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第7話

作者: ピタコ
オリヴィアの全身が氷水に浸されたかのように、頭のてっぺんから爪先まで冷え切っている。

時代は以前とは違い、中立地帯のセントラルとの関係は随分緩和になっている。

だが、大陸西側の連邦との繋がりを疑われれば、厳しい尋問を免れることはできない。

レナード自身も軍事情報総局で尋問を受ける者たちを見てきたし、その悲惨な様を彼女に語って聞かせたことさえあった。

だが今、サイモンとセシリアの肩を持つために、自らの手で自分をその場所へ送ろうとしている。

オリヴィアは兵士に連行されていく。去り際に、レナードが彼女に近づき、数言囁いた。

「留学の手紙などを偽造して気を引こうなどという小細工で、お前ごときのためにセシリアとサイモンを追い出すとでも思ったか?これで少しは懲りるだろう。くだらん悪知恵は働かせるな!」

もし彼が少しでも顔を下げて見ていたなら、その酷薄な言葉を放った時、オリヴィアの中にあった彼への最後の期待が、完全に消え去ったことに気づいただろう。

しかし、彼は見なかった。

幾度となく彼女を見捨ててきた。今更、一度増えたところで気にも留めない。

オリヴィアは抵抗しようとも思わず、また、抵抗する力もない。

彼女は真っ暗な尋問室に閉じ込められる。陰鬱で冷たい空気に、鳥肌が次々と立つ。

尋問するのは、まさしくレナードの部下・フレッド軍曹である。

男は侮蔑の眼差しを向け、手に持った鞭を、容赦なくオリヴィアめがけて振り下ろす!

パシッ!

パシッ!

塩水に浸された鞭が、一打、また一打と、彼女の体に深い血の痕を刻んでいく。

オリヴィアはこらえきれずに悲鳴を上げ、冷たい声で問い詰める。

「これが正規の尋問だとでも言うのですか?これは単なる暴力に過ぎない!」

彼女の悲鳴と詰問は、フレッドの憐憫の情を少しも呼び起こさず、むしろ、さらに強く鞭打たせるだけだ。

「アームストロング大尉は清廉潔白なお方だ。帝国のために、その身を永遠に車椅子に捧げられた!それなのに貴様は西側と内通するとは、大尉の恥さらしめが!

大尉からは、貴様に灸を据えてやれと特別のご命令を受けている。何かあっても、責任は大尉が取ってくださるそうだ。オリヴィア・シェフィールド、素直に白状することだな。この手紙には、一体何が書かれている?」

それほどまでに、愛しているというのか?

レナードは、セシリアとサイモンをそれほどまでに愛し、彼らのために、自分にこのような苦しみを与えるというのか?

オリヴィアは痛みで意識が朦朧としながらも、口を開こうとする。だが、男は再び冷笑を浮かべた。

「まあいい。どうせ貴様は言い逃れをするだろう。まずは打て。こいつを連れて行け、徹底的に打て!」

彼が手を振ると、すぐに二人の男が現れ、オリヴィアを引きずっていく。

四日間。この悪夢は、丸四日間も続いた。

体に何百発の鞭を受けたか分からず、指は何度も万力で締め上げられ、青紫色に変色している。

オリヴィアが意識を失うたびに、塩水の桶が頭から浴びせられ、無理やり意識を引き戻される。

彼女の体には、もはや無事な場所などどこにもない。皮膚のあらゆる部分が、死ぬほどに痛む。

オリヴィアは、自分は本当にここで死ぬのかもしれないとさえ、思い始めていた。

その時、尋問室のドアが開けられ、セシリアが車椅子のレナードを押して現れる。

レナードは、縛り付けられた彼女を見下ろし、その目に一瞬の憐れみを浮かべた。

「オリヴィア、四日経った。過ちを認める気になったか?

セシリアは心が広い。お前が以前、あの母子を邪険に扱ったことも、もう水に流すと言っている。きちんと謝罪さえすれば、家へ連れて帰ってやる」

オリヴィアの心はとうに死んでいた。だが、この言葉を聞いて、思わず嘲笑が漏れる。

「ええ、そうね。ごめんなさい。

セシリアとサイモンに不満を抱くべきではなかったわ。あなたが彼女たちに献身するのを邪魔するべきでもなかった。そもそも、私がアームストロング家に現れて、あなたたち家族三人の邪魔をすべきではなかったのよ。これで、満足?」

レナードは向こうの真っ赤な目を見て、心に突然、動揺が走る。

「オリヴィア、そういう意味ではない!

セシリアとは何もない。ただ、亡き兄に、必ず母子をしっかり世話すると約束しただけだ。お前も知っているだろう?なぜ、少しも理解しようとしないんだ?」

セシリアも、それに乗じて火に油を注ぐ。

「やはりオリヴィアは、私たちの関係を誤解していたのね。レナード、これからは私とサイモンは、もう二人の前に現れない方がいいのかもしれないわ」

レナードは考える間もなく拒絶する。

「駄目だ!それは二度目だぞ、セシリア。二度とそんなことは言わないでほしい。お前とサイモンがいなくなったら、俺は兄貴にどう顔向けすればいい?」

レナードは、失望に満ちた眼差しでオリヴィアを見る。

「オリヴィア、あまりに物分かりが悪すぎる。ここで、しっかり反省するんだな!」

彼は車椅子を返し、怒りに任せて去っていく。

セシリアは、すぐには彼を追わなかった。

オリヴィアの前に歩み寄り、無造作にその顎を持ち上げる。

「見たかしら。私が少し知恵を働かせれば、レナードはあなたの言うことなど、何も聞きはしないのよ」

彼女はそう言うと、自分のお腹を撫で、挑発的で得意げな表情を浮かべる。

「まだ知らないでしょうけど、オリヴィア。私、レナードの子供を身ごもったのよ」

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