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第2話

Author: 甘い梨氷
「このネックレス、ほかの人にもあるの?」

義方の表情が一瞬固まり、私の手を強く握りしめ、すぐに微笑んだ。

「もちろん君だけのものだ。これはうちの星子のために用意した唯一無二の贈り物だ」

彼は嘘をついている。

三日前、私は静江の首に、まったく同じネックレスを確かに見た。

胸の奥に、覚えのある切なさが込み上げ、やがて鈍い痛みに変わった。

義方は優しくネックレスを私の首に掛け、丁寧に乱れた髪を整えた。

かつて、心から私を愛していた頃と同じように。

だが、私はもうあの幸福な感覚を抱くことができなかった。

八年前、小林家の長男である義方が留学を終えて帰国し、家業を継ぐのは揺るぎないことだった。

だが、義方は私を愛した。私は孤児で、財産も持たない身だったため、私たちの結婚は彼の家族から徹底的に反対された。

そこで彼は突然、後継者争いから身を引き、私との結婚を選んだ。

誰もが、彼を思慮深く、決断力に優れた人物だと言った。

だが私だけが知っていた。義方は私に甘え、ふざけ合い、抱きしめては、何度も「愛している」と言ってくれた人だと。

愛おしそうにこちらを見つめる目の前の義方。すべてが昔のままでありながらも、そこには言葉にできない何かがほのかに感じられた。

私が長く黙っているのを見ると、義方は甘やかすように私の手を引いた。

「どうした、星子。行きたいところが別にあるのか」

我に返り、私はかすかに首を振った。

「何でもないわ。劇場へ行きましょう」

三日後、私は去る。せめて、これを別れの代わりとしよう。

何しろ、私は八年もの間、彼を愛したのだから。

翌日、朝飯を終えて、私たちは出発した。

病がようやく少し回復したばかりで、私はどこか疲れ切っていた。

車に乗った途端、息子の真司(しんじ)が駄々をこねて言った。

「パパ、加藤お姉ちゃんを呼ぼうよ!この前、僕に話の続きを聞かせてくれるって約束したし、新しいおもちゃも持って来てくれるって約束したんだ!

ママだけじゃつまらないよ、何も遊ばせてくれないんだ」

義方の顔がさっと冷えた。

「真司!今日は家族にとって大事な日だ、くだらないことを言うな!」

真司も自分の失言に気づき、恐る恐る私の方に向き直った。

「ママ、ごめんなさい……」

私の心は穏やかだった。初めてこの言葉を聞いた時のような、あの鋭い痛みはもう湧いてこなかった。

義方は手を伸ばして私の手を取った。

「真司はまだ小さい、言葉に深い意味はない。気にしないでくれ、いいな」

私はそっと手を引き抜いた。

身体の鈍痛はますます激しく、全身の骨が打ち砕かれるように痛んでいた。

「分かってるわ」

私は静かに答えた。

途中、小さな路地を通りかかった時、開け放たれた窓から、崩れるような泣き叫ぶ声が微かに聞こえてきた。

義方はそちらに目を向け、突然顔色を変えた。

「止めろ!」

車が止まりきる前に、義方は急いでドアを開け、飛び降りて行った。

私も続いて降り、路地の中を見た。そこには、数人の男に取り囲まれている静江がいた。

男たちは義方を見るなり、慌てて逃げ去った。静江は涙で顔を濡らし、義方の腕の中へ崩れるように倒れ込んだ。

後ろの真司はそれを見ると、私を勢いよく突き飛ばし、静江へと走って行った。

私はもともと身体が弱っており、その衝撃でバランスを失い、よろめいて地面に倒れた。

掌は砕けた小石で切れ、鮮血が滲み出し、石片が肉に埋まった。

長い間「システム」の罰で痛みに慣れていたはずなのに、思わずうめき声が漏れた。

顔を上げると、私の夫と息子は、そろって静江に寄り添っていた。

私は歯を食いしばって立ち上がった。

静江は涙を流し、か細い声で言った。

「もう、二度と……会えないかと思ったの、義方……」

言葉を終える前に、静江はそのまま気を失った。義方は目を赤くして彼女を抱き上げ、真司も涙を溢れさせ、短い足で追いかけた。

「早く病院へ!加藤お姉ちゃんが倒れた!」

運転手は、取り残された私を一瞥し、ためらうように口を閉ざした。

その時、義方の怒りに満ちた声が響いた。

「何をしている!早く行け!さもないとただじゃおかない!」

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