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第4話

Author: 蘇谷やや
恒一は眉をひそめ、冷たい声で言った。

「何をふざけてる。すぐ戻れ。ここにいる全員がもう三十分もお前を待っている」

私は呆れて言い返す気にもならなかった。

恒一がさらに何か言いかけたそのとき、琴葉の声が割り込んでくる。

「先輩、恒一さんと喧嘩なさらないでください。怒らせてしまったら、捨てられてしまいますよ」

その言葉を聞いた瞬間、なぜか可笑しくなって思わず笑ってしまった。

「だったら、あなたが朝倉恒一の専業主婦にでもなれば?」

琴葉はぱっと目を輝かせた。

「それ、先輩が言ったんですよね」

言い終わる前に携帯は恒一に奪われた。

彼は額を押さえ、手を振って琴葉をその場から下がらせる。

「時間は三十分だけだ。それまでに現れなければ、覚悟しろ」

私は眉を上げた。

三十分後の私は今よりずっと身軽でずっと自由だ。

何かの責任を背負う必要なんてこれっぽっちもない。

ほどなくして両親から電話がかかってきた。

「着いたかい?」

私は微笑む。

「うん、さっき到着したところ」

すると父が電話を奪った。

「今から桐原家のあの坊主に連絡する。迎えに行かせるからな」

一瞬、言葉を失った。

そうだ――父には長年の親友がいて、その人の息子も私が進学を決めた大学に留学している。

幼い頃は何かと世話を焼いてくれて、私にとっては兄のような存在だった。

十歳の頃、彼の一家は海外へ移住し、それきり連絡も途絶えていた。

時は淡々と過ぎていく。

三十分が経った頃、恒一からメッセージが届いた。

【本当に海外へ行ったのか?】

きっともう指導教員には確認を取ったのだろう。

私は唇を尖らせた。今さら嘘をつく意味なんてない。

彼は執拗に電話をかけてきたがすべて無視した。

しばらくして、今度は親友から着信があった。

出てみると、聞こえてきたのは恒一の声だった。

「久賀澄音、いつまでこんなことを続けるつもりだ?」

そのときになって、親友も事情を知らず、うっかり携帯を渡してしまったのだと気づく。

「朝倉さん。私はあなたとこれ以上くだらないことを続けたくないから離れたの」

困惑したような声が返ってくる。

「何を言ってるんだ」

私はその言葉を遮るように言った。

「私は最初から良妻賢母なんかじゃない。だから、あなたの言う通り――私は自分の広い世界を見に来たの
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