LOGIN公園で金狼さんと別れた俺は一人帰路へと着く。
ほんと、気乗りしない道のり。帰ったって誰もいないんだから…。あぁ、帰りたくない。
家につけば真っ暗だった。あぁ、やっぱり今夜もか。
外灯も、門灯もいつ頃から着かなくなったのか?今宵もこの家で俺は一人。
俺は溜め息をつき門を開けて中に入りポケットの中から鍵を取り出して、玄関の鍵を開け家の中に入った。
シンとしている家の中。真っ暗だ。
ドアを閉め鍵をかけると靴を脱ぎ捨てて、自分の部屋へ向かおうと階段を上りかけて足を止め、キッチンへと行先を変えた。
キッチンへと入り冷蔵庫の中から缶ビールを二缶取り出し、そのままその場で一缶は一気に飲み干す。空き缶を捨てて、もう一缶もったまま二階にあがり自分の部屋に入った。ベッドサイドの明かりだけをつけベッドに腰掛けて持ってきた缶を開けて飲んだ。
どんな無茶な飲み方をしたって酔いやしない。虚しい。ホントに虚しい。
俺は普通の愛が欲しいよ。
望んだところで俺には手に入らないことわかりきってるけどさ。
机の引き出しからタバコを取り出し、それを吸い始めた。あいつが知ったら怒り出すんだろうな。
「一本ぐらい大目に見ろよ」 不意に頭に浮かんだ旧友にいってタバコを一本だけ吸いビールを飲みほした。携帯をいつもの場所にセットしてから布団に潜りこんだ。
小6の頃からまともに食べることも寝ることも出来なくなった身体。仮眠程度に寝れればいい方だ。
それでも横にはなる。少しでも多く寝れればいいなと思いながら…。だから今夜もそう思いながら横にだけはなった。
不意に浮かんだ金色の狼の姿を思い浮かべながら俺は泡沫の眠りについた。
ピッピピピッ
「ん?…んん…」
携帯のアラーム音で目を覚ました。やっぱりあまり寝れなかったか。深く眠ることができない。きっと原因は精神的なもの。アラームを止めて時間を確認する。学校に行くにはまだ少し早い。 「あのまま寝たんだっけ…」 携帯を元の場所に戻してからベッドから降りた。クローゼットの中から着替えを取り出し、空き缶を持って部屋を出た。取り合えず、キッチンへ行き空き缶を捨ててバスルームに向かった。
いつの間にか定番になった朝シャワー。
まぁ、夜は彷徨ってるからなんだけどさ。
頭を拭きながらキッチンに戻ってきて、冷蔵庫の扉を開けて中を見る。
「あー、めんどくせぇ」 朝飯をどうしようかって思って冷蔵庫の扉を開けたけど、作るのが面倒だ。冷蔵庫の扉を閉めて、代わりにお湯を沸かす。 コーヒーの準備をして、テーブルの上に置いてある食パンの袋を開けて一枚だけ取り出してかぶりつく。パンをかじったままで玄関に新聞を取りに行き、コーヒーを作ってからザラッと新聞に目を通した。パンとコーヒーの簡単な朝食を済ませ、使ったカップだけ洗いもう一度、自分の部屋へと戻った。
部屋に入ってクローゼットの中から制服を取り出してベッドの上に投げ捨てる。
「めんどくせぇ。行きたくねぇ」 なんて言ってみても今日は平日だ。嫌でも学校に行くしかない。 「着替えて準備していくかぁ」 俺は盛大に溜め息をつき着ていたシャツを脱ぎ捨てて制服のシャツに袖を通す。 といっても普段から俺はちゃんと着ないからボタンは上から3段目まではとめない。ネクタイもだらしなくはめる。 格好だけでいったら完全に不良と一緒よ。 ズボンを穿き替えてベルトを締めて溜め息をつく。 「また位置が変わった。また痩せたのかよ」 ベルトの位置が一個、内側に変わった。ホントにめんどくさい身体だ。ブレザーに袖を通してまた溜め息をついた。 ホントに行きたくねぇなぁ~ それでも、机の上に置いてあるシルバーの伊達メガネをとりつける。昼間の俺と夜の俺とを切り替えるためだけのメガネ。
携帯や財布とかいるもんをポッケにしまい込みノートと筆箱しか入っていないカバンを持って部屋を出た。 玄関で学校用の靴を履き 「行ってきます」 誰もいない家に向かって呟き家を出て鍵をかけた。 いつもやっている行為。じゃなきゃ、俺が俺じゃなくなりそうだから…。 ホント虚しいよなぁ。 こんなこと6年間ずっとやってきたんだもん。毎度のことながら怒涛の如くテストも終わり答案用紙が返された。そして、毎回恒例の順位表が廊下に貼りだされていた。「やっぱお前ってムカつく」順位表を見て翔太が呟く。「なんで?」言わんとすることはわかってるけど、つい聞き返しちゃった。「あの結果だよ!なんでお前あんなに成績がいいわけ?普段、授業はサボるは、話は聞いてないは、寝てるはってしてるヤツがよ!」張り出された紙を指さし言われた。「イヤ、ほら、翔ちゃんだっていいじゃん?」俺は翔太も人のこと言えないだろって意味を込めて言い返した。実際そうだしさ。「お前ねぇ、普段から真面目に勉強してねぇ不真面目なやつがクラスでトップの成績で、しかも学年で2位ってどうよ?ふざけてるだろ?」翔太が溜め息交じりに言ってくる。うん、耳が痛いなそれ。貼りだされた紙には各クラスの順位と学年順位が記されているのだ。俺はクラスで1位で学年で2位。勿論、学年トップは拓ちゃんだ。「そういう翔ちゃんはどうよ?クラス2位で学年で5位じゃないさ。人のこと言えないじゃん」俺は大袈裟に溜め息をついた。「アホ!俺は真面目に授業を受けてんの!お前と違って授業態度はいい方なの!」翔太は俺の首を絞めながら言ってくる。{あはは。だってさ、俺のはこれしかなかったんだもん…まぁ、全部が無意味だってわかってるけどさ」俺はやんわりと翔太の手を放す。そう、俺には勉強もテストの順位も無意味なもの。「お前、嫌みだ」ポツリと翔太が呟く。俺の家庭の状況を一番、よく知ってるからね翔ちゃんは…。「だって事実じゃん。翔太は知ってるでしょ?どんなに頑張ったところで俺には全部、無意味なんだってこと…」俺は苦笑を浮かべるしかできない。「だから余計にムカつくんだよ。お前の頭のよさとかは知ってるしわかってるけどムカつくんだよ」翔太がまだいう。俺は本当に苦笑を浮かべてることだけしかできない。「でも、拓ちゃんて本当にすごいね。全教科、満点だなんて。さすが、特Aクラスで生徒会長だけあるね」俺は貼りだされている拓ちゃんの成績を見て呟いた。「あいつは常連だからな。ってお前もか。毎回、上位にいるんだし。ってかいつからお前そんな呼び方するようになったんだ?」あっ、翔太に突っ込まれた。スルーしといてくれればいいのに。「ん?この間のチュー事件の後から。会長呼びが気に入ら
ピッ、ピピピッ「ん?んん??」 携帯のアラームに気が付き寝惚けたまま目を開けると目の前にキレイな拓ちゃんの顔があってビックリした。 「そうか、昨夜…」 俺は昨夜のことを思いだしジッと拓ちゃんの顔を見た。 「相変わらずキレイだねぇ。拓ちゃん朝だよ」 そう声をかけてみたら、ギュって抱きしめられた。 「た、拓真。時間、着替えに行かないと…」 俺はゴソゴソと動いて抵抗を試みた。 「そうだな、一度帰らないとな」 あっさりと俺を離し拓ちゃんが身体を起こした。 「ありがとうね、拓ちゃん」 俺は彼に向かって呟いた。いつの間にか傍にいてほしい時に俺の傍にいてくれるようになった人。俺が本気で好きになってしまった人…「気にするな。また学校でな」 拓ちゃんは小さく笑い俺の頭を撫でた。 「ん」 ちゃんと返事が出来なかった。寂しいっておもちゃったんだ。 「じゃぁ、帰るな」 拓ちゃんはベッドから降りると自分の持ってきた小物をポケットの中にしまっていく。俺も拓ちゃんを見送るためにベッドからおりて、玄関まで見送る。 「じゃぁ、遅刻するなよ」 拓ちゃんは俺の頭を一撫でしてから帰っていった。ありがとね。本当にありがとう。ほんのひと時でも俺は幸せだよ。俺は部屋に戻るとクローゼットの中から制服を取り出して着替えた。カバンには、昨日持って帰ったきた教科書とノートを入れてから部屋を出てキッチンへと向かう。教科書はまたロッカーいき。 「あっ、缶忘れた」 キッチンの机の上にカバンとブレザーを置くともう一度、自室へと戻り机の上に置いてある缶を持って戻ってきた。飲みかけの缶は中身を捨てて、飲んでない方はもう一度、冷蔵庫の中にしまった。そのついでに朝食のための食材を取り出す。 「あんまり食べたくはないんだけど…ハムエッグぐらいは食べれるかな」 一人呟いてハムエッグを作りながらパンを焼いていく。本当は一人で食べるご飯なんて味気がない。だけど、食べないとヤバいからね俺の場合。これ以上痩せてったら翔ちゃんに何を言われることやら…。俺は自分で作ったご飯をイヤイヤながら食べて、ブレザーに袖を通しカバンを持って家を出た。乗り込むバスはいつもと同じ時間のバス。流れていく街並みをバスに揺られて眺めていた。バスに揺られていつものように学園の前のバス停でおり、いつものように門の
「泊ってく?」 俺は自分の口から出てきた言葉に驚いた。金狼さんも驚いたようだ。 「あっ、やっ、無理にって言わないよ」 俺は慌てて弁解した。だって明日はテストだしね。そんな場合じゃないよね。 「いいのか?」 金狼さんは驚いたままで聞き返してきた。 「あ、うん。金狼さんがそれでいいならの話だけどね」 俺は門を開けながら答えた。だって無理強いは出来ないもん。 「お前が迷惑じゃないなら泊ってくが…」 金狼さんが苦笑を浮かべる。 「俺は平気。じゃぁ、上がって。俺のベッドだから狭いけどそこは我慢してね」 俺は家の鍵を開けて金狼さんを招き入れた。あっ、これで2回目かも…「お邪魔します」 金狼さんは靴を脱ぎ上がった。俺も鍵を閉めて靴を脱ぐ。 「ビール飲む?って酒類しかストックがない…」 なんて聞いてみる。 「イヤ、いい」 金狼さんは小さく笑った。 「じゃぁ、部屋いこ」 俺は金狼さんの返事を聞いて自分の部屋へと向かった。部屋の中に入り俺は盛大に溜め息をついた。 「ビール出しっぱだし…」 机の上に置かれっぱなしになって冷めてしまったビールの缶がふたつ。しかも片方は飲みかけ…。 「お前いつから寝てたんだ?」 なんて聞かれた。 「えっと…帰ってすぐに風呂入って寝たから4時ぐらいかな?」 俺は逆算しながら答えたら笑われてしまった。 「ちょ…笑いすぎだからね」 俺この人に笑われっぱなしだよ。 「やっぱり猫だな」 なんてボソッと呟かれた。その呟きはしっかりと俺の耳にも届いたわけで… 「もっ、もう寝ます!!!」 俺はそれを誤魔化すように布団に潜りこんだ。ごめん…今はまだ…俺に勇気がないから…「俺の寝場所は?」 まだ笑いながら金狼さんが近づいてくる。 「あっ、電気消さなきゃ」 俺がそう言って起き上がるけど 「あぁ、消してくる」 金狼さんの早くて先に消されてしまった。薄暗くなった部屋の中、金狼さんが戻って来て俺の隣に潜り込む。恥ずかしくて、金狼さんに背中を向けてたんだけど 「蒼樹、こっち向けよ」 なんて急に耳元で名前を囁かれて俺の心臓は爆発寸前。 「っ、それ反則だからね!」 俺は熱くなった耳を押さえながら身体の向きを変えた。その途端にギュって抱きしめられた。煩いぐらい心臓がバクバクしてる。 「今は…今は何も言
「お前はよかったのか?テストの時は外に出ないんだろ?」 反対に聞き返されちゃった。 「テストの時は気分が乗らないだけ。だから出ないんだ。別に勉強するわけじゃないんだよ」 俺はそう言って金狼さんの方を見た。 「蒼華は…蒼華はどこにも根をつけないのか?」 不意にそんなことを聞かれた。 「んふふ。彷徨い華だからねぇ。彷徨ってるかもね。そういう金狼さんは?金狼さんも彷徨ってるでしょ?」 だから俺も反対に聞き返してみた。本当は聞くのが怖いけどさ。逃げ出したいぐらい怖い。 「最近は…彷徨ってない。どうしてもほっておけないヤツが出来て…そいつの事が気になってそれどころじゃない。それに今は彷徨う気にはなれない」 その言葉にズキズキと胸が痛む。聞きたくなかった言葉。でもわかってたことじゃないか。俺は誰にも必要とされてないって…。金狼さんには金狼さんの想い人がいるんだって…。 「そっかぁ。ふふふ。でもさぁ、金狼さんならその相手もいちころなんじゃない?」 俺は茶化してみた。気付かれてはダメだ…今自分の感情をこの人に気付かれちゃ…「そうでもない。警戒心が強くて常に威嚇されてるからな」 そんなことを言いながらジッと俺の方を見つめてくる。ドキって心臓が飛び跳ねた。 「ま…まるで猫みたいだね…」 俺は呟き気味にいう。視線が逸らせない。逃れられない。 「本当にそうだな。機嫌はいい時は素直なんだけど、悪い時はかなり厄介だからな」 俺をジッと見たままで金狼さんが言う。 「金の狼にも手に負えないってその猫はどんだけ凄いの?」 俺は視線だけをそっと逸らした。 「かなり凄いぞ。まぁ、そんな猫がすごく気になるんだけどな」 金狼さんは静かに紫煙を吐き出した。俺はあなたの何?あなたは俺に何を求めてるの?「金狼さんにも手が負えないなんて凄いなぁ」 俺はゆっくりと空を見上げる。だから金狼さんが動いたのに気が付かなかった。グイッて首を引かれたなって思ったら目の前に金狼さんのキレイな金色の髪。そして唇に触れられている感触。それがキスだって気が付くのに少しだけ時間が掛かった。 「本当にマジで手に負えない気まぐれで気分屋な大きな猫だ」 金狼さんは俺を離すと呟きのように言った。もしかして…俺のこと?猫って俺の事なの?「金狼さんはその猫をどうしたいの?」 俺はついそん
― 真夜中 ―ふと目が覚めた。熟睡とまではいかないがどうやら寝ていたらしい。何度か起きたけど、いつもよりは寝れていたのかもしれない。 「電気つけっぱなしだし。今、何時だろ?」 いつもの場所にある携帯を取り時間を見れば23時を少し回ったところだった。変な時間に目が覚めた。困ったどうしたものか?この時間、翔ちゃんは遊んでる最中だよなぁ。ん~。俺は携帯のアドレスを開き目的の番号を探し出す。そのまま何の躊躇いもなくボタンを押した。数回のコールの後で 『もしもし?』 返事が返ってきた。 「あっ、会長さん?こんばんは、勉強してた?」 俺がかけたのは会長さんこと金狼さんなのだ。 『イヤ、違うことをしてた』 そんな返事が返ってきた。 「あっ…ごめん。もしかして変な時に電話した俺?」 あちゃぁ、ヤバかったかな? 『何を変な想像してるんだお前は。雑誌を読んでただけだ』 クスって笑われてしまった。よかったぁ、誰かとしてる最中とかじゃなくて… 「イヤさぁ、突然かけたからさ。会長さんも色々と忙しそうだしさ」 俺は壁に凭れて座った。 『お前ほどじゃない。それよりその呼び方どうにかならないか?』 溜め息交じりに会長さんが言ってくる。 「ん?会長さんて呼び方?気に入らない?」 だから俺は聞いてみた。 『あぁ。気に入らないな。ちゃんと名前があるんだから名前で呼べ』 ありゃ、怒られちゃった。 「えぇ~。ん~金狼さんじゃ呼びにくいしなぁ。あっ、じゃぁ拓ちゃんでどう?」 俺はダメもとで言ってみる。名前を略して呼ぶのは俺なりの愛情表現なんだけどなぁ。だから翔太も翔ちゃん呼びしてるんだよなぁ。 『それでいい。会長って呼ばれるよりはな。後、金狼じゃなくてもいい』 少しだけ呆れながら返事が返ってきた。 「じゃぁ、これからは拓ちゃんだね」 俺はそこまで言って黙った。長い長い沈黙。『どうした?何かあったのか?』 沈黙を破ったのは拓ちゃんだった。 「うぅん。拓ちゃんありがとう。こんなくだらない電話に付き合ってくれて」 俺は小さく笑って返事をした。 『まだ起きてるのなら少しだけでも逢わないか?』 少しの間を開けて拓ちゃんが聞いてきた。 「えっ?でも…いいの?」 俺は戸惑いながら聞き返してた。だって、そんなこと言われるって思ってなかったんだもん
「明日からテストだからな。しっかり勉強しろよお前ら」 帰りのHRの時に吉田が言ってくる。それを聞きうえぇとか、やだぁとか、色んな声が上がるが、それ以外の連絡事項などはなくて、そのままHRが終わりみんなが好き勝手に帰っていった。俺はとりあえず、明日のテストでやる教科の教科書だけロッカーの中から取り出しカバンにしまった。俺ね、テストん時以外は教科書は学校に置きっぱなしなのさ。宿題も大概が朝、学校に来てから授業が始まる前にやっちゃうからね。本当に俺って不真面目だねぇ。でもさ、俺っていつもこんな感じだから。真面目になんてやってやらない。やっても意味がないもん。「今日から出ねぇんだろ?」 2人で下駄箱に向かう途中で翔太が聞いてきた。 「うぃ、3日間ぐらいは大人しく家にいますよ。でも翔ちゃんは違うでしょ?」 少しだけ重くなったカバンを持ち直し聞き返せば 「おう。俺は遊ぶぜ」 ハッキリと言われた。この人はこういう人よ。遊ぶくせにちゃんと勉強するんだもん。真面目なのか不真面目なのかよくわかんないよ翔ちゃん。 俺はね、遊んでもいいけどテストん時は気分じゃなくなるんだよね。だから遊ばないのよ。かと言って勉強をするわけじゃない。ただ、外に出たくなくなるってだけ。 「ほいじゃぁねぇ~」 2人で会話しながら門の外へ出ればナイスタイミングでバスが来て、俺はそれに乗り込んだ。 「また明日な」 そんな俺に翔太が手を上げて言ってくる。俺は軽く手を振りそれに応えて、空いてる席へと座った。ゆっくりとバスが動き始めた。一人だけの時間が動き始める。心が闇に染まっていく…。「逢いてぇ…」 ポツリと出た言葉。自分がここまで本気になってるなんて思わなかった。 「でもさ…逢えないよね…」 必要以上に逢えない。俺が我慢をすればいい。我がままを言って迷惑かけたくないから…。だから我慢すればいい。いつもそうだったじゃないか。だから俺自身が我慢をすればいい…。俺はボーっと外の景色を見ながら心の中で決心していた。俺は家に帰ると部屋に直行した。そのままの勢いでベッドに倒れこむ。ギシリと悲鳴を上げるけど関係ないね。 「飯作るのめんどぉ~」 ベッドに倒れて携帯の時間を確認して呟いた。一人の時は食べたくない。作りたくないのだ。冷蔵庫の中に入ってる食材を思い浮かべてあれこれ考えるがまった