Masuk澪は差し出されたそれを見て、明らかな驚きを浮かべた。「このキーホルダー……どうしてあなたが持っているの?」洵が差し出したのは、プラスチックのビーズを編んで作られたウサギの形をしたキーホルダーだった。「それは、俺のセリフだ」澪は一瞬呆然とし、頭を掻いた。「じゃあ、このキーホルダーは本当にあなたのものだったの?」「ああ……」洵が頷くのを見て、澪の瞳はさらに大きく見開かれた。このキーホルダーは、正確に言えば彼女が拾ったものだった。かつてC国のイザベルタワー126階にあるクラウド・ナインで、洵が席を立った後のテーブルに、このペアのキーホルダーが置き忘れられているのを彼女は偶然見つけたのだ。どう見ても安っぽく、中学生が持ち歩くような代物だった。澪は、それが洵の持ち物だとは到底思えなかった。しかし、それは間違いなく洵が座っていたテーブルに置かれていた。好奇心を抱いた澪は、そのキーホルダーを手に取り、ウェイターに頼んで店内の客にアナウンスで持ち主を探してもらった。しかし、クラウド・ナインのような最高級の店で、予想通り、名乗り出る者は誰一人いなかった。結局、持ち主のいないそのキーホルダーを、澪は自分の鍵束につけることにした。高価なものではなかったが、澪はなぜかそれをとても気に入っていたのだ。「これ、もう無くしたと思ってたわ」「ああ、無くしたさ……コンテナの山の下敷きになっていたからな」洵のその説明を聞き、澪は目を限界まで見開いた。「じゃあ……あなた、これを見つけて私を……?」「ああ」洵は再び頷いた。澪はその小さなプラスチックのビーズのウサギを両手でそっと包み込み、胸の奥で万感の思いが渦巻くのを感じた。「まさか……私を助けてくれたのが、あなただったなんて……」澪が、その命の恩人に対するすべての感謝の念をこの小さなキーホルダーに向けているのを見て、洵は低く咳払いをした。「俺だぞ」澪はまぶたを上げ、洵を見た。洵は不快げに眉をひそめていた。自分の手柄をキーホルダーに横取りされたことに苛立っているようだった。「お前を助け出した人間は……俺だ」「ええ、知ってるわ」澪は静かに目を伏せ、手のひらの小さなビーズのウサギをきつく握りしめた。彼女はすでに多くの人から聞いていた。
澪はその結果を聞き、隼人の弁護士としての実力の高さに心底感心した。常識的に考えれば、月子が刑務所に送られ、和夫が自首したことで、この事件はすでに一件落着のはずだった。しかし澪の記憶にははっきりと残っていた。あの建設現場に入った時、確かに作業着にヘルメット姿の人間がいたことを。その人物こそが、彼女を廃配電室へと誘導したのだ。しかし、警察は結局その共犯者たちを捕まえることはできなかった。月子は取り調べで、千雪の関与を暴露し、「千雪がこの計画のすべてを私に持ちかけた」と証言した。しかし千雪は関与を頑なに否定し、警察も彼女がこの事件に加担したという確固たる証拠を見つけることはできなかった。法的な意味では、この事件はこれで完全に終了した。しかし、澪と千雪の間に横たわる因縁は、まだ決して精算されたわけではない。深夜。静まり返った病院。澪の病室のドアがノックされた。顔を見せた洵の姿に、澪は驚きを感じなかった。もし洵が一度も彼女を見舞いに来なかったとしたら、そちらの方がよほど驚きだ。しかし彼女が驚いたのは、洵が一人で来たわけではなかったことだ。彼の後ろには、悠人が控えていた。澪は、悠人が一人でこれほど大量の荷物を抱え込んでいる姿を初めて見た。フルーツの盛り合わせ、高級ミルクのケース、そしてありとあらゆる滋養強壮の品々。悠人はそれらをすべて病室に運び込んだ。澪は運ばれた品々を一瞥したが、そこには花束だけはなかった。珍しく、洵が自分のアレルギーを覚えていたようだ。「お前一人か?」洵は眉をひそめて尋ねた。彼が一人で来なかったのは、澪の病室には間違いなく誰かが付き添っていると確信していたからだ。蘭か、蓮か。蓮でなければ、ピーターか、航か。あるいは、千晃までもがしゃしゃり出てきている可能性すらあった。全員が顔見知りである以上、洵は彼らに「俺が一人で澪を見舞いに来た」という事実を見せたくなかったのだ。どうせ澪と二人きりになることなどできないのだから、それなら悠人を連れてきた方がマシだと思っていた。しかし予想に反して、澪の病室には誰も付き添っていなかった。「みんなには帰って休んでもらったわ。私一人のために、みんなを寝不足にさせるわけにはいかないもの」付き添い用の簡易ベッドでは、当然自宅
「それに、あの入り口を塞いでいたコンテナの山だ。あれは全部空っぽで、お前の現場で使うような資材でも何でもなかった……」あのコンテナの出所について、洵はすでに手下を使って現場監督を力ずくで吐かせていた。現場監督が知っている情報は確かに少なかった。彼自身、和夫がなぜあんな大量のコンテナを現場に運び込み、廃配電室への階段を隠すように配置したのか、その理由に気づいていなかったのだ。現場監督は無実かもしれない。しかし、和夫は絶対に黒だ。「警察を呼ぶと言ったな?ちょうどいい、俺が送ってやってやる……『計画的な殺人未遂』だ、警察も大喜びで飛びつく案件だな」洵が椅子から立ち上がったのを見て、和夫は洵の足元に崩れ落ちるように膝をついた。「篠原社長、どうかお慈悲を!私が悪かったです、本当に私が間違っていました……!でも殺そうとしたのは私じゃない、私じゃないんです!いくら度胸があっても、人殺しなんてできるわけがありません!ましてや、あなたの元奥様だなんて……!」和夫は泣き喚きながら、洵に向かって何度も激しく土下座を繰り返した。洵は容赦なく足を振り上げ、和夫を蹴り飛ばした。「戯言を聞く気はない」洵は淡々と言い放つと、裏社会の男たちに向かって顎で合図をした。「続けろ」屈強な男たちが一斉に群がり、再び容赦ない暴行が始まった。和夫は痛みに悲鳴を上げながら、必死に叫び続けた。「石川月子だ……石川月子がやったんです!」病室。澪は警察からの連絡で、月子がすでに身柄を拘束されたことを知った。和夫は澪の顧客であり、二人はこれまでにも何度か仕事の取引をしたことがあった。澪には、なぜ彼が自分を陥れようとするのか全く理解できなかった。澪と和夫の間に利益の対立など存在しない。それどころか、彼は澪のデザインを高く評価し、長期の納品契約を結んでくれていたのだ。警察からの説明で、すべてが繋がった。和夫は自ら出頭し、「石川月子から『自分の体を差し出す』という条件で協力を懇願された」と供述したのだ。しかし和夫自身は、月子がまさか本気で人を殺すつもりだとは思ってもみなかったという。彼はただ、澪を建設現場に誘い出すための口実を送っただけだと主張した。澪は病床に横たわりながら、スマホを握りしめて冷笑した。「本当に、『色欲は身を滅ぼす』とは
「ありがとう、蓮……」澪の蒼白な顔に、微かな笑みが浮かんだ。しかし、蓮は笑えなかった。いつも穏やかで優しげな彼の顔には、隠しきれない真剣さと、そして少なからずの悔しさが滲み出ていた。「君を助け出したのは、篠原洵だよ」「ええ、知ってるわ」澪のその言葉に、蓮は一瞬呆然とした。「でも、あなたや蘭が一晩中休まずに探してくれたことも事実でしょう?だから、当然お礼を言うべきだと思ったの」蓮は澪を見つめ、心の中にあった重い石が取り除かれたような安堵感を覚えた。実際のところ、彼は澪に「自分が助け出した」と誤解されたくなかった。洵の手柄を横取りするような真似はしたくなかったのだ。そんなことをすれば、まるで自分が洵を出し抜いていい思いをしているような気がしたからだ。しかし同時に、洵が澪を助け出したことで、澪の彼に対する気持ちが再燃するのではないかとひどく恐れていた。その矛盾した感情に縛られ、彼はどう振る舞うべきか分からなくなっていたのだ。だが、澪は最初から洵が自分を助けたことを知っていた。あの時の澪の意識は混濁しており、決してはっきりしてはいなかったはずだ。しかし彼女は、洵の体温を、洵の腕の中の感触を、そして洵の匂いを熟知していた。何と言っても、彼らはかつて三年間、枕を共にし寄り添って生きた夫婦だったのだ。そして何より、澪はかつて、洵を狂おしいほど愛していたのだから。「蓮、私……少し疲れたみたい。少し眠りたいな……」「うん、分かった」蓮は澪の布団の端を丁寧に整えてやった。彼は察していた。澪は彼に帰ってほしがっているが、それをはっきりとは口にできないのだと。蓮が立ち去った後、病室は完全に静まり返り、水を打ったような静寂に包まれた。澪は布団をきつく被り、ベッドの上で何度も寝返りを打ちながら、千々に乱れる心を持て余していた。なぜ……またしても、彼なのだろう?かつて、13歳で少年院の独房に閉じ込められた時、もしあの換気口から毎日欠かさず一粒の飴を投げ入れてくれる人がいなければ、彼女はとっくに絶望して壁に頭を打ちつけて自殺していただろう。その「毎日一粒の飴」は、あの時の澪にとって唯一の命綱だった。それは、彼女と外界を繋ぐ唯一の繋がり。自分がまだ生きているという証。外の世界に
悠人が予備のスーツを持って車に戻った時、そこにいたのは洵ただ一人だった。上半身裸のまま、夜の闇の中にポツンと立ち尽くす洵の姿は、どこかひどく寂しげに見えた。悠人は驚いた。「社長、夏目さんは?」予備のスーツを洵に渡しながら、彼は尋ねた。「白石蓮と近藤蘭が連れて行った」洵の声はひどく平静だった。しかし、悠人は全く平静ではいられなかった。夏目さんは、社長が命懸けで探し出し、助け出したんじゃないですか!なんで白石蓮や近藤蘭にいいところを全部持っていかれなきゃならないんです!?それに、あの洵が自分の手柄を他人に譲るなど、悠人にはとうてい想像できなかった。洵は手早く予備のスーツに着替え、車に乗り込んだ。「社長、どちらへ向かいますか?」運転席に座る悠人が、バックミラー越しに後部座席の洵を窺った。洵の顔色は紙のように白く、目の下にはくっきりとクマができていた。寝不足と雨に打たれたことによる冷えは誰の目にも明らかだった。できることなら、悠人はすぐに洵を家へ送り届けて休ませたかった。「白石蓮に連絡しろ。澪はどこの病院だ?」洵の指示を受け、悠人は口をパクパクさせたが、それ以上は何も言わずに素直に従った。インペリアルブルーのベントレーは、白いレクサスが消えていった道と同じ方向へ向かって走り出した。澪は、自分がどれくらい眠っていたのか分からなかった。目を覚まして最初に視界に入ったのは、蘭の顔だった。蘭の目は真っ赤に腫れ上がっており、相当な時間泣き続けていたことは一目瞭然だった。「澪!ああっ、澪、ようやく目が覚めたのね!本当に、本当に死ぬかと思ったんだから!」蘭は澪のベッドに泣きながら倒れ込んだ。澪が失踪したと聞いた時、蘭は本当に恐怖でどうにかなりそうだった。蓮と一緒にあちこちを探し回ったが何の手掛かりもなく、焦りと不安で涙が止まらなかった。最終的に蓮が「やはり一番可能性が高いのは建設現場だ」と推測して現場へ駆けつけた時、ちょうど洵が澪を助け出したところだったのだ。あの時、澪の体は氷のように冷え切っていた。毛布越しでさえ伝わってくる異様な冷たさに、蘭は背筋が凍る思いがした。病院に運び込まれた後、救急医は「極度の脱水症状と低体温症、さらに心身に甚大なショックを受けている」と診断した。「
全員がビクッと肩を震わせた。すぐさま洵は言葉を訂正した。「いや、違う!このコンテナを全部どかせ!今すぐだ!!」雷雨はますますその激しさを増していった。空はどこまでも黒く沈んでいく。まるで、二度と夜明けが訪れないのではないかと思えるほどに。かつて、澪は暗闇がひどく恐ろしかった。ドアが閉まる音も怖かった。少し強めにドアが閉まる音がしただけで、全身をガタガタと震わせて怯えていた。13歳の時。彼女は傷害罪という濡れ衣を着せられ、まともな司法手続きも経ずに綾川市の少年院へと放り込まれた。少年院に入って一週間も経たないうちに、彼女は教官に口答えをしたという理由で、懲罰用の独房に監禁された。その独房は他の教室とは構造が全く異なり、通常の校舎の中にすら存在していなかった。澪は今でも鮮明に覚えている。彼女が閉じ込められたその独房は、奇妙な三角形の形をしていた。腕すら通せないほどの小さな換気口が一つあるだけ。天井の小さな裸電球は、一度として点灯したことがなかった。壁は塗装が剥がれ落ち、一面に黒カビが繁殖し、排泄物なのか嘔吐物なのか分からない悪臭を放つシミがこびりついていた。独房の中には休む場所など何一つない。ベッドはおろか、椅子すらなかった。トイレ代わりの汚いプラスチックのバケツが一つ置かれているだけだった。真冬の寒さの中、暖房設備などあるはずもない。澪は手足が氷のように冷たくなり、体を小さく丸めて震えることしかできなかった。しかし、寒さなど一番の恐怖ではなかった。漆黒の闇に閉ざされた狭い空間に長時間閉じ込められていると、空気は淀み、息苦しさが押し寄せてくる。聞こえるのは自分の早鐘のような心臓の音だけ。吐き気と激しいめまいに襲われ、胃酸が何度も口まで込み上げてきた。昼なのか夜なのかすら分からない。時間と空間の概念が完全に失われたその独房の中で、澪は時折、恐ろしい錯覚に陥った。自分は、もうこの中で死んでしまったのではないか?独房という名の棺桶の中で、誰にも知られずに死んでしまったのではないか。今こうして思考できているのは、自分がすでに幽霊になってしまったからではないか。息が詰まる。パニック。そして、底なしの絶望。廃配電室の重い鉄扉のそばで気絶しかけていた澪は、まるで再びあの少年院の独房







