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第123話

Author: るるね
last update publish date: 2026-11-03 23:55:40

 親、という言葉を耳にした途端、千温の表情が一瞬だけ空白になった。

 千温は、誰かに家族のことを尋ねられるのが嫌いだった。

 学校に通っていた頃、千温は何度も「親のいない子」と呼ばれた。名前を知らない同級生だけではない。千温の名前を覚えようともせず、平然とそう呼ぶ保護者までいた。

 その言葉を聞くたび、自分にはほかの子どもたちが当たり前に持っているものがないのだと、嫌でも思い知らされた。

 大人になった今でも、両親のことを尋ねられると、あの息苦しかった学生時代に引き戻されるような気がした。

 千温には、父親の記憶も、母親の記憶もなかった。

 ただ、生まれてすぐに捨てられ、そのまま施設へ預けられたわけではないらしい。あとから聞かされた話では、幼い千温は一人で街をさまよっていたところを発見され、通報を受けた警察に保護されたあと、施設へ送られたという。

 当時の千温はあまりにも幼く、その頃の記憶は何一つ残っていなかった。

 物心がついてからの思い出は、すべて施設での生活に結びついている。父親の顔も、母親の声も、千温の記憶の中には存在しなかった。

「そうか……。なあ、千温。俺がお前の親を捜し
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