Masukそんな“雪ちゃん劇場”は、冬の間、延々と続いていた。
営業部の女子たちは、限界だった。 「職場はキャバクラじゃないんだよ!」 ついに、不満が爆発。 しかも彼女、婚約者のいる男性社員に書類を渡す時── わざと転んだフリをして、そのまま膝の上に座ったというのだから、呆れ果てる。 ……もう、ホラーでしかない。 それでも男性社員たちは「雪ちゃん」「雪ちゃん」と呼び、まるでお姫様扱い。 そんな中、彼女に物申せる男が一人だけいた。 ──営業部のホープ君、松永くん。 ある日、彼女が勝手に彼のジャケットを羽織った時のこと。 彼は無言でファ○リーズをシュッと吹きかけた。 「勝手に人のジャケットとか着るの、やめてもらえませんか?」え? 親バカが過ぎるのでは……って?そんなことないのよ。実は我が家の美少年と美少女、すでに婚約の打診が殺到しているの。まぁ、政略結婚的な意味合いもあるのだろうけど……、旦那様のゴホッ……有り余る色気を引き継いだ我が息子の魔性っぷりに、私は今から心配が絶えないの。そんな中、再び部屋のドアがノックされ「レミリア様、ご準備はよろしいでしょうか?」侍女の声が響いた。その瞬間、あんなに弱気だったレミリア様の背筋が伸びて、瞳に凛とした光が宿る。「準備、出来ていましてよ」一歩、前へと踏み出した。その姿は、どんな宝石よりも美しい。「きれい……」思わずもれたのであろうリリアナの言葉に、レミリア様がニッコリ微笑んだ。「ありがとう、最高の褒め言葉だわ!」そう言うと、真っ直ぐ前に歩き出した。ドアが開き、レミリア様が新しい人生へと向かう背中を私たちは見送った。すると「レミリア」ふと、旦那様がレミリア様の背中に声を掛けた。振り向いたレミリア様に「安心して、前だけを向いて歩け。お前の後ろには、必ず俺たちがいる」そう言って微笑んだ。その瞬間、レミリア様の瞳に涙が込み上げてきたが、彼女は上を向いて涙を止めると、キュッと唇を引き締めて前を向いて歩き出した。一見華やかな王宮だが、その先は茨の多い道だろう。行く手はクリフォード殿下が守るだろう。だから私たち家族は、レミリア様の背中を支え続ける。でも私は、あの細い背中が悲しみに震えないようにと祈った。すると私の手に、そっと旦那様の手が触れた。「大丈夫だ。レミリアなら、どんな環境でも自分の手で幸せを掴むはずだ」「そうですね」微笑み返した私の腰を抱き寄せ、旦那様が額にキスを落とした。「さぁ、私たちも行きましょうか」そう言ってレオナルドの手を取り、反対側はリリアナを抱いた旦那様と手を繋いで歩き出した。◆◇◆◇結婚式は、それはそれは素晴らしい結婚式だった。街中、お祝いムードで賑わい、紙吹
あの日から、幾つもの月日が流れた。クリフォード殿下を中心に国は大きく変わり、私腹を肥やし悪事を働いていた貴族たちは次々と暴かれ、すべて罰せられた。女神アマンダを復活させ、クリフォード殿下を失脚させようとしていた黒幕がロイド侯爵一派だったことも判明した。そして──あの時、私とユリエル様がキスをした瞬間に発せられた浄化の光によって、アマンダは完全に消滅したらしい。国王陛下と王妃様、そして王族の方々も離宮から城に戻り、少しずつ国は本来の姿を取り戻していった。そして今日。ついにレミリア様が王宮へ嫁ぐ日を迎えた。「コンコン」部屋をノックすると、すぐに返事が返ってきた。ドアを開けた瞬間──「お義姉様!!」勢いよくレミリア様が抱きついてきた。「どうしたの?」「……私、きちんとした国母様になれるかしら?」いつもなら強気な瞳が、今日はどこか不安げに揺れている。私はそっとレミリア様の頬を両手で包んだ。「大丈夫です。レミリア様は、クリフォード殿下と共に腐敗した政治とずっと戦ってこられたでしょう?」「それは……お兄様とお義姉様が協力してくださったからですわ」珍しく弱気な声だった。「レミリア様。私も旦那様も、これからもずっとお二人を支えます。だから胸を張って、殿下の元へお嫁ぎください」「お義姉様……!」しがみつくように抱き着いてくるレミリア様の背中を撫でていると──「……いつまで抱きついている?」不機嫌そうな声が、すぐ隣から聞こえてきた。見上げると、口をへの字にした旦那様──いえ、今やこの国の宰相となったユリエル様が、私の腰をつかんでレミリア様から引きはがした。「ちょっと、お兄様! 少しくらいいいじゃありませんか!」「ダメだ。……ソフィアに触れていいのは、俺だけだ」しっかりと腰を抱いたまま言い切る旦那様に、私は深い溜め息をついた。私とユリエル様は、あの日の後すぐに結婚した。理由は……ユリエル様が私を離さなかったからだ。婚前交渉を責められたとき、彼は言ったのだ。「結婚すれば
「へぇ~、ユリエルって嫉妬深いタイプなんだね」キラキラした笑顔でそう言うクリフォード殿下は、ちらりと私に視線を向け、 「大変な男に捕まったね、ソフィアさん」と、さらりと微笑んだ。その瞬間──『バキッ』と、レミリア様の手元で何かが折れるような音がした。 ……が、私は聞こえなかったふりをした。 (いや~! 本当にこの兄妹、怖い……)心の中でガクブルしながら、笑うしかない私。そんな私をよそに、クリフォード殿下が 「そうだ! 一部の貴族から”救済の乙女と僕の縁談話”が出てるんだって」と、とんでもない爆弾を投下した。 「は?」 「え?」兄妹のハモりが完璧すぎて、逆に怖い。するとユリエル様が、 「それは無理だな。 ソフィアは──俺の子しか孕めない身体になったから」 と、サラリと言いやがりました。 (な……なんですと!?)思わずユリエル様を見上げる私をよそに、クリフォード殿下はわざとらしく肩をすくめ 「あぁ~残念。王家の子を産めないと、正妃も側妃も困るんだよねぇ」 と、オーバーな演技混じりで叫んだあと、 「……なぁ、お前もそう思うだろう? ロイド侯爵」ユリエル様が指を鳴らした瞬間、ドアが勢いよく開いた。外には腹の出た貴族たちがずらりと並んでいて、それが怖いのなんのって! (ちなみに貴婦人は、ドアが開いた瞬間のユリエル様の微笑みを受け、秒で失神していた。……なんなのこの人、マジで怖い)しかも外で盗み聞きしていた奴らは 「チッ……、最近までバカ王子だったくせに……!」と、好き勝手な悪態をつきながら逃げていくじゃない。 (私のことじゃないけど、胸糞悪い!)私が怒りに震えていると、クリフォード殿下は肩をすくめて笑った。 「あははは。本当に”捨て台詞”って言うやついるんだね」そんなクリフォード殿下に、 「悔しくないんですか?」私は拳を握りしめて呟いた。アイツら、平民の血と汗の上で贅沢しているくせに、よくもまぁ偉そうに……。そう思う
「へぇ~、ユリエルって嫉妬深いタイプなんだね」キラキラした笑顔でそう言うクリフォード殿下は、ちらりと私に視線を向け、「大変な男に捕まったね、ソフィアさん」と、さらりと微笑んだ。その瞬間──『バキッ』と、レミリア様の手元で何かが折れるような音がした。……が、私は聞こえなかったふりをした。(いや~! 本当にこの兄妹、怖い……)心の中でガクブルしながら、笑うしかない私。そんな私をよそに、クリフォード殿下が「そうだ! 一部の貴族から”救済の乙女と僕の縁談話”が出てるんだって」と、とんでもない爆弾を投下した。「は?」「え?」兄妹のハモりが完璧すぎて、逆に怖い。するとユリエル様が、「それは無理だな。ソフィアは──俺の子しか孕めない身体になったから」と、サラリと言いやがりました。(な……なんですと!?)思わずユリエル様を見上げる私をよそに、クリフォード殿下はわざとらしく肩をすくめ「あぁ~残念。王家の子を産めないと、正妃も側妃も困るんだよねぇ」と、オーバーな演技混じりで叫んだあと、「……なぁ、お前もそう思うだろう?ロイド侯爵」ユリエル様が指を鳴らした瞬間、ドアが勢いよく開いた。外には腹の出た貴族たちがずらりと並んでいて、それが怖いのなんのって!(ちなみに貴婦人は、ドアが開いた瞬間のユリエル様の微笑みを受け、秒で失神していた。……なんなのこの人、マジで怖い)しかも外で盗み聞きしていた奴らは「チッ……、最近までバカ王子だったくせに……!」と、好き勝手な悪態をつきながら逃げていくじゃない。(私のことじゃないけど、胸糞悪い!)私が怒りに震えていると、クリフォード殿下は肩をすくめて笑った。「あははは。本当に”捨て台詞”って言うやついるんだね」そんなクリフォード殿下に、「悔しくないんですか?」私は拳を握りしめて呟いた。アイツら、平民の血と汗の上で贅沢しているくせに、よくもまぁ偉そうに……。そう思うと、腸が煮えくり返ってくる。
「……で、私たちに報告が遅れた、というわけね?」レミリア様は扇をパタンと閉じ、眉間に深いしわを寄せた。完全に怒っている。──そう、あの日。私が絶倫……ゴホッ、体力オバケのユリエル様に何度も気絶させられ、気づいたら 救出から丸一日 経っていた。私たちが発見されたのは、ロッテが消えたと報告しに来た侍女が、慌てて私の返事も待たずに寝室を開けてしまったからだった。(あれは本当に……顔から火が噴いた)「まったく……。殿下がどれほどご心配なさっていたか、分かっておりますの?」レミリア様にキッと睨まれ、私は縮こまったが──隣に座るユリエル様はというと、私の腰に腕を回したまま涼しい顔で「レミリア、妹なら少しは気を使ってほしかったな」と、のたまった。……は?なにその他人事みたいな顔。私がジト目で睨むと、頬にキスをしてくる始末。「ユリエル様! 今は控えてください!」奥歯を噛みしめて言うと、彼はあっさりこう返してきた。「甘い時間を邪魔されたんだ。これくらいは許してくれるだろう? ソフィア」──その瞬間。バタン、バタン、バタバタバタッ!侍女たちが一斉に失神して倒れていく。(えぇぇぇ!? 怖い!もしかしてこの人……フェロモンだけで男女を妊娠させられるんじゃ……?)私が震えていると、レミリア様が叫んだ。「お兄様!! その無駄にダダ漏れしているフェロモンをお控えなさいませ!執事も気合いで立っているだけですのよ!!」(やっぱり効くの!? ユリエル様のフェロモンって、男女どっちにも効くタイプなの!?)ドン引きしている私に、ユリエル様は耳元に顔を寄せて甘く囁く。「だって……ソフィアがレミリアばかり見てるのが悪いんだよ」顎クイと同時に、最大限の色気をまとった笑顔。『バタン』背後で執事がついに落ちた。(あぁ……南無。ユリエル様、あなたの存在は公害レベルです……)私は心の中で十字架を切りながら祈った。(神様……私は松永君の方が落
するとユリエル様が、そっと私の頬に触れ、熱い眼差しを向けてきた。「渡良瀬さん……」「松永……くん」この時だけは、どうしても”ユリエル様”とは呼べなかった。すると松永くんは、ふにゃりと笑い、「俺の腕の中に、渡良瀬さんがいる……。こんな良い夢、他にない……」そう呟きながら、ゆっくり顔を近づけてきた。「待って松永くん、これは夢じゃ──むぐっ」言い切る前に、強引に唇を塞がれた。前世と今世を通して、初めて”流されたキス”だった。重ねた手は強く握られ、その情熱に──私は初めて、“女に生まれた意味”を知った。***「うわぁぁぁ!」隣から素っ頓狂な声がして目を覚ますと、松永くん──いや、ユリエル様が、顔半分が真っ赤、半分が真っ青でベッドから落ちていた。「だ、大丈夫?」手を差し出すと、彼は下から慌てた顔で、「わ、渡良瀬さん! 服……服着てください!」そう言って、顔を両手で覆い隠して背中を向けた。「え? 今さら?」私が目を瞬かせると、「あれ、夢じゃ……なかったんですか……?」そう言いながら、今度は自分が全裸なことに気付いて慌てふためいている。バタバタと脱ぎ捨てた衣類を集める背中を、私は冷静に眺めていた。……こういう時、人がパニックだと、逆に自分は落ち着くのよね。「松永くん、とりあえず落ち着こうか?」声をかけた瞬間──彼は、なぜか私に土下座した(全裸のまま)。「えっと……それって、後悔してるってこと……?」恐る恐る聞くと、勢いよく首を横に振られた。「いくら夢だと思ったとはいえ、合意なしに……すみません!」あぁ……こういうところ、本当に松永くんだ。「合意なし、じゃないよ……」言った途端、今度は私が真っ赤になる。「え?」驚いた顔で、松永くんが目を瞬かせた。「今はユリエル様とソフィアとして、私たち恋人じゃない?それに……前世でも、私は松永くんのこと……好き、だったし……」うわ