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第9話(17)

Author: 北川とも
last update publish date: 2025-12-15 20:00:22

 ヤクザではない和彦の警戒心の薄さを思えば、仕方ないのかもしれない。それに、今こうして忠告されるのも、三田村なりの理由があるのだ。

 車はファストフード店の駐車場に入り、エンジンが切られる。三田村は車中から慎重に駐車場を見回してから、腕時計に視線を落とした。つられて和彦も、自分の腕時計を見る。約束の時間には、まだ少し間があった。

「先生、何か腹に入れておきたいなら、買いに行くが……」

 三田村が振り返り、そう声をかけてくる。和彦は首を横に振ると、身を乗り出して三田村の頬に触れた。三田村は表情を変えないまま和彦の手を掴み、てのひらに唇を押し当ててくる。

 その感触に微かな胸の疼きを覚えながらも、人目を気にした和彦は、三田村のあごの傷跡を指先で撫でてから手を引く。

「……心配でたまらない、って様子だな」

 和彦の言葉に、三田村は前に向き直って答えた。

「ああ、心配でたまらない」

 どんな顔をして言ったのか確認したい誘惑に駆られながら、和彦はシートにも
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     和彦の視線は吸い寄せられるように、守光の背に向けられていた。浴衣に隠れてはいるが、この下には、毒々しい黄金色の体を持つ九尾の狐が潜んでいる。大蛇も怖いが、この狐はそれ以上に怖い。どうやって獲物を狙うのか、その手口すら和彦は想像がつかないのだ。 そんな狐の刺青を背負った男に『逃がさん』と言われれば、それは言霊となって和彦の心と体を縛りつけそうだった。 和彦の中に芽生えた怯えを読み取ったのか、守光がこう付け加える。「――……あんたは振り回されていると感じているだろうが、長嶺の男たちも、あんたに振り回されている。これは、情だよ。あんたとわしらは、情を交わし合っている」「情を、交わし合っている……」「そう感じているのは、わしの勘違いかな?」 肯定も否定もできず口ごもる和彦に、首を回らせた守光がわずかに目を細める。「わしの〈オンナ〉は慎み深い」 守光がゆっくりと体を起こし、布団の上に座る。手招きされて側に寄った和彦は、強い力で肩を抱かれた勢いで、守光にもたれかかった。 反射的に身をすくめたが、それ以上の反応はできない。凄みを帯びていながら、非常に静かな眼差しで見つめられると、怯えると同時に、奇妙な熱が体の奥で高まり始める。このことを自覚した瞬間にはもう、和彦の体は守光に支配されているのだ。「さあ、わしと情を交わしてくれ」 賢吾に似た太く艶のある声で囁かれ、唇を塞がれそうになる。いつもなら、逆らえないまま身を任せてしまうのだが、今夜は事情が違う。寸前のところでわずかに頭を後ろを引き、和彦は抑えた声で訴えた。「今夜は、千尋を刺激したくありません。それでなくても、ぼくが兄と会うことを知らされて、気が高ぶっているのに、こんなところを見られたら――」「刺激すればいい。あれも、なかなか厄介な獣を背負うことにしたようだ。刺激して、高ぶらせて、そうやって成長させる。わしや賢吾、オンナであるあんたの役目だ」 千尋が入れようとしている刺青のことを指しているのだろう。守光の口ぶりに興味を惹かれた和彦だが、すぐにそれどころではなくなる。「あっ…&

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    last updateLast Updated : 2026-03-18
  • 血と束縛と   第2話(23)

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    last updateLast Updated : 2026-03-18
  • 血と束縛と   第3話(6)

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    last updateLast Updated : 2026-03-18
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