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第80話:軽い道(みち)と、畑・港・学校

Author: fuu
last update Last Updated: 2025-09-16 12:00:13

朝の地面が、ふわっと軽い。

空の道(空梁そらばり)は開いた。

次は足もと。

畑と港と学校に、“軽い道”を足していく。

「やることは三つ!」ユスティアが指を三本。

「一、曲がり角に“軽い札(かるふだ)”を置く(開印つき)。  二、細い鍵糸(みんなで触れるひも)を地上に一本足す。  三、行列は丸く、止まって食べる。」

『ホイップ!』

◆◆◆

畑。

田札(たふだ)の四拍——耕・蒔・刈・分。今日は“刈”。

ネフィラが「転ばない足」を見せ、ミナトが“畑拍”を置く。

セリオは蔵の紐を公開撤回結びに直し、鍵糸は外へ。

コルナは豆で『寝息>救難>荷>灯歌+食』の配分。

曲がり角に軽い札を立てる。

小さな矢印と、三つ穴(公開・撤回・合意)。触ると、足どりが半拍軽くなる。

父が腰に手を当てて一言。

「収穫前に、まず腰を守る。」

半拍の笑い。

いい重心になった。

黒い薄紙が一枚、かさり。

『供出一括』『専用塀』『笑い義務』

カイラムが“コツ”。

空気が半拍ずれる。

リビアが一瞬反転、セリオのほどき印。

——塩。

風が穂先を撫で、畑の道が一本つながった。

◆◆◆

昼、港。

いかり綱の上に、軽い札を等間隔。

魚市場の入口に“開印(ひらしるし)”。

三札(共鳴・敷石・輪)は角へ。

ミナトが“うねり拍”、ネフィラは“濡れずの足”。

セリオは係留を“公開撤回結び—海版”に。鍵糸は外。

父は波を見て、さらっと言う。

「腰は船底。抜いたら沈む。」

みんな、ふっと笑う。半拍。

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