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第12話(31)

مؤلف: 北川とも
last update تاريخ النشر: 2026-01-13 14:00:02

 ふんぞり返るように足を組んだ鷹津に、さらに肩を抱き寄せられる。油断ならない男の手は、和彦が着ている大きめのセーターの下に入り込んできた。

「俺は昔、ある組から当てがわれた女と寝ている最中に、組員に踏み込まれたことがある」

 和彦は思わず、鷹津の横顔をまじまじと見つめてしまう。悪徳刑事だとわかってはいるのだが、こうして本人の口から聞かされると、やはり得体の知れなさを感じる。

「……ヤクザに踏み込まれるのは経験済みということか」

「美人局というやつだな。組員の女に手を出したということで、俺に因縁をつける気だったらしい。が、盛り上がっている最中を邪魔されて、俺は機嫌が悪かった。それで――どうしたと思う?」

 ニヤリと笑いかけてきた鷹津の手に、素肌の脇腹を撫でられる。嫌な予感を感じた和彦は、答える気がないと顔を背けたが、かまわず鷹津は耳元に唇を寄せてきて、嬉々とした口調で言った。

「ヤクザが見ている中、女の口に銃口を突っ込んで、最後までヤッたんだ。あのときの女の締まりはなかなかだった」

「――下衆」

「他の
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  • 血と束縛と   第33話(13)

    「浴衣が擦れても気になるんだ。だから、おとなしく横になっていたというのに、父子揃って――」「海で泳いで日焼けか……。優雅でけっこうなことだ。俺たちはこの暑い中、ダークスーツで汗だくになっていたというのに」 バリトンで紡がれる皮肉は、なかなか痛烈だ。おかげで眠気がいくらかマシになり、しっかりと目を開けることができる。「……そんな皮肉を言われるぐらいなら、ぼくはマンションで一人、のんびりと過ごしたかった。だいたい、誰のせいで、せっかくの連休に振り回されることになったと思うんだ」 賢吾と千尋は、それぞれ互いの名を出した。 和彦は大きく息を吐き出すと、体に回された千尋の腕を押し退け、緩慢な動作で体を起こす。賢吾がすかさず手を差し出してきたが、あえて無視したうえで、たっぷり恨みがこもった視線を向ける。「ぼくだけ別の部屋を取ってくれてもよかったのに。知っているんだからな。あんたの名前で、別の部屋を取っていることを」 賢吾がちらりと苦笑を浮かべる。「何かあったときのためだ。まさか、長嶺組の組長と跡目が同じ部屋にいるなんて、うちの者以外に知られるわけにはいかねーからな」「だったら……、ぼくは今から、その部屋に移動する。ここだと落ち着いて寝られない」「――素直に行かせると思う?」 無邪気な口調で、悪魔のようなことを言ったのは、千尋だ。和彦が露骨に顔をしかめると、賢吾がおかしそうに声を洩らして笑う。叩き起こされて不機嫌な和彦とは対照的に、長嶺父子は機嫌がよさそうだ。 賢吾が寝乱れた髪を掻き上げてきて、千尋は背後から首筋に顔を寄せてくる。大きな獣にじゃれつかれているような気分を味わいながら、和彦は仕方なくこの状況を受け入れる。法要を終え、賢吾も千尋もようやく気を緩められているのだろうと思うと、本気で抵抗するのも気が引けた。「本当に肌が赤くなってるな。痛そうだ」 和彦の腕を取り、賢吾が浴衣の袖を捲り上げる。「痛そう、じゃない。痛いんだ」 てのひらでそっと腕を撫でられて、その手つきの優しさに思わず口元を緩める。つら

  • 血と束縛と   第33話(12)

     そう答えたのは三田村だ。さきほど見せた笑顔はすでになく、和彦を護衛するための緊張感で引き締まっていた。中嶋はどうするのかと、ちらりと視線を向ける。「君は?」「先生の遊び相手を務めたので、今日のところはお役御免ではありますが、長嶺組長にご挨拶をしておきたいので、店までご一緒させてもらいます」 こういうのをアピール上手というのだなと、和彦は素直に感心した。 店まで近いということなので、歩いて行くことにする。暑いうえに疲れているのだから車で、と三田村には言われたが、初めて訪れた場所を、少しでもいいから自分の足で歩いてみたいという好奇心には勝てない。「まあ、疲れついでだ」 話がまとまり、さっそく三人で宿を出る。このとき三田村は鋭い視線を周囲に向け、中嶋ですら同じ行動を取る。 自分のわがままのせいで申し訳ないなと思っていると、三田村と目が合う。次の瞬間、ふっと眼差しが和らいだ。三田村の言いたいことは、それだけで伝わってきた。 土産物屋が並ぶ短い通りを抜け、道路沿いに十分ほど歩いたところで、三田村が前方を指さす。ハンカチで額の汗を拭いながら和彦が見たのは、店らしき建物と、見覚えのあるいかつい車の一団が駐車場に停まっている光景だった。 店の前には組員が立っており、和彦たちに気づいて一礼する。三田村が声をかけ、少し前に賢吾たちが到着したということなので、時間としてはちょうどよかったようだ。 貸切となっている店の奥の座敷へと通されると、上座についた賢吾が唇だけの薄い笑みを向けてきた。さすがに寛いだ様子でジャケットを脱いでおり、ネクタイも緩めている。どうやら法要は問題なく終了したようだ。「さあ先生、どうぞ」 そう言って組員に、上座に近い席を案内されそうになる。 正直和彦は、席次がはっきりわかる場は苦手だ。よほど形式張った行事であれば指示に従うところだが、身内だけの食事会であれば多少の意見を通せる。賢吾や千尋の側に座るのは遠慮して、一番下座についた。 中嶋はさっそく賢吾の側に行き、何事か言って頭を下げている。堂に入った所作は、いかにも外見は普通の青年のように見えても、筋者のそれだ。賢吾は鷹揚な態度で応じ、二言、三言

  • 血と束縛と   第33話(11)

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  • 血と束縛と   第33話(10)

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  • 血と束縛と   第33話(9)

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  • 血と束縛と   第33話(8)

    **** 海だ、と和彦は心の中で呟く。 ウィンドーに顔を寄せ、ようやく視界に現れた景色にじっと見入る。スモークが貼られているため、くっきりと色彩鮮やかというわけにもいかず、それを不満に感じた和彦は誰にともなく問いかけた。「……窓、開けていいか?」 数秒の沈黙のあと、助手席に座る組員が答えた。「少しだけでしたら」 いかつい車が連なって走行しているのに、物騒なことを考える人間はそうそういないだろうと思いながら、和彦はありがたくウィンドーを少しだけ開ける。 冷房がよく効いた車内に、ムッとするような熱気が吹き込んでくるが、それでも和彦にとっては心地いい。「潮の匂いだ……」 そう呟いたのは、和彦の隣に座っている千尋だ。車での長時間の移動は、気心が知れた相手と同乗したいという密かな和彦の希望は、和彦と同乗したいという千尋のわがままによって叶えられた。前列に座るのは長嶺組の組員だ。「海に来たって感じだよなー。あー、みんな楽しそう」 砂浜には海水浴を楽しむ人たちの姿があり、千尋の言葉通り、確かに楽しそうだ。「先生、ジムのプールではよく泳いでいたみたいだけど、海に泳ぎに行ったりしなかったの?」「海ではあまり泳いだことがないな。医者になってからやっと、海外に遊びに行ったときに――」 無防備に思い出話をしようとした和彦だが、ここでハッとする。これは千尋にしてはいけない類の話だと気づいたからだ。 和彦は一時期、外傷外科医として救命救急の現場にいたことがある。和彦が一番、肉体的にも精神的にも疲れ果てていた時期でもあり、この仕事に向いていないと、嫌というほど痛感もしていた。 そのため転科を考え始めた頃、ある男とつき合っていたのだ。同年齢ではあったが、仕事で苦悩し、忙殺されかかっていた和彦とは違い、親の残した資産で優雅に遊び暮らしている男だった。 生まれ育ちがいいという点では、和彦と共通したものを持っていたが、話を聞く限り、家庭環境は雲泥の差があった。それでも不思議と気は合い、遊び相

  • 血と束縛と   第12話(27)

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    last updateآخر تحديث : 2026-03-28
  • 血と束縛と   第12話(18)

     頭を上げさせられた和彦は、賢吾に引っ張り起こされ、向き合う形となって抱き締められる。その背後で千尋が身じろぐ気配と衣擦れの音を聞いた。「俺の息子に対しては、先生は徹底して甘いな。俺が妬けるほどだ」 賢吾の肩に額を押し当て、息を喘がせていた和彦は、その言葉を聞いて顔を上げる。楽しげに見える賢吾だが、大蛇を潜ませた目はじっとりとした熱を孕んでいる。この男も興奮しているのだ。 今朝まで、別の男に抱かれていた和彦の体に触れながら、賢吾は何を思っているのか。 想像の余地はあるが、深い闇を覗き込むような行為に思え、怖かった。 ただ、和彦に

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  • 血と束縛と   第12話(32)

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    last updateآخر تحديث : 2026-03-28
  • 血と束縛と   第11話(8)

    「なるほど。先生のきれいな指が、他の男の体を這い回るのかと思うと、少しばかりムカつくな」「変な言い方をするなっ……。用が済んだんなら、ぼくはこれで帰るからな」 立ち上がろうとした和彦だが、すかさず手首を掴まれて引っ張られ、バランスを崩して賢吾の胸元に倒れ込む。そのまましっかりと両腕で抱き締められた。「先生への本題はこれからだ」 嫌な予感がした和彦は、露骨に顔をしかめて見せる。すると賢吾は表情を和らげてから、耳元に唇を寄せてきた。「頼みたいことがある」「……聞きた

    last updateآخر تحديث : 2026-03-27
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