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第16話(15)

Author: 北川とも
last update publish date: 2026-02-12 20:00:59

「先生が」

「……着方がわからない」

「とりあえず羽織ってみたらいい」

 和彦は困惑しつつ、賢吾の着物姿を眺める。大柄な賢吾のために仕立てた着物を自分が着た姿を想像してしまった。すると、和彦の心配を察したのか、短く笑った賢吾が衣装ケースに歩み寄った。

「先生にちょうどよさそうな着物がある。この家じゃ、もう誰も袖を通さないものだ」

 そう言って賢吾が取り出したのは、明らかに女性ものの着物だった。長襦袢の鮮やかな桜色を目にして、和彦は頬が熱くなってくる。

「それ、女物じゃないかっ……」

「ただの女物じゃないぞ。別れた千尋の母親が置いていったものだ。俺が買ってやったものは、なんでも気に食わなかったらしい。情を交わす〈女〉ができたらやろうと思っていたんだが、その前に、大事で可愛い〈オンナ〉ができたからな」

 怒るべきなのかもしれないが、正直なところ、反応のしようがない。賢吾の口調があまりに淡々としているからだ。別れた妻の着物を残しているからといって、そこ
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