必要としないのなら、沙耶も、もう彼らを必要としない。

最後に颯太の顔を一度だけ見て、沙耶は顔を上げ、広い空を見上げた。

これからは、もっと広い世界で生きていく。

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