LOGIN輪廻は巡る。私の思惑と彼の人の重圧により、あの記者に後戻りなど許さない。 六人の裏の主役達は冷淡に議論を重ねながら、私の名を呼ぶ。 ここは表の人間が殆ど知らない、操り人の隠れ蓑。 表の権力者を思いのまま操りながら、全てのシナリオをこの国の大元へと情報を流す最後の『仲介職』それが彼らの立場と言った所だろう。 そしてその下で動く事しか出来ない。存在理由しかしらない私は碧生。 彼らからしたら一番都合の良い人間なのかもしれない。 それはそうだ『仕組まれた子供』の一人目が私なのだから。 異変を感じた人がいるのかもしれない。『一人目』と言う事は『碧生』は他に存在するのか?と疑問を抱いた人もいるかもしれないが、今は『シークレット』と言う事にしておこう。それが一番の安全策だと思うし、それにさ…。 いつか分かる事だから、今は言わずに『物語』の流れに身を任した方がいいと思うのだよ? そう思う私は甘いのかもしれないね。 フフッと笑いが零れ落ちそうになりながらも、精神力のみで食い止め『演者』へと堕ちていく。 それは崩壊への導きとよく似た『禁断の果実』の甘い香りに誘われる運命。 「はい、どうしましたか?」 六人の彼の人達は、冷静な私を見て胸を撫でおろし、君はやはり冷酷な方が君らしい。碧生さん、あなたの出番なのです。と重圧を私に課せる。 「なるほど、あの人では無理で私を呼んだ訳ですか…」
破壊音と弾丸の擦れた臭いが鼻につく。 これはピストルを使った時の嫌な臭い。 そしていい匂いでもある。 巡る記憶は螺旋上。 脳内に走り去る映像はまるで『走馬燈』 私が碧生であって碧生ではない時の記憶が流れ込んでゆく。 全ては過去の産物でもあるのだが、私にとっては己の軸が成型する為に必要だった『記憶』の一つでもある。 人間には光と闇がある。それはメンタルを表す場合もあるが、私の発する言葉の数々は人間そのものの裏と表を表す言葉を示す。闇に包まれた私とその闇を覆い隠す私は二つの立場を併せ持つ人間。全ては権力と金で支配出来る世界でもあり、その表には複数の複雑な事情が絡んでいる。 『碧生さん…あなたは一体何者なんですか?』 「何の事です?」 『…その情報を何処から聞いたのですか?』 「聞いたなんて…そんな事しませんよ」 『…だったら何故、あなたは』 拳銃の輸入ルートを知っているのですか? その一言で記者が私に問い詰める。 ここは感情的になる羽目は外さない。 だからこそ、不安定な自分と冷酷な自分を混ぜながら『人間』の弱さを演じていくのです。 こうする事により、本当の自分の姿や思考を隠せますし、なんと言っても都合がよい。 そう、私『碧生』の本当の姿を知らない人達なら皆が思う事。 こいつは頭が緩いんだとね。 あはははは。 そう呟かれてもいいのです。こちらにもこちらの都合がある。法律の抜け道を潜り抜けるには必要な事なのですからねぇ。 そう
『碧生さん…なんで風樂さんがここにいるんですか?』 「さあ?私には分からないな」 『……碧生さんが呼んだのですか?』 「なんで私が?」 『イスズさんに来てもらいたい感じがしました』 …ははっ。 これだから感受性が豊かな子供は困るのだ。 大人の世界に簡単に入り込んだ理委は、ただ単に好奇心のみで行動してきたのかもしれないね。 私達とは違う考え方と目線を持っているからこそ『利用』出来るというものだが、現在のこの三人の空間では一番の邪魔者なのかもしれない。 純粋さは簡単に刃へと姿を変え、状況を変えてしまう…いや崩壊へと導くと言った方が妥当だろう。 無垢な事は魅力でもあるが、人を傷つける要因にもなりかねない事を自覚した方が賢い生き方が出来るのだから。 私個人の一意見として語るとしたら、こんな考察しか出来ない。 はぁ…と深いため息を吐きながら、心の瞳で理委を睨み続ける。 裏と表は表裏一体だからこそ、複数の仮面を被る事が出来るのが事実であり、現実だ。 私の心の呟きが風樂に流れ込んだように彼女は私の『サポート』へと回るのだ。 生き方が違う事は考えや価値観が違う事。 同じ人間なんてこの世には存在しない。 もし存在するとしたら人々が呟くような『ドッペルゲンガー』なのだろう。 「理委さん急にどうしたの?そんな警戒して…何かしたかしら?」 『……い…え』
走りながら突き進む心と共に焦りも浮き彫りになる。 加速する心には冷静さなどと言うカケラなど見当たらない。 追い詰められる理委の姿は、私にしか見えない未来の予測図。 風樂は全てのカギを握る人物と言っても過言ではないだろう。 カランコロンとドアの音が鳴り響く。鈴の音が風樂が来たと言う合図でもある。 彼女はいつも大きめの鈴を鞄につけている。 お守りの一環としてね。 昔、私が彼女にプレゼントした美しい鈴を、まだ大事にしている事には驚きを隠せないけれど。 それも含め彼女は魅力的だと感じる自分がいる。 私には性別がない。 女でも男でも、もちろんその中間でもない特殊な人間と言う存在。 周りの人達が、その現実に気付く事はない。 私が気づかれないようにしているから、余計に無理だと思うよ? 性別を例えるなら、それは君達の頭の中で、妄想と言う形で、私を創ってもらいたいと願っている。 そういう提供をする事により、私は碧生として生きていく事が出来るのだから…。 幻想は果てない夢の続き。 君達の願いと共に、私は変化していく。 それが『碧生』なのだから…。 妄想の中で揺られる意識に逆らいながら、現実世界へと扉を叩き、揺り起こそうとするのは風樂だ。 彼女は、現実から逸脱した私の様子を不信がりながらも近づいてくる。 表情を見れば一発だから、唯一気づかないのは理委だけだろう。 私の正面には理委が座っている。そして理委のすぐ後ろには風樂が気配を消して、立っている。 どのタイ
美しい花は私の前で、まだ蕾の状態で保存されている。 心が固まっているように、冷たい氷で覆われながら私に戻る。 まだ蕾の花はどんな花を咲かすのだろうか。 美しい花? 純粋な花? それとも残酷な花? 私を狂わしていく誘惑の花なのかもしれないね。 「金の話に戻した方がお互いの為ですよ?私の言葉に惑わされないように…」 そう囁く私は悪魔のような笑顔を振りまき、彼女を壊そうとする。 まるで人形遊びをしているみたいに、全身の骨を折るように、楽しむ。 私にとっては心地よい空間ではあるが、彼女にとっては不安しか感じられない空間なのだろう。 目が虚ろになり、不信感しか感じれないからね。 理委はまだ幼い。私とは10歳以上年が離れているし、こういう対応などは出来てない未熟者。 だからこそ、私の思い通りにする事が出来、色々な策を投じられるというもの。 『…私はそんなつもりじゃ…』 躊躇いながらも、元の話に戻そうとする理委の姿を心の中でニヤリと微笑みながら、誘導する。 破壊への入場門を開き、彼女を奈落の底に堕としていく。 「…いつも電話かけてくる時、金の話しかしないのは貴女でしょうが。私はどちらでもいいんですよ?困るのは理委さんですからね」 そう会話を転換すると、沈黙が続く。 周りの音は喜怒哀楽を感じる事が出来るのに、私達二人の空間からは冷たさと孤独しか感じられない。 冷たさは私から醸し出している綺麗な音。 孤独は理委から出されている悲しみの曲。 「イスズさんでも呼びますか?その方が早い」 『え…?』 「二人じゃ話にならないでしょう?彼女を呼ぶべきですよ、お互いの為にね?時間を有効活用しないと」 『私は二人で話したいのです。碧生さんと…ダメですか?』 私と同じ時間を共有して、状況が変化するとでも考えているのだろうか? 甘く見られているものだ。こんなガキに。 代表取締役という肩書を持つ私と彼女では経験の差と社会の表裏を知らない幼い子。 私の言葉に冷酷さと残酷さが含まれている事にも気づけないのは彼女のミス。 まだイスズが混ざって話をした方が彼女の為にもなるし、守ってくれると思ったのだが。 それさえも分からないらしい。 平行線の言葉達は途方に迷いながら、蒸発し、二酸
何も起きはしない。全てはリピート。同じ事の繰り返し。 こういう関係は好きでもあるが、よく分からなくなる。 『ごめんなさい、急に電話をかけて…』 オドオドしながら、私の反応と言葉を待つ君の名前は理委。 本名はお互い教えていないので、その呼び名しか知らないのです。 女性か男性かはご想像にお任せするのが一番の得策。 だからこの呼び名を使っているのでしょうね。 中世的な声はどちらの性別とも捉えれる事が出来ますし、会うまでは分からない。 私だけが知る『秘密』と言っても過言ではない。 だからこれは君と私の秘密にしときましょうか。 その方が楽しくもあり、美しくもありますからね。 ふふふ、そう考えてしまう私は『いじわる』なのかもしれないね。 24時間営業しているファミレスで、君と話す。 たわいもない話から…残酷な話まで。 そこまで私に『心』を開いても良いのかな? 外面の微笑みと内面…いや『中心核』と言ったほうが正しいかな。 二つの思考と、思惑、そして『策』を脳内で映像化しながら、君の話を聞く私。 そういう所は『器用』なんですよ? 『あの碧生さん?』 私の名前は本名です。男でも女でも通用する『あおい』と言うのが私の呼び名であり、本名。 君には偽りよりも、こちらの方がいいと自ら判断しての、対応を取りました。 表上では『呼び名』と言う事にしていますが、真実を知れば驚くかもね。 その時の驚いた君の表情を思い浮かべるだけでゾクリと全身が快感に支配されていく。 君は何も知らないけどね。 「どうしました?理委さん?」 心と思考の裏で別の自分を作り出し『カモフラージュ』を演出する。 少し私の『異変』に気づいたのかもしれない…。 これは私の『ミス』でしょうか?それとも……。 『何だか、いつもと雰囲気が違う気がして…なんでだろう』 君は『感受性』が豊かだから、この空気の変化に気づいたのだろうね。 だけど、その感受性を壊す方法を知っているからこそ『本当』の私を捕まえるのは不可能。 「理委さん……先ほどの話でだいぶ心を乱していると思いますよ?自分の心が乱れたら、視野も考えも感覚も全て変化してしまうのが、人間というものですからね…」 『そうなんですか?』 ここではまだ疑問符。だからこそあえて次の言葉を吐くのです。 「そうですよ、