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第12話(30)

مؤلف: 北川とも
last update تاريخ النشر: 2026-01-13 11:00:10

「……どちらさまですか」

 思いきり皮肉を込めた声で問いかけると、モニターに映った人物はニヤリと笑った。

『お届けものです』

「へえ。警察から、運送業に転職したのか」

 和彦の言葉に、運送業者――ではなく、〈まだ〉現役刑事であるはずの鷹津は肩をすくめた。

『いいから、早く開けろ。ここは寒いんだ』

 仕方なく和彦は玄関の鍵を開けてやる。すかさず外からドアが開けられ、まるで獣のような荒々しい空気を振り撒きながら鷹津が入り込んできた。鷹津とともに入り込んできた冷たい風に首をすくめ、小さく身震いする。ここ数日、急に寒さが増してきた。

 和彦は軽く眉をひそめながら、鷹津を頭の先から爪先まで眺める。

 今日はくたびれたスーツを着た男は、相変わらずオールバックの髪型をしてはいるものの、不精ひげは剃っている。見た限り、どこか怪我をしている様子はない。鷹津に一切手を出していないという賢吾の言葉は、どうやら本当だったようだ。

 和彦が向ける眼差しをどう解釈したのか、ニヤニヤと笑いながら鷹津は言った。

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    「浴衣が擦れても気になるんだ。だから、おとなしく横になっていたというのに、父子揃って――」「海で泳いで日焼けか……。優雅でけっこうなことだ。俺たちはこの暑い中、ダークスーツで汗だくになっていたというのに」 バリトンで紡がれる皮肉は、なかなか痛烈だ。おかげで眠気がいくらかマシになり、しっかりと目を開けることができる。「……そんな皮肉を言われるぐらいなら、ぼくはマンションで一人、のんびりと過ごしたかった。だいたい、誰のせいで、せっかくの連休に振り回されることになったと思うんだ」 賢吾と千尋は、それぞれ互いの名を出した。 和彦は大きく息を吐き出すと、体に回された千尋の腕を押し退け、緩慢な動作で体を起こす。賢吾がすかさず手を差し出してきたが、あえて無視したうえで、たっぷり恨みがこもった視線を向ける。「ぼくだけ別の部屋を取ってくれてもよかったのに。知っているんだからな。あんたの名前で、別の部屋を取っていることを」 賢吾がちらりと苦笑を浮かべる。「何かあったときのためだ。まさか、長嶺組の組長と跡目が同じ部屋にいるなんて、うちの者以外に知られるわけにはいかねーからな」「だったら……、ぼくは今から、その部屋に移動する。ここだと落ち着いて寝られない」「――素直に行かせると思う?」 無邪気な口調で、悪魔のようなことを言ったのは、千尋だ。和彦が露骨に顔をしかめると、賢吾がおかしそうに声を洩らして笑う。叩き起こされて不機嫌な和彦とは対照的に、長嶺父子は機嫌がよさそうだ。 賢吾が寝乱れた髪を掻き上げてきて、千尋は背後から首筋に顔を寄せてくる。大きな獣にじゃれつかれているような気分を味わいながら、和彦は仕方なくこの状況を受け入れる。法要を終え、賢吾も千尋もようやく気を緩められているのだろうと思うと、本気で抵抗するのも気が引けた。「本当に肌が赤くなってるな。痛そうだ」 和彦の腕を取り、賢吾が浴衣の袖を捲り上げる。「痛そう、じゃない。痛いんだ」 てのひらでそっと腕を撫でられて、その手つきの優しさに思わず口元を緩める。つら

  • 血と束縛と   第33話(12)

     そう答えたのは三田村だ。さきほど見せた笑顔はすでになく、和彦を護衛するための緊張感で引き締まっていた。中嶋はどうするのかと、ちらりと視線を向ける。「君は?」「先生の遊び相手を務めたので、今日のところはお役御免ではありますが、長嶺組長にご挨拶をしておきたいので、店までご一緒させてもらいます」 こういうのをアピール上手というのだなと、和彦は素直に感心した。 店まで近いということなので、歩いて行くことにする。暑いうえに疲れているのだから車で、と三田村には言われたが、初めて訪れた場所を、少しでもいいから自分の足で歩いてみたいという好奇心には勝てない。「まあ、疲れついでだ」 話がまとまり、さっそく三人で宿を出る。このとき三田村は鋭い視線を周囲に向け、中嶋ですら同じ行動を取る。 自分のわがままのせいで申し訳ないなと思っていると、三田村と目が合う。次の瞬間、ふっと眼差しが和らいだ。三田村の言いたいことは、それだけで伝わってきた。 土産物屋が並ぶ短い通りを抜け、道路沿いに十分ほど歩いたところで、三田村が前方を指さす。ハンカチで額の汗を拭いながら和彦が見たのは、店らしき建物と、見覚えのあるいかつい車の一団が駐車場に停まっている光景だった。 店の前には組員が立っており、和彦たちに気づいて一礼する。三田村が声をかけ、少し前に賢吾たちが到着したということなので、時間としてはちょうどよかったようだ。 貸切となっている店の奥の座敷へと通されると、上座についた賢吾が唇だけの薄い笑みを向けてきた。さすがに寛いだ様子でジャケットを脱いでおり、ネクタイも緩めている。どうやら法要は問題なく終了したようだ。「さあ先生、どうぞ」 そう言って組員に、上座に近い席を案内されそうになる。 正直和彦は、席次がはっきりわかる場は苦手だ。よほど形式張った行事であれば指示に従うところだが、身内だけの食事会であれば多少の意見を通せる。賢吾や千尋の側に座るのは遠慮して、一番下座についた。 中嶋はさっそく賢吾の側に行き、何事か言って頭を下げている。堂に入った所作は、いかにも外見は普通の青年のように見えても、筋者のそれだ。賢吾は鷹揚な態度で応じ、二言、三言

  • 血と束縛と   第33話(11)

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  • 血と束縛と   第33話(10)

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  • 血と束縛と   第33話(9)

     いつものように距離を縮めてくる千尋をさりげなく牽制しながら、建物に入る。目立つ千尋の隣にいて、さらに目立つマネはしたくない。千尋は不満げに眉をひそめはしたが、さすがに大声で抗議するようなことはしなかった。 にぎわうロビーを横目にチェックインを済ませ、千尋と並んで歩きながら和彦は、こっそりと洩らす。「お前たちと泊まりで出かけると、犯さなくていい犯罪を犯すことになって、複雑な気分になる」 フロントで宿泊者カードを記入するとき、千尋は平然と本名を書くのだが、和彦だけは偽名を使い、住所も、住んだこともない地名を書いている。 千尋は肩を竦めて笑った。「ごめんね。俺たちの場合、どんなことで警察に引っ張られるかわからないから。だけど先生の場合、素性を知られることのほうが怖い。ヤクザじゃないんだから」「……わかってる。言ってみただけだ」 今夜宿泊する部屋は、いかに護衛しやすく、何かあったときに避難しやすいかに重きが置かれたらしく、非常階段の近くだった。部屋自体は広くて手入れの行き届いた和室だが、和彦が少しがっかりしたのは、海がまったく見えないことだった。 窓を開け、車が出入りしている駐車場を見下ろし、軽くため息をつく。「――見えないけど、海はすぐそこだよ」 笑いを含んだ声で千尋に言われ、和彦は慌てて窓を閉める。一拍置いてから、澄まし顔を取り繕って振り返った。「知ってる」「今日はこの部屋で我慢してよ。うちの組だけじゃなく、他の組や、総和会の人間たちもけっこう泊まっているから、とにかく安全第一で部屋を取ったから」 千尋の口ぶりはまるで、子供の機嫌をうかがっている大人のようだった。普段、千尋を諭すような物言いになってしまう和彦としては、妙な気持ちだ。さまざまな人間に囲まれ、経験を積んでいくうちに、必然的に千尋も成長していくのだと、当たり前のことを思い知らされる。「別に不満なわけじゃない。海が見えるものだと、ぼくが勝手に思い込んでいただけだから」 もごもごと和彦が応じていると、荷物を運び込んだ組員たちと入れ違うように、賢吾が部屋にやってくる。和彦たちよりどれほど先に到着していた

  • 血と束縛と   第33話(8)

    **** 海だ、と和彦は心の中で呟く。 ウィンドーに顔を寄せ、ようやく視界に現れた景色にじっと見入る。スモークが貼られているため、くっきりと色彩鮮やかというわけにもいかず、それを不満に感じた和彦は誰にともなく問いかけた。「……窓、開けていいか?」 数秒の沈黙のあと、助手席に座る組員が答えた。「少しだけでしたら」 いかつい車が連なって走行しているのに、物騒なことを考える人間はそうそういないだろうと思いながら、和彦はありがたくウィンドーを少しだけ開ける。 冷房がよく効いた車内に、ムッとするような熱気が吹き込んでくるが、それでも和彦にとっては心地いい。「潮の匂いだ……」 そう呟いたのは、和彦の隣に座っている千尋だ。車での長時間の移動は、気心が知れた相手と同乗したいという密かな和彦の希望は、和彦と同乗したいという千尋のわがままによって叶えられた。前列に座るのは長嶺組の組員だ。「海に来たって感じだよなー。あー、みんな楽しそう」 砂浜には海水浴を楽しむ人たちの姿があり、千尋の言葉通り、確かに楽しそうだ。「先生、ジムのプールではよく泳いでいたみたいだけど、海に泳ぎに行ったりしなかったの?」「海ではあまり泳いだことがないな。医者になってからやっと、海外に遊びに行ったときに――」 無防備に思い出話をしようとした和彦だが、ここでハッとする。これは千尋にしてはいけない類の話だと気づいたからだ。 和彦は一時期、外傷外科医として救命救急の現場にいたことがある。和彦が一番、肉体的にも精神的にも疲れ果てていた時期でもあり、この仕事に向いていないと、嫌というほど痛感もしていた。 そのため転科を考え始めた頃、ある男とつき合っていたのだ。同年齢ではあったが、仕事で苦悩し、忙殺されかかっていた和彦とは違い、親の残した資産で優雅に遊び暮らしている男だった。 生まれ育ちがいいという点では、和彦と共通したものを持っていたが、話を聞く限り、家庭環境は雲泥の差があった。それでも不思議と気は合い、遊び相

  • 血と束縛と   第15話(25)

     リビングのテーブルには、真っ赤なリボンが結ばれた箱が置いてあった。どうやら、クリスマスプレゼントらしい。 一度はテーブルの前を素通りして、コートとマフラーを置いてこようかとも思った和彦だが、コロンの残り香に搦め捕られたように足が止まり、結局、テーブルに引き返す。「……開けるのが怖いな」 じっと箱を見下ろしながら、ぼそりと呟く。 プレゼントの贈り主は、箱の上にしっかりとカードを残していた。『先生へ』という短い一言と、贈り主である男の名が記されている。 長嶺組組長という物騒すぎる肩書きを持ったサンタクロ

    last updateآخر تحديث : 2026-03-31
  • 血と束縛と   第14話(7)

     それでも今は、優しい錯覚に浸っていたい。 三田村に促され、サンドイッチを手に取る。和彦が眠っている間に、近くのファストフード店まで三田村が買いに行ってくれたものだ。具がたっぷりの大きなサンドイッチとスープは、和彦の普段の朝食としては十分すぎる量だ。「昼まで一緒にいられるんだろ?」 サンドイッチを頬張る合間に問いかけると、和彦を安心させるように三田村は目元を和らげる。「ああ。もうそんなに時間はないが、先生の行きたいところがあればつき合う」「別に今日、どうしても行きたいってところは……ないな。あんたこそ

    last updateآخر تحديث : 2026-03-30
  • 血と束縛と   第14話(29)

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    last updateآخر تحديث : 2026-03-30
  • 血と束縛と   第14話(39)

    「呆れた。そんなことまで調べたのか」「大事なオンナのことは、なんでも知りたい性質なんだ」 そう言いながら賢吾の手が柔らかな膨らみにかかり、残酷なほど優しい手つきで揉みしだかれる。たまらず甲高い嬌声を上げた和彦は、両足を開いたまま仰け反る。腰が震えるほどの強烈な快感だった。「捜さないでくれと先生が言い張ったら、佐伯家は引き下がると思うか?」「あの家の人間は……、ぼくの意見になんて耳を貸さない。ぼくを、好きに扱える人形ぐらいに、思っている……」「憎まれ口を叩くくせに、いやらしく

    last updateآخر تحديث : 2026-03-30
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