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第9話(1)

작가: 北川とも
last update 게시일: 2025-12-12 17:00:39

 長嶺の本宅の中庭は、相変わらず手入れが行き届いていた。落ち葉の一枚も許さないかのように清められ、人が寛ぐために足を踏み込むことは、本来許されていないのではないかと思うほどだ。

 しかし、一度でもこの中庭で時間を過ごすと、本宅のどこよりも寛げる場所だと思えてくる。

 テーブルについた和彦はコーヒーを一口飲むと、木陰を作る木を見上げる。季節が夏から秋へと移りつつあるのに、相変わらず木陰に避難しなくてはならないほど陽射しは強い。ただ、ときおり吹く風だけは秋を感じさせる。

 涼しい風がさらりと髪を揺らしていく。和彦は強張った息を吐き出すと、緊張のため味もわからなくなっているコーヒーをもう一口飲む。なんとか落ち着きを保っているが、正直なところ、中庭を歩き回って気を紛らわせたいところだ。

 審判が下されるのを待つ罪人としては、薄暗い部屋に押し込まれるほうが気持ちは楽だった。そうすれば、自分がどんな立場に置かれているのか理解しやすい。それが、こんな居心地いい中庭でもてなされると、かえって怖い。

 なんといっても、審判を下すのは、ヤクザの組長な
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  • 血と束縛と   第20話(26)

    「ダイニングに、チョコレートと一緒に、あんたへの酒を置いてある。……まだ誕生日プレゼントはもらってないけど、何か贈ってくれるらしいから、先にお返しをしておく」「はっきりと、バレンタインだからだ、と言ったらどうだ」「……好きに解釈してくれ」 ため息交じりに洩らした和彦は布団を引き上げ、口元を隠す。立ち上がった賢吾が客間を出ていくとき、こう言い残した。「用があれば、いつでも内線を鳴らせ。とにかく先生は、熱が下がるまでおとなしく寝てろ」 振り返った賢吾の表情は、怖いほど真剣だった。自分でも不思議なほど、そのことが和彦には嬉しかった。本気で心配してくれているとわかったからだ。** 夜が更けるにつれ、本宅は息を潜めるように静かになっていく。ただし、完全に人の気配が絶えることはない。 夜勤として常に誰かが詰め所にいて、外部からの連絡を受けているし、深夜になって帰宅してくる者もいる。そのため寝ている人間を起こす必要がなく、何かあれば詰め所にいる人間を気兼ねなく呼びつけてくれと、お粥を運んできた組員に言われた。 そのお粥を苦労して少し食べたあとから、和彦の意識は曖昧だ。うつらうつらとしていると、組員に話しかけられ、生返事を繰り返しているうちに着替えさせられ、薬を飲まされた。ときおり汗も拭ってもらった記憶もある。 わざわざ内線で人を呼ぶまでもなく、まさに痒いところに手が届くような甲斐甲斐しさだ。 先生にはいつも組員の面倒をみてもらっているから、と言われたような気がするが、もしかすると夢かもしれない。 熱を出して体はつらいが、人から世話を焼かれる状況は和彦にとっては新鮮で、同時に、心地よかった。 ヤクザの組長の本宅で、人恋しさを癒されるというのも妙な話だが、とにかく和彦は救われていた。 実家を出て一人暮らしを始めてから、病気で寝込んだときの自分はどうしていただろうかと、朦朧とした意識で思い出しているうちに、何度目かの浅い眠りに陥る。 ふと、傍らに人の気配を感じた。組員が様子をうかがいに来てくれたのだと思い、目を開くことすらし

  • 血と束縛と   第20話(25)

     無理やり笑みをつくって歩き出そうとしたが、千尋に腕を掴まれ引き止められる。人目があるというのに間近に顔を寄せられ、和彦のほうが動揺してしまう。「千尋、本当に何もないんだ」「……先生、まだ顔が赤いよ。それに、目の焦点がおかしい」 そこまで言われてやっと和彦は、自分の体調の悪さが疲労ではなく、病気からくるものだと知った。足元が覚束ないのは、熱が高いせいだ。 自分の額に手をやったが、体温はよくわからない。額だけでなく、てのひらまで熱くなっていた。急に体に力が入らなくなり、その場に座り込みそうになったが、寸前のところで千尋に支えられる。「先生、本宅に帰ろう」 顔を上げるのもつらくて、和彦はうつむいたまま頷いた。** 喉が痛くて小さく咳き込むと、それだけで頭を揺さぶられるような眩暈に襲われる。一度意識してしまうと、体がどんどん熱に侵食されていくようで、横になっていてもだるい。 和彦は客間の天井を見上げ、ゆっくりと瞬きを繰り返す。体はつらいが、精神的には奇妙なほど安らいでいた。 耳を澄ますと、廊下を歩く足音が聞こえてくる。それに、話し声も。人の気配を感じるおかげで、心細さとは無縁でいられる。それが安らぎに繋がるのだ。 長嶺の本宅に連れて来られた和彦は、そのまま客間に通された。事前に千尋が連絡を入れておいたため、部屋は暖められ、布団も敷かれていた。浴衣に着替えて和彦が横になる頃には、加湿器まで運び込まれたぐらいだ。 和彦にはもう、自分の症状が何からくるものかわかっている。疲労が溜まってきたところに風邪を引き、自分でも驚くような高熱が出たのだ。風邪を予期させる症状にいくつか心当たりがあるが、寝込んでしまった今となっては、遅いとしかいいようがない。 千尋には悪いことをしたと思う。時間を作ってもらったのに、結局何も楽しめないまま、本宅に戻ってきたのだ。和彦に付き添っていると言っていたが、自分に代わって組員が諭してくれ、なんとか客間を出ていってもらった。 苦労して寝返りをうった和彦は、タオルに包まれた氷枕に頬を押し当てる。全身が燃えそうに熱いくせに、ゾクゾクと寒気

  • 血と束縛と   第20話(24)

     車に乗り込むと、待ち合わせ場所を告げ、傍らに置いた袋に目を向ける。念のため、昨日デパートで買ったものはすべて持ち歩いていた。今日中にすべて渡せれば上出来だが、残念なことに、和彦と関係の深い男たちは皆忙しい。 これから会う千尋にしても、決して暇を持て余せる立場ではないのだ。もしかすると、和彦と夕食をともにするために時間を作ったのかもしれない。 夕食後、長嶺の本宅に少し顔を出そうなどと考えているうちに、車が車道脇に停まる。ちょうど、千尋との待ち合わせ場所であるビルの前で、和彦は車中から外を眺める。 すでに日が落ちかけた街中は、それでなくても人通りが多い。千尋はどこにいるのかと目を凝らしてみれば、待ち合わせらしい人がたむろしているスペースに、やけに人目を惹くスーツ姿の青年が立っていた。それが千尋だとわかり、和彦はそっと目を細める。 外見の若さだけなら、それこそやっとスーツが様になってきた新入社員のようでもあるが、物腰やまとっている雰囲気は、明らかに同年代の青年が持ち得ないものだ。覇気と鋭さ、危うい凶暴性のようなものを秘め、それでいて、強烈なほど魅力的だ。「――先生?」 運転席の組員に呼ばれ、我に返った和彦は袋を手に慌てて車を降りる。帰りは、千尋が乗ってきた車に同乗するか、タクシーで帰るつもりだ。 和彦が歩み寄ると、すぐに気づいた千尋がパッと表情を輝かせる。「それ、チョコ?」 開口一番の千尋の言葉を受け、和彦は袋の一つを手渡す。このとき、注意も忘れない。「往来で、大きな声で『チョコ』と言うな。お前はともかく、言われるぼくが恥ずかしい……」「ベッドの中じゃ大胆なのに、変なところで先生って初心だよね。顔まで赤くして」 和彦は遠慮なく、千尋のよく磨かれた革靴を踏みつける。何が楽しいのか、それでも千尋は楽しそうに笑っている。すこぶる機嫌がよさそうだ。 長嶺組の跡継ぎのくせに、チョコレート一つでこうも喜ばれると、和彦としては照れ臭い反面、嬉しい。「……安上がりだな、お前は」 ぼそりと和彦が呟くと、さらりと千尋に返された。「先生だって

  • 血と束縛と   第20話(23)

    **** バレンタイン当日、男としての面目が立つ程度に、和彦は成果を上げていた。 クリニックのスタッフに、何度かカウンセリングに訪れている患者、そして、エレベーターでときどき一緒になる、クリニックの下の階で働いている女性事務員から、チョコレートをもらったのだ。 前に勤めていたクリニックでは、まるでシステムが出来上がっているように、朝、医局のデスクにチョコレートが素っ気なく置いてあるのが常だった。そのせいか、手渡しされるというのは非常に新鮮で、純粋に和彦は喜んでいた。三田村が言う世俗的なイベントの楽しみ方を、初めて理解したかもしれない。 しかし、無邪気に喜んでいる場合ではない。 この日、最後の患者を見送った和彦はデスクにつき、真剣な顔で考え込む。自分がバレンタインデーを堪能したから、あとは素知らぬ顔をしていい道理はなく、和彦は和彦で、しっかり役目がある。 昨日デパートで買ったものを、日ごろ〈世話〉になっている人間に渡さなくてはならないのだ。あくまで、誕生日を祝ってくれた礼のためであって、男の身でバレンタインデーに積極的にチョコレートを配り歩くわけではない。たまたま、今日なのだ。 近しい男たちに説明したところで、ニヤニヤと笑われるのが目に浮かぶような理由を、和彦は必死に心の中で繰り返す。 やはり、一日ぐらいズラしたほうがいいのではないかと思わなくもないが、それはそれで自意識過剰な気もする。何事もない顔をして、淡々と渡すのが一番無難なのだろう。 時間通りにクリニックを閉めて、他のスタッフとともに掃除を始める。 処置室で器具の数を確認してから、掃除機をかけていたところで、ふと和彦は自分の体の異変を感じた。本当は、今朝マンションを出るときから漠然と違和感はあったのだが、さほど気にかけていなかった。 それが時間とともに無視できなくなり、とうとう――。 掃除機のスイッチを一度切って、大きく息を吐き出す。少し動くのも息が切れるほど、体がだるかった。暖房が効きすぎているのかやけに顔が熱く、なんとなく気分がすっきりしない。首を撫でた和彦は心当たりを考えて、すぐにピンときた。 

  • 血と束縛と   第20話(22)

     和彦に姿を見られたくないというより、和彦の中でまだ覚悟が決まっていないことを見抜いているのだろう。相手の老獪さと狡猾さを思えば、そうであっても不思議ではない。 結局相手は、一言も発することなく部屋を出て行った。ドアが閉まる音を聞いて数分ほど待ってから、和彦はやっと目隠しを取る。慎重に体を起こし、乱れたベッドの様子を目の当たりにして密かに恥じ入りながら、バスローブを拾い上げて着込む。 目隠しをしていた間に世界が一変するわけもなく、なのに和彦自身は、自分を取り巻く世界がなんらかの変化を起こしたように感じていた。〈長嶺の守り神〉と体を繋ぐということは、こういう感覚の積み重ねなのかもしれない。 明日も仕事なので、ここで寝入ってしまうわけにもいかず、バスルームに向かう。激しさとは無縁だが、時間をかけての交わりは、驚くほど和彦の体力を消耗する。しかし、歩けないほどではない。とにかく一刻も早く、休みたかった。 じっくりと体を温めたいのを我慢して、バスルームで簡単に体を洗うと、手早くスーツを身につける。髪は手櫛で整えただけで、鏡を覗く余裕すらなかった。 まるで追い立てられるように部屋のドアを開けた瞬間、和彦は声を上げた。目の前に南郷が立っていたからだ。落ち着いた態度からして、どうやら和彦が出てくるのを待っていたようだ。 南郷は無遠慮に和彦をじろじろと見たあと、指先を軽く動かした。「俺についてきてくれ、先生。オヤジさんから、あんたをしっかり送り届けるよう言われている」 ためらいは覚えたが、南郷を無視するわけにもいかない。先を歩く南郷のあとを、仕方なくついていく。 ホテル前にはすでに車が待機しており、和彦は南郷とともに後部座席に乗り込んだ。 車が走り出しても、シートに体を預けることなく、頑なに外の景色に視線を向け続ける。とてもではないが、ホテルの部屋での濃厚な行為のあとに、平然と正面を向くことはできなかった。南郷のほうを見るなど、論外だ。 しかし南郷は、そんな和彦に容赦なく視線を向けてくる。なぜわかるかというと、ウィンドーに南郷の姿が反射して映っているため、どれだけ嫌でも目に入るのだ。 まるで根競べのように顔を背けていたが、南郷が口元に

  • 血と束縛と   第20話(21)

     相手の手に、発情して熱くなった体をまさぐられていた。それどころか、繋がってひくつく部分を指先でなぞられる。おそらく、しっかり見つめられてもいるだろう。和彦が相手の姿を見られないというのに、相手は和彦の痴態のすべてを目に焼き付けているのだ。「あっ、あっ、んあっ――」 頭の芯が溶けていくような肉の愉悦に、声が抑えられない。和彦の恥知らずな声に刺激を受けたように、緩やかに内奥を突き上げられる。それだけで深い感覚が波のように広がっていた。 背後から貫かれ、しっかりと繋がった姿勢のまま、一度律動は止まる。和彦は大きく荒い呼吸を繰り返しながら、体の中心からじわじわと広がる肉の快感を、より明確なものとして実感していた。 内奥深くに埋め込まれた熱い欲望を、きつく締め付ける。あさましいとわかってはいるが、どうしようもできない。物欲しげな襞と粘膜が勝手に蠢き、欲望に奉仕する。その奉仕に対する褒美のように、さらに愛撫が与えられた。「はっ、あぁっ……」 腰から背にかけて撫で回され、胸元にも触れられる。敏感に凝った胸の突起を摘み上げられると、意識しないまま和彦は腰を揺らす。すかさず、内奥深くで息を潜めていた欲望が動き、強い疼きが背筋を這い上がっていた。「はあっ――、あっ、うくっ……ん」 内奥に受け入れたものと、一つに溶け合ったような感覚を覚えていた。ただ、違和感はあった。 他の男たちと体を重ねながら感じる、荒い息遣いも、貪るような口づけも、濃厚な汗の匂いもない。体を繋いではいるが、体を重ねているわけではないのだ。これは、対等なセックスではない。 相手の存在を体に刻みつけられ、相手好みの快感で調教されているようだ。 胸元を撫でていた手が、みぞおちから腹部を撫でて、両足の間に差し込まれる。和彦は喉を鳴らすと、枕の端を両手で掴んだ。再び反り返り、熱くなって震えるものを優しい手つきで扱かれ、身悶えるほどの快感が腰に広がる。 ここでふいに、繋がりを解かれた。肩を掴まれた和彦は促されるまま、素直に仰向けとなり、両足を抱え上げられる。淫らに喘ぐ内奥を、すぐにまたこじ開けられ、欲望を呑み込まされた。

  • 血と束縛と   第4話(15)

     三田村は、賢吾の命令で今日は別の仕事に就いているということで、和彦は若い組員が運転する車でこのバーにやってきた。  必要ないと答える前に、周囲のテーブルにひっそりと陣取っていた賢吾の護衛たちも立ち上がる。嫌と言ったところで賢吾に聞き入れるはずもなく、仕方なく和彦は従う。  当然のように、和彦が飲んだ分も賢吾が支払いを済ませた。  賢吾は、ホテルのバーで飲むことを好む。長嶺組の縄張りで、組の息がかかった場所で飲むと、生臭い話ばかりになって寛げないらしい。だったら組とは関係ない店で、となるかというと、そうもいかない。万が一の事態に常に備えている護衛の人間が、賢

    last update최신 업데이트 : 2026-03-19
  • 血と束縛と   第4話(1)

     窓を開けると、川を渡ってくる風がすうっと室内に流れ込んでくる。まだ何もない部屋を風が駆け抜け、空気を入れ替える。もっとも、室温はそんなに変わらないだろう。  梅雨明けはまだだというのに、盛夏のような暑さが連日続いており、外の陽射しは強い。たっぷりの熱気を孕んだ風は、ほんの一瞬の爽やかさのあと、ムッとする暑さを運んできた。 「……エアコンの取り付け工事を急がせましょうかね」  背後から声をかけられ、髪を掻き上げて和彦は振り返る。クリニックの内装を任せている設計士だ。今日は工事の具体的な打ち合わせのため、施工業者とともにビルに集まっていた。  ハンカ

    last update최신 업데이트 : 2026-03-19
  • 血と束縛と   第2話(15)

    ** タクシーに乗っている間、二人はまったく会話を交わさなかった。携帯電話に三田村から連絡が入って和彦が出ようとしたときも、無言のまま素早く取り上げられて、電源を切られたぐらいだ。  張り詰めた車中の空気は覚えがあった。長嶺組の人間に拉致されて、わけもわからないまま車に乗せられたときと同じだ。一緒にいるのが千尋とはいえ、和彦はひどく緊張していた。  千尋に限って、手荒なことをするとは思えないが――。  タクシーは、千尋が住むワンルームマンションの前で停まり、支払いを済ませた千尋に促されるまま和彦はタクシーを降りる。

    last update최신 업데이트 : 2026-03-17
  • 血と束縛と   第1話(15)

    ** 自分の車に千尋を乗せて和彦が向かったのは、繁華街の中にある、飲食店ばかりが入った雑居ビルだった。とにかく人目を避け、なおかつ人に紛れ込みたかったのだ。これだけ飲食店があれば、仮に尾行がついていたとしても、二人の姿を容易に見つけ出せないはずだ。  もっとも、千尋と二人きりになった時点でアウトな気もするが、肝心の千尋が和彦から離れないのだから仕方ない。  混み合うエレベーターを途中で降り、階段を使って上がる。入ったのは、個室が使える居酒屋だった。すでに盛り上がっているグループやカップルを横目に、二人は黙り込んだまま個室に案内してもらう

    last update최신 업데이트 : 2026-03-17
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