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第4話

Author: 炭酸が抜けたコーラ
貴臣は心愛が折れたのを見ると、すぐに隆に指示を出し、必要なものを持って来させた。

それは、心愛が文子の病室に戻って間もなくのことだった。

隆はプリントアウトされた「謝罪文」を手に、足早に現れた。「心愛さん、始めましょう。これが原稿です。社長は、これに沿って読んでいただければいいとおっしゃっていました」

心愛は目を伏せ、原稿用紙に並ぶ、真実を歪めた言葉の列を見つめた。それはまるで、俊輔が犯人であることを既成事実のように定め、葵が騙されて弁護を引き受けたのだと語っているかのようだった。

「私……」

口を開いたものの、内心の葛藤はそのまま表情に滲み出ていた。

心愛は唇を固く結ぶ。今は祖母の安否の方が何よりも重要だと分かっていた。祖母が戻ってきたら、必ず証拠を見つけ、俊輔の無実を証明する――そう、胸の奥で誓った。

「心愛さん、お祖母様の病室はすでに手配済みです。名雲市でも最高水準の医療チームが待機しています」隆は金縁眼鏡を押し上げ、感情のこもらない声で告げた。

これは、祖母の命を賭けた取引なのだ。

心愛の瞳の奥が、少しずつ冷えていくのを自覚した。今や貴臣は取り繕うことすらしない。葵が彼にとってそれほど重要な存在なら、なぜ最初から自分と結婚したのか――そんな疑問が、遅れて胸に沈んだ。

心愛はスマートフォンを取り出し、紙の上の文字をなぞるように見つめながら、読み上げ始めた。

「私の弟、深水俊輔の事件に関しましては、多くの誤解がございました。明石弁護士は法廷で職務を全うされましたが、私個人が実情を正しく把握しておらず、弟のことを十分に理解していなかったため、皆様に多大なご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます……」

録音を終えると、隆が一度内容を確認し、静かに頷いた。「社長が確認します。お祖母様は、すぐこちらに戻されます」

そう言い残すと、心愛に目も向けず背を向け、部屋を後にした。

隆が去ると、病室は不気味なほど静まり返った。心愛は突然、底冷えのような寒気に襲われ、俊輔への罪悪感が激しく込み上げてきた。

スマートフォンが一度、短く震えた。

銀行からのショートメッセージだった。

名雲病院で十年は賄えるほどの巨額が、彼女の口座に振り込まれていた。

これが、貴臣のやり方。

金で、人の口を封じる。

心愛は、貴臣が自分を口説いていたあの頃、本当に気持ちがこもっていたのかどうかさえ疑わしくなった。

今や葵も戻ってきた。そう思うと、離婚して海外へ行きたいという願いは、さらに切実なものへと変わっていった。

……

間もなく文子はVIP個室へ移された。医療機器が規則正しく音を刻む中、文子は穏やかな表情でベッドに横たわっている。

心愛はベッド脇に腰を下ろし、温かいタオルで文子の手を拭きながら、その老いた寝顔を見つめた。目を覚まして俊輔のことを尋ねられたら、何と答えるべきか――そればかりが胸を占めていた。

病室のドアが静かに開き、葵が入ってきた。

彼女が身にまとう、一目でわかるヨーロピアンブランドのスーツと、きらびやかな宝石のアクセサリーは、この簡素な病室にはあまりにも不釣り合いだった。

「文子さんのお見舞いに来たの」葵は偽りの気遣いを含んだ声で言い、室内を見回す。「いい病室ね。貴臣が尽力した甲斐があったわ」

心愛は顔を上げず、手元の動きを止めなかった。まるで何も聞こえていないかのように。

葵は気にも留めず、隣へ歩み寄った。声は低かったが、一言一言がはっきりと耳に届く。

「貴臣って本当に優しいから、他人が苦しんでいるのを見るのが一番嫌いなの。あなたの弟さんのことも、口には出さないけど、内心ではうんざりしていたわ。でももう大丈夫。動画を公開したから騒ぎも落ち着いたし、彼もこれで一息つける」

葵は心愛を見下ろし、唇に勝者の微笑を浮かべた。

「心愛さん、あなたが辛いのは分かるわ。でも、手に入らないものもあるの。貴臣はあなたに、もう十分すぎるほど優しかったはずよ」

そう言って、手首のパテック・フィリップを軽く揺らす。ダイヤモンドが照明を受け、眩くきらめいた。

「人はね、自分の立場をわきまえなきゃ。相応しくない場所に居座り続けると、必ず痛い目を見るわよ」

心愛は手を止め、ゆっくりと顔を上げた。表情は冷え切っている。

そして、ふっと笑った。かすかに、静かに。

「もう言い終わった?だったら出て行って。おばあちゃんの邪魔よ。私がどんな立場かは、私自身が一番よく分かってる。高望みなんてしたことないし、その座が欲しいなら、あなたにあげるわ」

葵は言葉を失った。

心愛の反応はいくつも想像していたが、ここまで静かで、感情を抑えた態度は予想外だった。

「あなた……」

「出て行って」心愛は立ち上がり、真っ直ぐに葵を見据えて、もう一度繰り返した。

葵は歯噛みしたが、やがて鼻を鳴らし、ハイヒールを響かせて踵を返した。

ドアが閉まると同時に、心愛の体から力が抜け、ベッドの縁に手をついてかろうじて立っていた。

離婚という決意は、もはや一時の感情ではなかった。釘のように、深く、確かに、彼女の意識に打ち込まれている。

祖母を連れて、この息苦しい場所を離れる。そして、どんな犠牲を払ってでも、俊輔の無実を証明する。

……

翌日、医師から「文子さんはまだ目覚める気配がない」と告げられた心愛は、付き添いの介護士に世話を託し、刑務所へ向かった。

厚いアクリル板越しに、俊輔の姿があった。

わずか数日で、太陽のように明るかった弟の面影は消え、頬骨は浮き、眼窩は深く落ち込んでいる。だぶだぶの囚人服が虚ろに体にまとわりつき、まるで子どもが大人の服を着ているかのように、彼をいっそう痩せ細って見せていた。

「姉ちゃん!」

俊輔は心愛を見つけると、目を赤くし、アクリル板に駆け寄った。みるみるうちに涙が溢れ出す。

心愛は受話器を取り、震える声で呼んだ。「俊輔……」

「姉ちゃん!僕はやってない!本当に殺してないんだ!」

向こう側から、嗚咽交じりの声が響く。

「個室に入った時には、もうその人はソファに横たわっていて、動かなかったんだ。飲みすぎて寝てると思って声をかけようとしたら、宇佐美たちが人を連れて飛び込んできて……僕が殺したって!姉ちゃん、信じてくれ、僕はやってない!」

俊輔は取り乱し、額を冷たいアクリル板に押し付けた。

養父が心愛を深水家に迎え入れた日から、数歳年下の俊輔は、いつも彼女の後を追っていた。貯めた小遣いで飴を買ってくれたこと。心愛がいじめられたと聞けば、真っ先に飛び出してきたこと。真顔で「大人になったら姉ちゃんを守る」と言ったこと。

そんな俊輔が、人を殺すはずがない。

心愛は唇を噛み締め、涙をこらえた。今、自分が俊輔にとって唯一の希望なのだと分かっていた。

声が揺れないよう、意識して言葉を選ぶ。

「怖がらないで。姉ちゃんは、俊輔の無実を信じてる」

その一言で、俊輔の呼吸がわずかに落ち着いた。

「いい?よく聞いて」心愛は一語一語、噛みしめるように告げた。「余計なことは考えない。誰とも揉めない。ちゃんと食べて、ちゃんと寝て、自分の体を守って。あとのことは、全部姉ちゃんに任せて」

「姉ちゃん……」

もし貴臣が助けてくれるなら、こんな場所にいるはずがない。そう思いながらも、俊輔は、破産した家を捨てず、自分と祖母を守ってきた心愛の姿を思い出し、胸が締めつけられた。

「姉ちゃんを信じて」心愛は俊輔を見つめ、迷惑をかけまいとする彼の気持ちを悟り、すぐに言った。「姉ちゃんが、必ずここから出してあげるから」

面会時間が終わった。

職員に連れられていく俊輔が、何度も振り返るその途方に暮れた瞳を見送りながら、心愛はゆっくりと受話器を置いた。

そしてスマートフォンを取り出し、貴臣の連絡先をすべて削除した。

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