LOGIN汗で額に張り付いた髪を中嶋に掻き上げられ、ようやく我に返る。和彦は息を喘がせながら、なんとか言葉を紡ぐ。
「……すまない。ぼくだけ――」「まだ、これからですよ。先生。俺も、三田村さんも」 どういうことかと、和彦が頭を持ち上げようとしたとき、背後で三田村の気配が動く。「うっ」 無意識にきつく締め付けていた和彦の内奥から、指が引き抜かれる。だがすぐに、今度は熱く硬いものが押し当てられ、余裕なく内奥の入り口をこじ開け――。「んあぁっ」 苦痛を覚えるほど逞しいものが内奥に押し入ってきて、和彦は思わず体を起こそうとしたが、中嶋にしっかりと抱き締められているため、動くことが叶わない。その間にも、容赦なく内奥は押し広げられ、熱いものを捻じ込まれていく。 もちろん、それがなんであるか、すぐに和彦は察する。頭は混乱し、戸惑ってはいるが、〈オトコ〉の感触をよく覚えている体は、瞬く間に馴染み、受け入れてしまう。「あっ、あっ、あっ……あぅっ」** 和彦はTシャツを着込むと、濡れた髪を掻き上げてから大きく息を吐き出す。そして、ドアを開けたままのバスルームにちらりと視線を向けた。 バスタブの縁にあごをのせた千尋が、目が合った途端に笑いかけてくる。締まりのない顔だが、これが長嶺の男だと思うと、可愛いと感じられるから不思議だ。いや、単に和彦が、千尋に対して甘いだけかもしれない。「先生、もっとゆっくり湯に浸かればいいのに」「……お前がまとわりついてくるから、湯あたりしそうになるんだ」「俺が介抱するけど?」「そんなこと言って、何されるかわかったものじゃないから、遠慮する」 連休の間、どれだけ千尋に我慢を強いていたのか、和彦は今日、身をもって知った気がする。とにかく普段以上に、千尋のスキンシップが激しい。ベッドに移動して、さんざん快感を貪り合ったあとも、しばらく離してもらえなかったうえに、風呂まで一緒に入ることになったぐらいだ。 この様子だと、今夜は泊まっていくつもりだろう。長嶺の男たちの〈オンナ〉である和彦には、そのことで文句を言うつもりはないが、多少心配にもなってくるのだ。自分は、長嶺組の跡目を甘やかしすぎているのではないか、と。「夕飯は外に食べに行くんだろ? まだ時間はあるから、お前はのんびり湯に浸かっていていいぞ。その間ぼくは――」 寝室の片付けをする、という言葉を寸前のところで呑み込む。首を傾げた千尋を一瞥して、逃げるように脱衣所を出た。 和彦は、情交の痕跡が生々しく残る寝室に入ると、シーツを剥ぎ取るだけではなく、汚れた床も手早く掃除する。千尋が場所を選ばず行為に及んだせいで、と責めるつもりはない。結局のところ、受け入れてしまった和彦も同罪なのだ。 寝室の空気を入れ替えるため、窓を開ける。入り込んできた風が、風呂上がりなのと、それ以外の理由で火照った体には気持ちいい。 すっかり見慣れたマンションから見渡せる街中の景色を眺めていると、ほんの数日前まで、自然に囲まれた別荘でのんびり過ごしていたことが、ずいぶん懐かしく感じられる。そのくせ、ともに過ごした三田村のぬくもりや感触などは、今でも鮮やかに思い返せる
背後から抱き締められ、うなじに唇を押し当てられる。すでに体が熱くなっていた和彦は、たったそれだけの刺激でも、吐息を洩らしてしまう。「千尋、そろそろベッドに――」「まだダメ」「ダメって、お前……」 千尋の腕が移動し、今度は腰を抱かれる。尻に押し付けられたのは、生々しい欲望だった。無駄だと思いつつ身を捩った和彦だが、やや強引に腰を掴まれて、尻を突き出したような姿勢を取らされると、もう抵抗はできない。「……俺やっぱり、性癖に問題あるかなー。いかにも上品な先生に、こういう格好させると、それだけで感じる」 そんなことを言いながら、千尋が内奥の入り口に熱の塊を押し当ててくる。指でわずかに解されただけの内奥が、凶暴な欲望でこじ開けられるのだ。背後から押し寄せてくる苦しさに和彦は呻き声を洩らし、必死にガラスに両手を突く。 腰を掴む千尋の手の力に容赦はないが、腰の動きそのものは慎重だ。和彦は、こういう形での交わりに少しばかり腹立たしさを感じはするものの、千尋の気遣いがわかるだけに、怒鳴ることもできない。大きな犬っころにじゃれつかれ、のしかかられているようにも感じられ、苦しさに喘ぎながらも、つい唇に笑みを刻む。「バカ千尋……」 小さな声で呟くと、和彦の腰を抱え込むようにして、千尋が繋がりを深くする。肩の辺りに、熱く荒い息遣いを感じた。「何か言った、先生?」 地獄耳、と今度は心の中で呟いてから、和彦は首を横に振る。すると、千尋の片手が両足の間に入り込み、欲望を掴まれた。「もう少し我慢してね。気持ちよくしてあげるから」 千尋に緩く腰を突き上げられるたびに、欲望を扱かれる。最初はただ、内奥を犯される苦しさに声を上げていた和彦だが、次第にそれ以外の感覚が湧き起こり、上げる声が艶を帯び始める。「うっ、あぁっ、はっ……」 頬を押し当てたガラスが、喘ぐたびに白く曇る。和彦の変化にとっくに気づいていたのだろう。千尋が大きく腰を動かし、内奥深くに欲望を突き込まれる。その瞬間、和彦の全身を強烈な疼きが駆け抜けた
「いいよ。ずっと先生に責任取ってもらうから」 それは困る、と思った和彦だが、千尋に性急に唇を塞がれ、言葉が口をついて出ることはなかった。 千尋の汗ばんだ両てのひらが脇腹から胸元へと這い上がり、すぐに指先に左右の突起を探り当てられ、押し潰すように刺激される。体を押し付けてくる千尋の情熱に圧倒されながら、和彦ものろのろと手を動かし、千尋の体をTシャツの上からまさぐる。いつの間にか逞しさを増した若い体だが、和彦が愛しているしなやかさは少しも損なわれていない。 Tシャツの下に手を潜り込ませ、熱く滑らかな肌を撫で回す。この肌に刺青が彫られるのかと考えると、正直惜しい。だが同時に、千尋の肌に彫られた刺青を撫で回す瞬間を想像すると、和彦はひどく高ぶるのだ。「先生、興奮してる」 和彦の両足の間を、パンツの上から押さえつけた千尋が嬉しそうに洩らす。思わず手を押し退けようとしたが、そのときにはすでに、ベルトを外されているところだった。「千尋、立ったままでっ……」「どうせ俺、若くして妙な性癖の持ち主だし」「そんなことで開き直るな。すぐそこにベッドがあるだろ」「見えない。――先生しか見えない」 真顔で千尋に囁かれ、感じた気恥ずかしさを誤魔化すように和彦は顔をしかめる。「……何言ってるんだ、お前は」「つまり、たっぷり俺と気持ちよくなろうってこと」 パンツの前を寛げられ、下着ごと引き下ろされる。ポロシャツすらも脱がされながら、無駄だと思いながら和彦は一応忠告しておく。「シャワーも浴びてないから、汗くさいぞ」「先生の汗の匂い、大好き」 半ば予測できた千尋の返答に、和彦はもう苦笑を洩らすしかない。身につけていたものをすべて脱がされてしまうと、羞恥に身じろぐ間もなく千尋に抱き締められた。 千尋のてのひらが、うなじから背、腰から尻へと移動する。たったそれだけで、鳥肌が立ちそうな疼きが背筋を駆け抜け、和彦は小さく声を洩らしていた。顔を覗き込んできた千尋と唇を啄ばみ合っていると、もう片方のてのひらが胸元をくすぐってくる。 期待で硬く
「もしかして、レッスンのせい?」「ああ。普段ジムでやっている運動とは、まったく違う筋肉を使った気がする。初めてで緊張していたから、体のあちこちに無駄な力が入ってたんだろうな」 だから、昼間からゆっくりと風呂に浸かり、しっかりと体を解そうと考えたのだ。 ちなみに、日曜日の午前中から千尋に連れて行かれた先は、ゴルフスクールだ。 本気で和彦をゴルフコースに連れ出すつもりらしく、そのためにはまず基礎を、ということで、勝手に体験レッスンを申し込んでいたのだ。しかも、レッスンプロによるマンツーマンの指導が受けられるという特別コースを。ゴルフ道具一式も一通り揃えてもらったため、いまさら嫌だとも言えず、和彦はやむなく人生で初のゴルフを経験したというわけだ。 和彦が慣れないクラブの握り方に四苦八苦している頃、千尋は別のレッスンプロから指導を受けていたそうだ。千尋もゴルフを習い始めたばかりだということなので、コースに出ると案外同じようなレベル同士、楽しめるかもしれない。「……まあ、いつになるやらという話だが」 ぼそりと和彦が呟くと、何事かという顔で千尋が前に回り込んでくる。そんな千尋の頬を、やや手荒に撫でた。「お前も、朝から動き回って疲れただろ。早く本宅に戻れ」「全然。体力あり余ってるけど」「……ぼくとお前の年齢差と体力差を考えろ」 千尋を押し退けて寝室に入る。「ぼくはゆっくりと風呂に入ったら、昼寝する。疲れた」「先生、冷たい……」 芝居がかったように恨みがましい声が背後から聞こえてきたかと思うと、いきなり抱きつかれた。驚いた和彦は声を上げ、体を捻ろうとする。「千尋っ」「――連休の間、ずっと先生に会えなかった俺に、そんなに冷たいこと言うわけ?」 突然耳元で低く囁かれ、和彦はドキリとする。千尋に対しての、後ろめたさの表れとも言えた。追い討ちをかけるように、拗ねた子供のような口調で千尋が続ける。「連休の半分以上を総和会の別荘で、三田村と一緒に過ごして、帰ってきたらきたで、今度は組関係の仕事
リビングに足を踏み入れた千尋は、きょろきょろと辺りを見回してから、拍子抜けしたようにこう言った。「先生、部屋の改装工事したんじゃなかったの?」 千尋が何を疑問に感じたのか、和彦にはよくわかった。一見して、どこも変わってないように見えるのだ。実は和彦も、総和会の別荘から戻って部屋を見たときは、正直少しだけ拍子抜けした。賢吾から概要は聞いていたが、要塞のようになっているのではないかと、戦々恐々としていたのだ。 和彦がダイニングに移動すると、人懐こい犬っころのように千尋もあとをついてくる。そしてやはり、不思議そうに辺りに視線を向ける。「……ここも、変わってないように見える……」 そう呟いた千尋がふらふらとダイニングを出て行き、他の部屋へと向かう。部屋の改装について、賢吾から詳しいことは聞かされていないのだなと思いながら、ジャケットを脱いだ和彦は冷蔵庫からオレンジジュースの紙パックを取り出し、グラスに注ぐ。とにかく喉が渇いていた。 一息にグラスを空にして、ほっと息を吐き出す。酸味が強めのオレンジジュースがやけに甘く感じられる。 和彦はシンクにグラスを置くと、大きく腕を回してから、軽く腰を捻ってみる。普段使わない筋肉を使ったせいか、肩や背にかけて少し違和感がある。もしかすると明日には筋肉痛が出るかもしれない。「まったく、どうしてあの父子は、事前に人の予定を聞くということができないんだ……」 小さくぼやいた和彦は、千尋の姿を探してあちこちの部屋を覗く。どこにいるのかと思えば、バルコニーに出ていた。 千尋は、厚みのある窓ガラスを軽く叩いて、目を輝かせていた。「このガラス、本宅に入れてあるのと厚みが同じだよ、先生」「嬉しそうに言うな。本宅と同じぐらい、ここも物騒な場所になったのかと、気が滅入りそうになる」 そう応じて和彦は窓に歩み寄る。開けた窓から吹き込む風はいくらか涼しいが、これに陽射しの強さが加わると、すでにもう春とは呼べない季節だと痛感させられる。 すぐに蒸し暑くなり、湿気にまとわりつかれる梅雨がやってくるだろう。その鬱
汗で額に張り付いた髪を中嶋に掻き上げられ、ようやく我に返る。和彦は息を喘がせながら、なんとか言葉を紡ぐ。「……すまない。ぼくだけ――」「まだ、これからですよ。先生。俺も、三田村さんも」 どういうことかと、和彦が頭を持ち上げようとしたとき、背後で三田村の気配が動く。「うっ」 無意識にきつく締め付けていた和彦の内奥から、指が引き抜かれる。だがすぐに、今度は熱く硬いものが押し当てられ、余裕なく内奥の入り口をこじ開け――。「んあぁっ」 苦痛を覚えるほど逞しいものが内奥に押し入ってきて、和彦は思わず体を起こそうとしたが、中嶋にしっかりと抱き締められているため、動くことが叶わない。その間にも、容赦なく内奥は押し広げられ、熱いものを捻じ込まれていく。 もちろん、それがなんであるか、すぐに和彦は察する。頭は混乱し、戸惑ってはいるが、〈オトコ〉の感触をよく覚えている体は、瞬く間に馴染み、受け入れてしまう。「あっ、あっ、あっ……あぅっ」 大きな手に尻を掴まれ、一度だけ乱暴に突き上げられる。その拍子に和彦は、中嶋とまだ繋がっていることを強く認識させられる。精を放ったばかりの和彦のものを、中嶋の内奥が淫らに蠢きながら締め上げてきたのだ。 感じる疼きに、たまらず和彦は身震いする。そんな和彦を労わるように、中嶋は肩先を撫で、三田村は腰を撫でる。「――先生」 中嶋に呼ばれて顔を上げると、優しく唇を啄ばまれる。そのまま舌先を触れ合わせ、互いの唇と舌を吸い合う。タイミングを計っていたのか、三田村が内奥で律動を刻み始め、和彦の体は前後に揺さぶられ、同時に、中嶋の内奥を突き上げるようになる。 そんな和彦の姿をどう見ているのか、三田村は何も言わない。ただ、愛しげに和彦の体を撫で回し、繋がっている部分に指を這わせてくる。振り返って確認することもできず、和彦は中嶋とともに喘ぎながら、口づけを交わすしかない。「……気持ちいいんですね、先生。また、大きくなってきましたよ」 中嶋に囁かれ、羞恥で身を焼かれそうになる。それでも、やっとの思
唇を引き結んだ和彦を、賢吾が意地の悪い笑みを浮かべてからかってきた。「なんだ、フォローはなしか、先生。やっぱり俺は腹黒いか?」「人に聞かなくても、自分でわかっているだろっ」 機嫌を損ねたふりをして、さりげなく賢吾から離れようとしたが、それを許すほど甘い男ではない。反対に、さらに引き寄せられた挙げ句、あごを掴まれて唇を塞がれた。熱い舌に無遠慮に唇をこじ開けられ、口腔に押し込まれる。和彦は一瞬だけ体を強張らせたが、すぐに力を抜き、身を委ねた。 たっぷり口腔の粘膜を舐め回され、引き出された舌を吸われたかと思うと、甘噛みされる。身震いしたくなるよ
「この人は、組とは一切関係ない」 和彦は、男にきつい眼差しを向ける。男の言葉には悪意が満ちており、それが和彦を不快にする。言葉だけではない。所作の一つ一つが、何もかもが生理的に受け付けられない。 男はスッと目を細め、和彦を見据えてくる。冷たく凍りつくような目だった。そのくせ、粘つき、ぎらつくようなものが微かに覗き見えたりもしている。どこか賢吾の持つ冷たさと似ているが、あの男の持つ冷たさは不純物が一切ない。だが、目の前に立つ男は、さまざまなものが混じり合い、濁っている。「――善良な一般人を巻き込みたくなかったら、これから俺と二人きりで話をしろ。お前にはい
患者の容態が気になるが、焦りを読み取られないよう、和彦は必死に強気を装う。すると鷹津は唇を歪めた。「――今日は、肝が据わった目をしてるな。ヤクザのオンナらしくない、ムカつく目だ」「なんとでも言ってくれ」 ここで鷹津が、脱ぎかけていた靴を履き直す。そして和彦に笑いかけてきた。「俺の用は、お前に携帯電話を届けにきただけだからな。友人同士、楽しくお茶を飲んでいたところを邪魔して悪かった」「いいえ。ご親切にありがとうございました」 たっぷりの皮肉を込めた会話を交わし、このまま鷹津は玄関を出ていくかと思ったが、ふと何かを思い
柔らかくいい香りではあるが、特徴的ではないと思っていた秦のコロンだが、時間とともに香りが変化したらしい。特徴がないどころか、甘いのに刺激のある香りは、官能的ともいえた。不思議なもので、香りの変化とともに、秦自身の印象も一変したように感じた。 たとえば、さりげなく和彦の肩に回された腕の力強さや、熱さだ。まるで自分が、秦に接客されている女性客になったように、その感触を意識してしまう。 空になったグラスにまたワインが注がれ、和彦はそれもすぐに飲み干した。 大きく息を吐き出して、辺りを見回す。時間を意識させないようにという配慮なのか、この店は目立つところに時







