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第9話(17)

Author: 北川とも
last update Last Updated: 2025-12-15 20:00:22

 ヤクザではない和彦の警戒心の薄さを思えば、仕方ないのかもしれない。それに、今こうして忠告されるのも、三田村なりの理由があるのだ。

 車はファストフード店の駐車場に入り、エンジンが切られる。三田村は車中から慎重に駐車場を見回してから、腕時計に視線を落とした。つられて和彦も、自分の腕時計を見る。約束の時間には、まだ少し間があった。

「先生、何か腹に入れておきたいなら、買いに行くが……」

 三田村が振り返り、そう声をかけてくる。和彦は首を横に振ると、身を乗り出して三田村の頬に触れた。三田村は表情を変えないまま和彦の手を掴み、てのひらに唇を押し当ててくる。

 その感触に微かな胸の疼きを覚えながらも、人目を気にした和彦は、三田村のあごの傷跡を指先で撫でてから手を引く。

「……心配でたまらない、って様子だな」

 和彦の言葉に、三田村は前に向き直って答えた。

「ああ、心配でたまらない」

 どんな顔をして言ったのか確認したい誘惑に駆られながら、和彦はシートにもたれかかる。

「中嶋くんは、大丈夫だ。彼は、秦を慕ってはいるが、秦自身のことはあまりよく知らないみたいだ」

「だが、いつ秦の悪だくみに引き込まれるかわからない。若いが、中嶋は切れ者だ。自分の利益となるなら、なんだってする。元の組にいた頃も、汚れ仕事を厭わなかったと聞いている」

 若くして組で出世するために、中嶋もさまざまなことに手を染めているだろう。普通の青年の顔をしていようが、ヤクザはヤクザだ。

「秦と繋がっていることで利益を生むなら、中嶋は先生さえ利用するだろう。実際、長嶺組や総和会に報告することなく、先生に秦を治療させた」

「あれは――」

 中嶋のきわめて個人的な感情ゆえの行動だと言いたかったが、うまく説明できる自信がなかった。仮に説明できたとしても、先生は甘い、の一言で済まされそうだ。

 三田村はただ、和彦を守ることを優先している。そこに、長嶺組とは関わりのない男たちの思惑など関係ないのだ。そして三田村の姿勢は、長嶺組の組員として正しい。

 和彦はこれから、総和会の仕事で患者を診なければならない。そ
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