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第25話(4)

Author: 北川とも
last update publish date: 2026-04-13 11:00:39

 耳に注ぎ込むように囁いた南郷に、耳朶に歯を立てられる。このままでは食い千切られると、本気で危機感を覚えた和彦は我に返り、南郷の体を必死に押し戻す。

 何か言われる前に、平手で思いきり頬を打っていた。

 車内に鋭い音が響き、次に息苦しいほどの沈黙が訪れる。

 和彦はシートに座り直すと、激しい動揺とは裏腹に、冷然とした声で告げた。

「……あなたを殴ったことをぼくに謝罪させたいなら、長嶺組長に話を通してください。そうすれば、土下座だろうが、あなたの気が済むように謝罪します」

 南郷は凶悪な笑みを浮かべた。

「そんな野暮はしない。これは、俺とあんたとの間でケリをつけることだ。そして――」

 突然頭を下げた南郷が発したのは、すまなかった、という一言だった。呆気に取られた和彦は、すぐには声が出せず、ただ目を丸くする。

「これでケリはついた。だろ?」

 頭を上げた南郷が悪びれた様子もなく同意を求めてくる。車内というごく狭いスペースでのトラブルを外に持ち出し、組の面子というレベ
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