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03

Author: 槇瀬光琉
last update Last Updated: 2025-07-25 19:12:37

公園で金狼さんと別れた俺は一人帰路へと着く。

ほんと、気乗りしない道のり。帰ったって誰もいないんだから…。

あぁ、帰りたくない。

家につけば真っ暗だった。あぁ、やっぱり今夜もか。

外灯も、門灯もいつ頃から着かなくなったのか?

今宵もこの家で俺は一人。

俺は溜め息をつき門を開けて中に入りポケットの中から鍵を取り出して、玄関の鍵を開け家の中に入った。

シンとしている家の中。真っ暗だ。

ドアを閉め鍵をかけると靴を脱ぎ捨てて、自分の部屋へ向かおうと階段を上りかけて足を止め、キッチンへと行先を変えた。

キッチンへと入り冷蔵庫の中から缶ビールを二缶取り出し、そのままその場で一缶は一気に飲み干す。空き缶を捨てて、もう一缶もったまま二階にあがり自分の部屋に入った。

ベッドサイドの明かりだけをつけベッドに腰掛けて持ってきた缶を開けて飲んだ。

どんな無茶な飲み方をしたって酔いやしない。

虚しい。ホントに虚しい。

俺は普通の愛が欲しいよ。

望んだところで俺には手に入らないことわかりきってるけどさ。

机の引き出しからタバコを取り出し、それを吸い始めた。あいつが知ったら怒り出すんだろうな。

「一本ぐらい大目に見ろよ」

不意に頭に浮かんだ旧友にいってタバコを一本だけ吸いビールを飲みほした。

携帯をいつもの場所にセットしてから布団に潜りこんだ。

小6の頃からまともに食べることも寝ることも出来なくなった身体。仮眠程度に寝れればいい方だ。

それでも横にはなる。少しでも多く寝れればいいなと思いながら…。

だから今夜もそう思いながら横にだけはなった。

不意に浮かんだ金色の狼の姿を思い浮かべながら俺は泡沫の眠りについた。

ピッピピピッ

「ん?…んん…」

携帯のアラーム音で目を覚ました。やっぱりあまり寝れなかったか。深く眠ることができない。きっと原因は精神的なもの。アラームを止めて時間を確認する。学校に行くにはまだ少し早い。

「あのまま寝たんだっけ…」

携帯を元の場所に戻してからベッドから降りた。

クローゼットの中から着替えを取り出し、空き缶を持って部屋を出た。取り合えず、キッチンへ行き空き缶を捨ててバスルームに向かった。

いつの間にか定番になった朝シャワー。

まぁ、夜は彷徨ってるからなんだけどさ。

頭を拭きながらキッチンに戻ってきて、冷蔵庫の扉を開けて中を見る。

「あー、めんどくせぇ」

朝飯をどうしようかって思って冷蔵庫の扉を開けたけど、作るのが面倒だ。冷蔵庫の扉を閉めて、代わりにお湯を沸かす。

コーヒーの準備をして、テーブルの上に置いてある食パンの袋を開けて一枚だけ取り出してかぶりつく。パンをかじったままで玄関に新聞を取りに行き、コーヒーを作ってからザラッと新聞に目を通した。

パンとコーヒーの簡単な朝食を済ませ、使ったカップだけ洗いもう一度、自分の部屋へと戻った。

部屋に入ってクローゼットの中から制服を取り出してベッドの上に投げ捨てる。

「めんどくせぇ。行きたくねぇ」

なんて言ってみても今日は平日だ。嫌でも学校に行くしかない。

「着替えて準備していくかぁ」

俺は盛大に溜め息をつき着ていたシャツを脱ぎ捨てて制服のシャツに袖を通す。

といっても普段から俺はちゃんと着ないからボタンは上から3段目まではとめない。ネクタイもだらしなくはめる。

格好だけでいったら完全に不良と一緒よ。

ズボンを穿き替えてベルトを締めて溜め息をつく。

「また位置が変わった。また痩せたのかよ」

ベルトの位置が一個、内側に変わった。ホントにめんどくさい身体だ。ブレザーに袖を通してまた溜め息をついた。

ホントに行きたくねぇなぁ~

それでも、机の上に置いてあるシルバーの伊達メガネをとりつける。

昼間の俺と夜の俺とを切り替えるためだけのメガネ。

携帯や財布とかいるもんをポッケにしまい込みノートと筆箱しか入っていないカバンを持って部屋を出た。

玄関で学校用の靴を履き

「行ってきます」

誰もいない家に向かって呟き家を出て鍵をかけた。

いつもやっている行為。じゃなきゃ、俺が俺じゃなくなりそうだから…。

ホント虚しいよなぁ。

こんなこと6年間ずっとやってきたんだもん。

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